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このページは、想い出のページなので、時間的概念がありません。時代を行ったり来たりします。

<耳>

大黒湯の帰り道にその店はある。
春日通りに面した高級ベーカリーだ。
平たく言えば、パン屋。
その店先にチョッと気になる商品が置いてあるのだ。
「食パンの耳」
が、ビニール袋にぎっしりと詰め込まれて、いつも5〜6個並んでる。
これをマーガリンで炒めて塩を振って食べると美味しい。
・・・のは分かっている。
分かっているけど、その値段が購入することを躊躇させるのである。
・・・30円。二袋なら50円。

これが100円とかいう値段を付けておいてくれりゃ堂々と買えますがな。
そんなもんを30円で買って、
紙袋にも入れてもらわないでぶら下げて帰るのはどうにも勇気が足りない。
そりゃ、犬でも連れて行って「こいつに食わせるんだ。」的な顔が出来りゃいいが、
当然、パンの耳のために犬を飼うことなどできない。
風呂帰りの俺の風体を見れば、一目瞭然、
俺が食うに決まってると思われるのは必至だ。実際そうだが・・・。

で、ある日考えに考えて、ある計画を決行した。
「すんませ〜ん。表に置いてある食パンの耳って、
ハトに食わせても大丈夫っすかぁ〜?」

で、まんまと購入して帰ったのだが、後々考えると、
夜な夜な護国寺あたりでハトにパンを与えてる大男の姿の方が充分すぎるほど怪しいやんけ。
普通に黙って買えばよかった。

ポ・ポ・ポ〜ハトポッポ〜 パ〜ンが欲しけりゃそらやるぞ お〜れと な〜かよく たべましょう

<セキネ>

セキネは新型シビックを購入して有頂天。
二浪のツージーさんはつや消しクリーム色になってしまったケロヨンスターレット。
他にも四角いシルビアや、ぽんこつローレル、様々な車に分乗して夏合宿。
今回は長野県菅平のロッジ風の合宿所。
去年は河口湖畔だった・・・。

で、俺はツージーさんのケロヨンに乗せてもらって関越道をひた走る。
セキネは新型シビックで調子付いて160km/hぐらいであっという間に見えなくなった。
ケロヨンは100kmなのに水温計がみるみる上がっていく。
みんな(四人)で床を踏み鳴らし叱咤激励しながらケロヨンにムチを打つ。
サービスエリアにたどり着くと、セキネなんか、すでに食事を済ませてたりする。
憎ったらしいったらありゃしない。

まぁ、どうにかこうにか山奥の合宿所までは全車無事にたどり着いた。
合宿の始まりである。
もちろん、名前ばかりは「フォークソング愛好会」の夏合宿。
様々な人種の坩堝と化しているから貸しスタジオごとから全く違うジャンルの音がこぼれてくる。

セキネはベーシスト。俺はギターが下手だからテレキャスターでサイドギター。
ツージーさんはストラトでリードギター。
はせちんの走りすぎるパワードラムに引っ張られながら浜田麻里をコピーしてる。
ボーカルは、はせちんの彼女のマユちゃん。
アニメで例えるとサザエさんみたいな頭蓋骨の持ち主。
合宿の最終日には、それぞれが練習の成果を披露するわけだが、
外は台風がやってきて土砂降りだ。
警報が出てしまい全員がロビーに集められテレビの気象情報に釘付けだ。
結局、道路が崖崩れかなんかで通行止めになってしまい合宿は一日延長されてしまった。
オーナーの昔ばなしなど聞かされる。
翌日は台風一過の日本晴れで快適な帰路を・・・。

でもセキネは泣いていた。
まだ買ってから一週間の、濃紺の新型シビックが水浸し。

行きに後部座席に乗ったヤツ(はせちん)が窓を開けっぱなしにしていたのだ。
開けっ放しといっても、パカンと横にチョッとだけ開くあの窓。
が、稀に見る台風による土砂降りで一夜にして、
哀れ、モノコック・ボディーはバスタブ状態。
「けっ!しょうがねぇなぁ・・・。てめぇが、車がタバコ臭くなるとか言うから開けたんじゃねぇか・・・。」
はせちんもバツが悪そうにコップで水を掻き出すのを手伝っている。

俺らはツージーさんの車に常に積んであるラジエーター液の予備を補充したり、
往路で弛んでしまったベルト類を張り直したりしてる。
まぁ、心配しなくてもセキネのシビックは一年後には自爆事故で廃車になってしまったが・・・。

新型の 車を操り有頂天 水も滴るイイ車

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