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このページは、想い出のページなので、時間的概念がありません。時代を行ったり来たりします。

<同棲>

第一銀嶺荘に、同居人が現れた。
北海道ツーリングで知り合った女性。
倶知安の農道でバイクの故障で困ってたのを、下心みえみえの俺が接近して直してあげた。
って言っても、プラグコードが外れてただけだけど。

それからしばらく道内を一緒に走って、彼女の休暇(仕事してた)の終りには、
函館のまで送って、夜の港で遠ざかるフェリーを見送った。
その後もしばらく俺は北海道に残ったんだけど、
東京に帰った或る日、写真が届いた。
ツーリング中に撮った写真だ。差出の消印が群馬県になっている。
東京とは割に近い。
早速鼻の下を伸ばしながら「また、逢いませんか?」
と書いて葉書を出すと、案外スンナリ事が運び、東京で逢うことに・・・。

何回かデートしてるうちに、或る日突然彼女が銀嶺荘に転がり込んできた。
親と喧嘩して家出をして来たという。
俺より三つ年上の彼女。ってことは、
当時で二十五、六ってトコか。
・・・美味しいじゃん。

一緒に「大黒湯」に行ったり、2ケツで湾岸を走ったり、
俺がアパートに帰ると、料理が出来ていたり、夢のような日々が続くのである。
そんな或る日、彼女が言い出した。「子供が出来たみたい・・・。」
・・・うろたえる俺。

「でもね、貴方の子じゃないの・・・。」

もともと、北海道ツーリングは傷心旅行だったのだと、初めて聞かされた。
家出をしてきたのも、なんだかその関係だったようだ。
数日後、バイトから帰ると、置手紙に、「幸せになってください。」
と書いて、彼女は消えていた。

その言いつけを守って、幸せになりました。

bu06_i3.gif

今何処で・・・どんな暮らしをしているの?無駄と知りつつヤフーで検索

2007/08/07

あれから20年近い月日が経ちました。
消息も、またその調べようもないと思いながらあれこれ思い出してはキーワードを
打ち込んで絞り込んでいく・・・
そしたら、群馬県の吾妻渓谷にあるその人の実家のHPにたどり着いた。
実家はトウモロコシ畑やリンゴ園を営んでる農園。
地図をみて、お!行ったことアル。間違いないと・・・
農園のメールアドレスがあったので(商品購入のだけど)に
「20年近く前に、○○さんと東京で知り合った者ですけど、ふと古いアルバムを見ていて、
今どうされてているかと思い、メールさせていただきます。」

そしたら・・・・・・・

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こんばんは・・・
遅れてすみません。
○○は、今埼玉です、4人の子持ちです。だいぶ昔ですね・・・。
悠貴は5歳の時に事故に遭い亡くなりました。

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悠貴君ってのは上の文章に出てきたお腹の中の子。
産まれる前に俺が名づけたんだ・・・・・・・・。
まだ見ぬわが子みたいな気がしてたのに・・・・・・5歳で・・・・・・・
もうこの件は、完全に思い出として封印だ。

四人の子ってことは、腹の中の子が四つ子だったとは考えにくいし、
未婚の母は、結婚したんだろうな〜。

悠貴君に合掌

もちろん、嫁さんはしらない。

<24時間営業>

第一銀嶺荘の朝は早い。
そして夜は遅い。
213号室は昼間以外、たいてい明かりが点いている。
部屋の主がいなくても誰かしらが物音をたてている。
ギターの音だったり、
暴れる音だったり、
ステレオの音だったり・・・。

部屋に帰るとき、とりあえずTELを入れてみる。
「はい。Tarouの部屋だ!」
・・・声からすると、今日ははせちんがお泊りらしい。
受話器の向こうからアースシェーカーが聴こえる。
あっちゃんも心得ているから、「じゃぁ、今日は帰る・・・。」
わがまま娘も一応気を使うようになったのだ。
この前までは、「みんなを帰らせてよ!」とダダをこねたけど。

って・・・俺の部屋なのに・・・。

一度、部屋に仲間が数人いるのに、あっちゃんを連れて帰ったことがある。
男数人と女一人が雑魚寝するわけだが、神経が細いと体がもたない。
寝言、いびき、歯軋りが駆け巡る中、お嬢様がやっと寝付くころ、
渋谷終電乗り遅れ組がなだれ込む。
またウツウツしかけると、
ケタタマシく目覚ましが鳴って、早朝バイト組が出てゆく。

勝手にコーヒーをゴボゴボ沸かす奴、
狭い洗い場で作業服を洗濯する奴、
誰かしらが動いてる。
家賃を払ってるのは俺一人なのに、
数十人が山手線の中心で恩恵に与かる。
ヨッチーなんか、都内でのバイトが入ると、
神奈川からわざわざマイ・ギターをぶら提げてお泊りにくる。
パジャマとか歯ブラシとか、マイ・シャンプーとか持参して。
ボボなんかは、酔っ払ってコンタクトをしたまま寝てしまい、
レンズが目玉に張り付いてしまったとかで銀嶺荘に救急車を呼び寄せた強者。

高輪のお嬢様は、そんなやつらとは馬が合わない。
ワイングラスを二人で傾けて・・・。

なんて望んでるのだろうがそうは問屋が卸さない。
誰もいない、二人きりの夜でも、
下の階からガッチャンガッチャンと、ラーメン屋が振り回すフライパンの音がするし、
窓の下で酔っ払いが「うぉおヴぇうぶふっぅ〜。」
とか声にならない発音でゲロを吐く。
某大学の運動部が「うぉりゃ〜!」
とか言いながら階下を通過するし、見上げた天井は裸電球。

いくら手料理を覚えても、
俺の部屋にはフライパンと、水の漏れるアルミのやかんと、
洗濯用のポリバケツしか容器がない。
なのに、あっちゃん、健気に計量カップとか、
ハーブとかの薬味等々を持参して何か作ってくれたっけ。

二人でそれを頂いていると、
アポなしの新宿終電乗り遅れ組が転がり込んできてみんなで食っちまう。
「味が薄いんじゃねぇか?」「塩かけりゃマシになるな・・・。」口ぐちに言いながら、
せっかくハーブとかの香りが効いているのに無造作にソースとか、ぶっかけて・・・。

誰のため そして何ゆえ借りてるの? あの人からも家賃取れば? (by あっちゃん)

ナツメグを使ってみたわ ハンバーグ なのにあの人 お醤油で・・・ (by あっちゃん

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