茗荷谷通信 ←Top

back  16  next

このページは、想い出のページなので、時間的概念がありません。時代を行ったり来たりします。

<給水制限>

管理人のオバサンが窓の下から叫ぶ。
「Tarouーさーん!今日、もうすぐ水が出なくなるわよー。」
夏の日照りで、東京は水が足りない。
「置き水しときなさーい!」
と、言われても俺には器が足りない。

家から持ってきたアルミのヤカンは、
しばらく前から穴が開いていて小銭入れになっている。
水を入れられるとしたら、直接火にかけられるマグカップと、
バイトの軍手や、靴下を洗うポリバケツぐらいしか容器がない。
電気釜は実家に送ってしまったし・・・。

ペットボトルなどない時代である。

滋賀県では、なかなかというより、先ず経験できない給水制限。
軍手バケツをよく洗って、ナミナミと水を張った。
「今日、明日と、この水飲むんか?」
と、ゲッソリしてみたけど、
良く考えたら、この水道から出る水なんか、ずいぶんしばらく飲んでない。
洗濯に使うか、せいぜいコーヒー入れるぐらい。一応熱湯消毒になるわけだが・・・。

下宿生活を始めてしばらくは「自炊」なるものをしっかりやっていたけど、
独り暮しだと、かえって高くつく。
要領が悪いだけなんだろうけど。
今なら一人分ずつに調理されたお惣菜とかが豊富に売ってるけど、
当時はなかったように思う。

キャベツなんか丸いのをそのまま買ってくるもんだから、
使い終わる前にたいがい干からびてしまうか腐らせてしまう。
カレーなんか作ったくらいなら、チットも美味くないし、
一週間かけても食べ終わらない。
結局、朝と昼を兼ねた食事を学食で済ませ、
夜は下のラーメン屋で済ませるようになってしまった。

        

このラーメン屋がバカに出来ない。
ラーメン屋とは名ばかりで、何でも食べられる。
俺が作るカレーとは似ても似つかない上等なのを作ってくれるし、
チャーハンなんか、今でも夢に出てくるほど美味い。
ただ、ラーメンが今ひとつ・・・。
ラーメンは、春日通りに出てすぐの店の縮れ麺が美味しかったけど、
俺が東京にいる間に潰れてしまった。

そんなわけで、水が出なくてもあまり不便はないわけなのだが、
あれがないのには困った。
「網戸」
部屋の下が地獄の釜みたいに燃えてるでしょ。
冬は暖かくて助かるのだが、夏は困る。
とにかく暑い。というより、熱い。しかも、213号室は建物の一番南側で、
他の部屋よりも窓が二つも多い。

日没まで西陽が照りつける。
都会のくせに、そっちが都営バスの大塚車庫。
やたらと日当たりが良すぎる。

クーラーなんか、引っ越しのバイト先で出た廃材を探せば、
いくらでも見つかるが、銀嶺荘には設置不可。
水も電気も足りない網戸もない。
まさにヘレンケラー状態。
窓を閉めたまま地獄の業火に包まれて寝るしかない。

まぁ、開けっ放しでも俺は蚊に刺されない体質だからいいけど・・・。
夜だと明かりに誘われて変な生き物が入ってくるからイヤだ。

朝起きたら、おでこに、鳥の糞がついてたことがある。

夏の夜は まだ宵ながらあけぬるを ながながし夜を独りかもねむ

<池袋の学校>

「おうっ!Tarouか?今よぉ、池袋に学校見に来てんだけどよ、オメーも来いよ。
あっちゃんも、そこにいるんだろう?一緒に連れて来い!」
ハセチンからTELが舞い込んだ。
取次ぎがなくなったので割合気楽に電話が架かってくるようになったのだ。
しかし、あっちゃんとは一緒だけど、池袋の学校ってのがよく分らない。

「まあ、暇だからええけど・・。何処に行ったらええ?」
「池ブクロウだ!」 
池袋の池ブクロウ。
なんともおかしな命名だけど、東口にフクロウの銅像がある。
なんだか分らないけど、あっちゃんを連れて池ブクロウに向かう。
地下鉄で駅二つ。

早速 池ブクロウに着くと、ハセチンも彼女連れ。
「じゃあ、行くか。」ハセチンが歩き出す。
サンシャイン通りを真っ直ぐに歩く。
この先に学校なんてあるのかなあ。
ってより、何で学校を見に行かなきゃあかんのやろ?
俺と同じ某大の学生なのに。
「なあ、ハセチン、学校見に行くって、なんの学校や?」
「オメーはバカか?ラッコだよラッコ!水族館の。」
両手を組んで、腹を叩く仕草で言う。

イケブクロ 待ち合わせ場所 池ブクロウ ガッコ見にきたのにラッコ

<数え唄>

俺の通ってた学校には「○大数え唄」なるものがある。
こんな感じだ。

一つとせ〜 人は世のため国のため 尽くせ亜細亜の朝ぼらけ そいつぁ○大生 うぉりゃー
二つとせ〜 二つないのが命なら  捨てよ亜細亜の真中に そいつぁ○大生 うぉりゃー
三つとせ〜 道を歩けば西東 ゴビの砂漠を一人旅 そいつぁ○大生 うぉりゃー
四つとせ〜 酔うて暴れたこともある 泣いて恋したこともある そいつぁ○大生 うぉりゃー
五つとせ〜 いつの世までも変りゃせぬ 紅葉ヶ丘の朧月 そいつぁ○大生 うぉりゃー
六つとせ〜 娘ほれるなこの俺に 命知らずな子ができる そいつぁ○大生 うぉりゃー
七つとせ〜 泣いたあの娘が恋しけりゃ 潮吹く鯨で気を晴らせ そいつぁ○大生 うぉりゃー
八つとせ〜 やめよ男の泣き顔を やがて芽のでる時もくる そいつぁ○大生 うぉりゃー
九つとせ〜 国を出る時ゃ玉の肌 今じゃ槍傷刀傷 そいつぁ○大生 うぉりゃー
十とせ〜  とても亜細亜の捨石に 願うこの身は桜花 そいつぁ○大生 うぉりゃー
終わりとせ〜尾張名古屋は城でもつ 天下の○大「押忍」でもつ そいつぁ○大生 うぉりゃー

このシュールな唄をですよ、入学直後のオリエンテーリングで唄わすのである。
覚えさすのである。
うろ覚えだけど今でもこれだけ書ける。
えらいバンカラを自称する学校で、キャンパスを、スゲー学ラン着たお方達が大勢闊歩してる。
新入生を見つけると数人で囲んで勧誘だ。
そう、応援団
入学式で話をしたヤツが、しばらくして、スゲー学ラン着て、
ヒゲを伸ばしたりしてビックリさせられたこともあった。

入学してしばらくは、さまざまなクラブ、
サークルがキャンパスのあちこちで勧誘活動をしている。
向こうからバンカラが歩いてきた。

勧誘が怖くて、一番近くで勧誘してたサークルに飛び込んだ。
「フォークソング愛好会」それから四年間、俺の居所は彼らの溜まり場。

楽しかったなぁ。
フォークソングったって名ばかりで、ヘビメタもいるし、
コムロみたいのとか、さだまさしとか、ストーンズみたいのとか、
ボブ・マーリーみたいなのとか、もう、博覧会。変なヤツばっかり。
よく出てくるハセチンは「ドラム叩き」
ヤマモトはたまたま「草野球愛好会」の近くでバンカラに遭遇したらしい。
うおりゃー。

○大の 書生さんにゃ娘はやれぬ やれぬ娘が行きたがる うぉりゃぁ〜

back  16  next

茗荷谷通信 ←Top

Copyright (C) 2001 Tarou's Homepage. All Rights Reserved.