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このページは、想い出のページなので、時間的概念がありません。時代を行ったり来たりします。

<マイ・テレホン>

田舎者は、案外モテる。

今はどうだか知らないけれど、田舎の変な風習とかの話をすると、
都会の女の子はたいがい喜んだ。
合コンなんかがあると、決まって俺に凱歌が上がる。
「Tarouさんってオモシローイ。また逢おう!電話番号教えて!」なんて言う子もいた。

「・・・電話あらへんねん。」
「管理人のオバチャンが、取り次いでくれるんやけど、
取次ぎ賃1回10円取りよんのよ。」
「ほんでな、家賃払う時に、几帳面にノートに付けてあって、今月は4回だから、40円追加。
なんて言うんやで。」

そんな話しに、また大喜び。
携帯がこんなに普及してしまった時代の学生には、使えない落とし方である。

でも実際、管理人のオバサンが、窓の下から「Tarouーさーん!女の子から電話よー。」
なんて叫ぶ回数が増えてくるといい加減イヤになる。
会話は聞かれるし、切った後、絶対に一言二言なんかしら言う。

「みんなの電話なんだからもっと早く切りなよ。」
とか、横から身振り手振り手話付きで受話器の向こうにも聞こえるように言う。

「あたしゃねぇ、あんた達を預かってる以上、変な問題起こして欲しくないんだよ。」
ごもっともではあるが・・・。
「今の女の子は何処の誰だい?」
聞いてどうしょうっての。見合いでも仲介してくれるのかな。

そして自分の部屋に電話を導入した。
当時、確か9万円ぐらいかかった。普通のプッシュホンなのに・・・。
電電公社の大名商売ぶりがよくわかる。
しかも携帯と違い、部屋からは持ち出せない。・・・当たり前だけど。
今だったら0円で携帯が買えるのになぁ。
しかしこれで、オバサン、盗み聞きの楽しみが一つ減ったね。

Tarouさん! 今の女は何処の誰? あたしゃあんたの 親代わり

ボッタクリ 言い値が売値の 電電公社
処分するときは 5000円にしかならなかった

<囚人番号>

俺、同じ屋根の下に暮らす、他の9人の名前すら知らない。
実際、俺も表札など掲げてはいない。213号の人である。
一度も顔を見たこともない人すらいる。
だから、他の住人を部屋番号で表現することにする。
お隣さんは209号。
向かいの人は205号。囚人番号みたいである。

213号が騒がしいと、隣の囚人209号がホントにたま〜に苦情を言ってくる。
W大の学生らしい。
冬なんかVネックの白いセーターなんか着て、
インテリを気取ってる線の細い男。
うつむきがちに、

「すみません、勉強の支障になりますんで、もう少し静かに遊んで頂けますか?」

いかにもこっちが勉強とは遥か遠い世界の住人みたいな言い方。
だけど、お互い様だからその時だけは、言いに来た勇気に免じて静か遊ばせて頂く。


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205 204 203  202  201 





 
←入口       廊下
213 209 208 207 206 開かず
の間
ラーメン ラーメン 寿司 不動産 薬屋 化粧品
道路(一方通行
茗荷谷駅

銀嶺荘に悪い奴は住んでないのだ。
右斜め前の囚人204号は音楽が好きらしい。そして女付き。
ステレオの音がいつもガンガン鳴っている。
音が大きい時はたいがいHしてる。
音が大きい時はいつも外階段の踊り場に女もののクツがあるからわかる。
囚人209号は、そっちにも時々苦情を言いに行ってるようだ。
ステレオの音が時々途絶えることでおよそ見当がつく。

しばらくして204号も学習したらしく、209号の嫉妬を買わないように、
音を大きくする時、女もののクツは部屋に持ち込ますようにしたようだ。

勉強してるのに周りで遊ばれたり、騒がれたり、
女連れ込んだりされると腹が立つもんな・・・実際。
ってか、あまり勉強しないからよくわかんないけど・・・。

しかし、考えてみると、209号って前と横がボンクラ学生で、可哀想な人である。
頑張って勉強して今、何処で何をやってるだろう。

っていうか・・・見取り図書いてて初めて気になったことがある。
確かに、道沿いの部屋には、下にラーメン屋やら寿司屋がテナントで入っている。
じゃぁあ、205~201号の下には何があったのか・・・。

まったく思い出せない。建物の裏に廻ったこともないし・・・。
だいたい、その裏なんかなかったハズだ。
まさか、窓のない部屋が5個あって、それこそ座敷牢だったのか・・・。

もう少し 静かに遊んで欲しいのに 前と横には馬耳東風

表を書いてて・・・ふと思う 向かいの下には 何が棲む?

<北海道>

俺には、もう一つの学校がある。
夕方6時から9時までの専門学校。
こっちは3年制だから大学4回生の時にはもう、
国家試験で資格を取ってしまって卒業してしまった。

だから4回生時代は夢心地。
大学の授業も極端に少なくなって、
209号が首吊りたくなるぐらい遊びまくっていた。

まあ、バイトを増やして、銀嶺荘にいる時間が極端に減ったことで、
209号は生き長らえたようでもある。

そんなにバイトしてどうすんの?管理人のオバサンが尋ねる。
「北海道に行くんです。」
ここまでの3年間、遊んでばかりいたわけではないのである。
人知れずコツコツと勉強して、二つの学校を二足わらじで頑張ってきたのである。

自分に一つ大きなご褒美をやらなければならないのである。
女の子なんかは、当たり前のようにオーストラリアとか、
カナダに「卒業旅行」に行ったりするが、
俺はそんなとこに興味はない。

何年も前から小説で読み、バイク雑誌の夏の特集を眺め、
憧れつづけた北の大地ってのをこの眼で確かめに行かなければならないのだ。
しかもこの、鉄の馬に跨って・・・。

「振り返れば地平線」 佐々木 譲
「いつか風が見ていた」  同上
「時には星の下で眠る」 片岡義男
題名を見ただけでもそそるやん〜?
北海道の写真は「Hobby」の、「Bike」のコーナーにあります。古いものだが。

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バイク便 運送会社に冷凍庫 待ってておくれ開陽台

セールスマン 死体沈めに 警備員 待ってておくれ開陽台

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