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＜バイク便＞
バイクも都内で乗り慣れてくると、非常に効率のいい交通手段である。
どこに行っても道端に停めておけるし、首都高も走れる。
湾岸線の13号地のトンネル前で、危険物積載車がユーターンする裏道も覚えた。
環状線から出ても、横浜のほうに行かずに戻ってこれる。
もう、首都高は無限軌道。
夜な夜な護国寺のインターから乗っては、明け方までグルグル廻る。
内回り、外回り、自由自在である。
3回生にもなると、授業もグッと少なくなるし、
校舎もメチャクチャ近い。目をつぶっていても通えるくらい。時間有り余り。
運送屋のバイトは、土日が主体だし、
平日にも、何か割のいいバイトが無いかなあ？
と、フロムAをめくっていると目に付いたのがバイク便。
「完全出来高制」・・・いい響きである。
資本主義の究極のカタチである。
事務所も水道橋だから非常に近い。
早速連絡してみると、
明日からでも出社OK！ってことで、明日から顔を出してみた。
もう、待機室にたむろしてる、今で言うところのフリーター達のアウトロー感に騒然。
機械油が染み込んだような顔ばっかり。
まあ、最初の仕事は定期便。
決められた場所を廻って、決まった書類を集めて届ける。
道路事情に疎い奴や、配達が遅い奴は、いつまでたってもこのコース。
先にも書いた「完全出来高制」
・・・走った距離がそのまま給料だから、
都心をタラタラ走ってたら、一日中走り回ってもたかが知れている。
ヤッパリ長距離便が美味しい。
職について、一週間目ぐらいに、初の長距離の仕事を貰った。
田舎者だけど、引越やのバイトで23区の主要道路覚えてたから、
定期便はすぐに卒業できたのだ。
初の長距離は確か、虎ノ門でブツを受け取り、木更津に届けるヤツだったと思う。
行きは、高速を使ってもいいから、湾岸線をひとっとび。
習志野で降りて、16号を走る。
自前のバイクのタンデムシートには、大きなアルミボックスが装着してある。
中の積荷は、封筒一つ。
これを、虎の門から一時間で届けろ。って言う依頼だったかな？
16号の渋滞をすり抜け、まあ、無事に任務遂行。
・・・「必ず、一時間以内に届けろ。」といわれたけど・・・
何の封筒だったのだろう・・・。今思うとﾁｮﾄ怖い気もする。
今みたいに携帯電話なんて普及してなかったから、
（今も持ってないけど）公衆電話で終了報告。
稼がなきゃいけない奴は、急いで事務所に帰るが、俺は、初長距離でウキウキ。
「気をつけて帰ってきて下さい。」
の事務所の言葉を最後に、さあ、ツーリングだ。
帰りは、高速代が出ないのだ。
この一本で恐らく8000円は稼いだはずだ。
白浜の方まで行っちゃおー。
何回か、奇妙なものを運んだことがる。
社長の金時計とか、重役の老眼鏡とか。
中でも嫌だったのがマグロ。
築地で受け取って、
何処だったかの料亭に運ぶんだけど、80センチぐらいあるわけ。
「高級だから気を付けて・・・。」と言われた。
当然アルミボックスには入りきらない。
自転車積んだ普通乗用車みたいにトランク半開き状態。
魚が箱から顔を出してる。
当然、目は白い。
信号待ちになると、当然最前列まですり抜けて行くことになるのだが、
車の皆が見ているような気がしてならない。
いつになく早く配達ができたとさ。
シグナル・グランプリのような猛ダッシュ。
一番美味しかったのが、超長距離便。
夜中の一時頃に俺の部屋に事務所からTel。
「今から走れるか？」
俺は、事務所から一番近い所に住んでいたのだ。
「詳しいことは、事務所で言う。」
ってなことで行ってみたら、明日の朝8時までに、
墨田区本所の印刷屋で刷り上るパンフレットを受け取り、
長野市のホテルに届けろっていう仕事。
どこかの会社が朝の会議に使う物らしい。
単純計算で350Km。
まだ、松本から先がなかったから、
80Kmぐらいは一般道だ！3時に荷物が刷り上り、受け取ったが、
会議まであと5時間しかない。
一時間前には届けろっていうことなので、一般道のことを考えると、
高速では時速150Km/hは必要だ。
俺の単車の限界値。捕まったら一発免停。
スピード違反は自己責任。あたりまえだけど・・・。
オシッコも我慢して必死に走って、着いたのが8時半。ギリギリなのだ。
夜間手当、長距離手当とかが付いて、一晩で7万円ぐらい稼いでしまった。
もちろん配達後は、信州ツーリング。
行き先が信州と聞いて、印刷所に行く前に銀嶺荘に戻って、
ツーリング＆キャンプ用品取ってきておいたのである。
このバイト始めてから、
東京が所得税をおねだりしてきゃがった。
運送屋は、現金を手渡しでくれたから税金なんか掛からなかったのに。
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