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このページは、想い出のページなので、時間的概念がありません。時代を行ったり来たりします。

<新聞>

学生アパートってのは、新聞勧誘が激しい。

勧誘員が5人ぐらい束になってやって来て、
第一銀嶺荘の10戸を、それぞれが2つずつ攻撃する。

勝手に洗剤とかを部屋の中に積み上げてからおもむろに交渉を始める。

「兄ちゃん、なめとったら、あかんでぇ。」・・・おもむろではないか・・・。

勧誘員が関西弁で凄んでみせる。
けど、俺、もともと関西人だから、チットモ怖くない。

「ん?。わしなあ、そこの交番のおまわりと知り合いなんやで。
すぐそこやし、一緒に行こけ?」

同じ関西弁で応える。
背筋伸ばすと俺の方が頭一つ大きい。
新聞屋を見下ろしながら言う。

何だかんだ言ってもやっぱり、「おまわり」の一言は強いなぁ。
洗剤二箱俺の足元に置いたまま、他の勧誘員と共に文句言いながら帰っていく。
「ちなみに、この奥の部屋はみ〜んな○大の相撲部やで。」
と、嘘を付け加えてやったから・・・。
の威を借る」・・・の典型的な活用法ですね。

三つ隣の部屋の学生なんか、朝刊3部と、夕刊一部が、毎日届いてた。
俺がいない時に勧誘がきたのだろう・・・。
207号が2〜3日留守にすると、部屋の前に新聞が山積み。
知らない人が見たら、中で2週間ぐらい前に死んでしまってるように見える。

勧誘員は勧誘員で、中には、切羽詰ったのもいる。新聞奨学生かもしれない。
「お金は、三か月分僕が前払いしますんで、三ヶ月だけ契約してください。お願いします。」
なんてのもあったけど、どういうシステムになってるんだろうなぁ。
恐らく、ノルマがあるのだと思う。

そして、三ヶ月新聞をタダで取った。
ビール券5枚と、アタック二箱と、
観ないって言ってるのに巨人戦のチケット2枚まで頂いた。

とば口の 213からでかい声 奥の住人すぐ居留守

虎の威を借る 痩せ狐 見えるところに柔道着

<仏壇>

他にもいろんな勧誘があったなぁ。
お馴染み創価学会ももちろん来た。
何を隠そう管理人のオバサンが公明党なのだ。
選挙の日なんか、下から叫ぶ。
「Tarouーさーん。早く起きて選挙に行って来なさーい。
誰の名前を書くか分ってるわよねー。」って。

大学の同級生がなぁ、管理人のオバサンにではないけど、
50万円もする仏壇を買わされちゃってねぇ。
そいつの家は、天理教なのに。

あだ名は「ボボ」。

ある日、親が広島から上京してくるってんで、
仏壇を押し入れに隠してたんだけど見つかっちゃって、
一時、「日の寄進」とかで天理の道場に送り込まれちゃって、単位を落とした。
もともと2浪で俺より二歳上なのに・・・。

天理教 畑違いの公明党 仏壇買わされ 囚われのボボ

<ゆきこ>

「貴方のことを、ずっと見ていました。
思い切ってお話ししいたいことがあります。
○月×日△時に、新宿○舞伎町のル○ワールで待っています。ゆきこ」

こんな葉書が届いた事がある。
ずっと見ていたなんて、照れるやんけ。

しかし、俺はゆきこなんて全く知らない。
消印も新宿だし、通ってる高尾校舎とはずいぶん離れてる。
が、指定の日時に、指定の喫茶店で待ち合わせしてみた。

いわゆる好奇心というものである。
もちろん、「生き馬の目を抜く」と、評判高い東京fだ。
万全の対策は考えてある。

ヤマモトに俺の代役をさせて、約束時間に指定の場所に座らせて、
俺達仲間数人は少し離れた席でコーヒーを注文。

なんだかドキドキする。
時間が来ると、なるほど、ゆきこ が来た。
耳をダンボにして聞いていると、ヤマモトに向かって「Tarouさんですね?」とか言った。
・・・ずっと俺のことを見ていたくせに顔は知らないみたい。

即刻、勧誘販売と決定。Guilty!!
ヤマモトが返事するより早く、
たちまち怖そうな男が二人やってきて、ゆきこ と交代。
「じゃぁ、後はこの方達とお話してネ。」
ヤマモトを置き去りにしてサッサと ゆきこ は店を出ていっちゃった。
さあ、事前に立てた綿密な計画通りにヤマモトを救出しなければならない。

すでに男たちの手には宝石箱みたいなビロード張りの青い箱が乗ってる。
いったん、出口の方に廻って、
今入ってきたような顔で「おう!ヤマモト、ずいぶん待ったけ?」
目の前の小男をてっきり俺だと思い込んで話を進めてた二人の悪徳業者、
あっけにとられている。

だが、もともと獲物が誰でもいいわけだから、開き直ってきたきた。
「おぅ。オマエラもここに座れ。」とか言い出した。

そこで、作戦にはなかった方法をとる。
俺の横のヤマチャンを、足払いでひっくり返す。
もちろん、頭を打たないように襟をつかんだ手首は返して。

びた〜んと、ヤマチャンが音を立てて倒れる。
音に驚いた他の客や店員がみんなこっちを見た。・・・そこで、

「おじさん、いきなりなにするんですか!?」

俺の、投げた手は、もう助け起こそうとしている手に変わってる。

「ひでぇ〜〜」
と言ったヤマチャンの声は俺に向けてなのだが、
誰もそうは思わない。オジサンたちのほうが明らかに悪人づらだし・・・。

手に持ってた宝石箱を慌ててポッケにしまっておじさんたちが逃げ出した。

店員が、御怪我はなかったですか?申し訳ございませんでした。
と、コーヒーをタダにしてくれた。

そして、待ち伏せされて仕返しされないように、店の裏口から表通りまで
護衛付で送ってくださった。

しかしやはり怖い。表向きは冷静に店を出て、
後を見ながら一目散に逃げてきた。

歌舞伎町 噂たがわぬ 歓楽街 一般人にも護衛つき

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