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このページは、想い出のページなので、時間的概念がありません。時代を行ったり来たりします。

<東京都民、23区民>

部屋を決めた後に、タイガースカラーの大学からの合格通知も届いた。
そして、めでたく高校も卒業だ。
東京が俺を待っている。
呼んでいる。
トップ・オブ・シルバーマウンテンが春からの、俺の棲家だ。
さあ、身辺整理だ。
なんて思いながら入学案内のパンフレットにゆっくりと目を通した。
・・・目が点になった。

四年間のうち、後の二年間は下宿のすぐ近くなのだが、
最初の一般教養の2年間は、八王子校舎
って書いてある。
しかも高尾駅からバスで行くらしい。
高尾って地名を地図で調べたら、山梨県との境目じゃないけ!?
雄大な自然の中で、あなたの可能性を・・・」とか書いてあったような気がする。
都心から約50km。

雄大な自然の中でなんて、俺には何の殺し文句にゃならない。

それはそれでしょうがない。中央線で一本じゃないか。
って運賃が半端じゃない。
隣を走る京王線の方が遥かに安い。
しかし、哀しいか京王線じゃ、夕方6時から始まる専門学校に、間に合わない。
何だかんだで片道2時間ぐらいは、かかる計算。

最初は要領が分らないから、大学の授業を目一杯履修してしまった。
だから急がないと6時までに<東京>に帰れない。
高尾まで来ると、一緒に乗ってる乗客が、ユデタマゴ剥いて、
銀紙に包んだ塩をつけて食ってたりする。
きっと、高尾山のお参りの人だろう。
ここは、俺が思ってた東京じゃない。・・・絶対に。

中央線 立川あたりで様変わり リュックを背負ったユデタマゴ

そんなわけで最初の2年は、忙しかった。
朝、八王子に、いや、高尾山めざして茗荷谷から赤いのに乗って御茶ノ水。
オレンジ色に乗り換えて、高尾駅までひた走る。

救いは、通勤ラッシュが終わっている時間ということ。
まだ、「ウォークマン」の混沌期だから、退屈な電車通学に、
みんなそれぞれ大きさの違うプレーヤーに、
イヤホンを繋いでシャカシャカさせながら暇な時間つぶし。
俺のは、オートリバースが付いてないから、片面が終わると、
何気ない素振で音もなく素早くテープをひっくり返す技を習得。
オートリバースが当たり前になりつつある頃の話。

そんなに暇だったら勉強の本でも読んでりゃいいのに。

楽をして 120分使ったら 振動だけでからまったカセットテープ

授業が終わると、これから飲みに行く奴、カラオケに行く奴、
貸しスタジオに練習に行く奴(俺は音楽のサークルにはいっていた)、
みんな散りぢりに去っていくのに、

独り、都心にめがけてオレンジ色に飛び乗る。
今からなら20分前に着けるかなとか、だいぶ慣れて来た電車通学で素早く計算をする。
6時からまた専門学校でお授業だ。
まあ、こんな緊張感のある生活が長く続くはずがないのだが・・・。

専門学校さえちゃんと行っていれば、俺の就職は心配ない(国家試験はあるけど)。
大学は、卒業さえすればいいのである。(親が読んだら泣くなあ)
要領さえ覚えれば後は簡単。
教授なんて無気力人間の代表みたいなのが多いから、試験問題なんか毎年同じ。
先輩から去年の問題を仕入れて、ノートに自筆で写して(自筆ノートは持ち込み可が多かった)
試験の時は、用紙に写すだけ。
これで「優」がもらえるんだからアホくさい。

それが分れば怖いもの無し。
今度は、アルバイト人生の始まりである。
夕方からの学校は真面目に行ってたけど、高尾にはだんだん足が向かなくなった。

日曜日とかは、運送屋で引っ越しのアルバイト。
お歳暮の時期は三越でアルバイト。
セールスマン、冷凍庫内作業、外タレのコンサート・スタッフ、何でもやった。
すでにやる仕事は決めていたから、
それまでにいろんな経験も積んでおきたかったっていうのもあるかもしれない。

さあ、金が貯まってきたらやることは一つ。
東京に来て、何に驚いたって、高校生がバイクに堂々と乗っているってこと。

俺の田舎じゃ、公共機関が全く無いくせに、
三無い運動とかで、高校生は免許が取れない。
見つかったら停学だ。

免許取らせない。乗らせない。買わせない。
も一つおまけに 車に乗せてもらわない。

それが、こんなに網の目のように地下鉄が走り、
地面の上でも電車が交差してる東京で、高校生がバイクに乗ってるのだ。
片岡義男や、佐々木譲、等々が書く、オートバイ小説を読みながらその世界に憧れ続けた少年は、
バイトの給料を握りしめ、バイクの教習所へと走ったのである。

免許証 取ってはいけない 乗らせない も一つおまけに買わせない

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