学校の廊下

木造の校舎の廊下は温かい。

 よく磨かれた床の板は日の光が差し込むとその光を柔らかく反射する。反射した光の粒は天井に優しくとどく。今までの時間とは違う流れの中にいるようで,ちょっと寂しい感じがするが,何となく懐かしく心地よい。

 スケッチでは分かりづらいが,図書室の前の廊下は仕切られていて,図書室の一部分になっている。廊下だけど廊下ではない。ここには古い本や資料が置かれていて,幼い頃に見た風景を思い起こさせる。
 幼い頃に嗅いだ少しカビくさくそれでいて秘密めいた書斎。記憶の中にある書斎は,電灯はついていなくて窓からの光が差し込んでいる。明暗がはっきりしていて,陰の部分が暗くてはっきりしない。大きな本棚と大きな机があり,本棚には立派な本がたくさん並んでいる。書斎なんてものはどの友人宅にもなかったから,近くの医院で遊んだときにでも見たのだろう。その記憶が一枚の絵として残っている。

2005,9,24

※以前この校舎の1階の廊下を描いている。


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