イスラマバードの風 NO.3    2007年5月31日発行

 アッサラーム・アレイコム。石原武司です。
 (あなたに平安あれ=こんにちは) 
 パキスタンに来て2ヶ月、こちらの生活にもようやく慣れてきたという感じです。先週からはウルドゥ語も習い始めました。
 パキスタン人からよくパキスタンの印象を聞かれますが、いつも”too hot”と答えています。イスラマバードは福岡と同緯度ですが、本当に暑い。最近は、日中の気温が体温を超える(38度)毎日が続いています。ひとつ嬉しいことは、少し前からマンゴが出始めたことです。パキスタンのマンゴは甘くて、ジューシー、それに安い(1kg25ルピー=50円)と三拍子揃っています。マンゴに限らず、オレンジ、桃、メロン、スイカなど、パキスタンは果物が豊富で安いのがうれしい。
 日本でも報道があったと思いますが、最高裁長官の罷免問題に関連して、カラチでは銃撃戦があり多数の死傷者が出ました。しかし、イスラマバードは政府権力が強いせいか、デモはあっても比較的平穏です。十分気をつけて生活していますので、どうかご心配なく。

◆ 私の日課
 私は毎朝4時過ぎ、近所のモスクから聞こえてくるアザーン(礼拝の呼びかけ)の声で目を覚まします。少しまどろんで、起きるのはたいてい5時頃です。5時過ぎから30〜40分英語の勉強(英語がなかなか上達しないので)をしたあと、6時過ぎから30分程、妻といっしょに散歩も兼ねて、モスクの裏にあるミニ・マーケットに買い物に行きます。朝食を終えて少しゆっくりして、8時20分頃タクシーで職場に向かいます。勤務時間は8時半〜5時ですが、研修のない期間は3時に帰ってよいことになっています。勤務時間内の10時半〜11時はティータイム、1時〜2時は昼休みなので、実働5時間です。ボランティアは仕事が趣味みたいなものなので、もっと仕事がしたいのですが、私が居残ると戸締まりの人が帰れないので、私も同じように早く帰ります。帰宅はだいたい4時頃。帰宅後1時間ほど昼寝をして、7時頃夕食。夕食後、入浴、メールチェック、TV鑑賞(NHK衛星放送)をした後、10時には就寝、というのが1日の日課です。
 こちらは週休2日ではありません。日曜日は休みですが、土曜日はふだんの日と同じです。その代わり金曜日が半ドンで、午後はモスクに行って礼拝するための時間になっています。

◆ ラフィークのこと
 ラフィークはタクシーの運転手です。ゲストハウスから勤務先のNISTEに通うのに、私は毎日タクシーを拾っていました。毎日の値段交渉に嫌気がさし始めた頃、出会ったのがラフィークです。初めて彼の車を捕まえたとき、私が「NISTEまでいくら?」と聞くと、彼は”You decide”と答えました。私はいつもと同じ60ルピー払いましたが、かけひきをしなくてよいのでとても気が楽でした。彼は運転も丁寧だし、携帯も持っているので、専属運転手になってもらうことにしました。
 彼はパキスタンでは珍しく、モスリムではなくクリスチャンです。パキスタンでは97%がモスリムですから、数少ない非モスリムのひとりです。年齢は42才。年の割によく禿げていて、日本の俳優、大滝秀治に少し似ています。子供は小学校5年の女の子と1年の男の子のふたり、共働きで奥さんは看護婦さんです。彼はイスラマの隣町のラワルピンディに住んでいますが、近所に住みイスラマの病院に勤めている医者の送り迎えもしています。毎朝8時にその医者をイスラマの病院まで乗せていき、その後、8時20分に私の家に来て、私をNISTEまで乗せて行きます。NISTEには8時40分に到着、10分遅刻ですが、その分帰りを少し遅らすことにしています。
 年配の運転手はたいていウルドゥ語しかできませんが、彼は英語が出来ます。そこで、行き帰りの車の中で彼にパキスタンのことをいろいろ教えてもらいます。彼によると、罷免された最高裁長官はGood manで、大統領のムシャラフは今は余り人気がないそうです。でも、10月の大統領選は他に有力な候補がいないので、結局ムシャラフが再選されるだろうというのが彼の意見です。また、イスラマの自家用運転手の給料は6000ルピーくらい、彼の1日の稼ぎは1200ルピーくらい。車は自分のもので、燃料はガソリンでなく安い天然ガスを使っているので何とかやっていけるとのことです。
 私は通勤以外にも、帰りに銀行に寄ったり、実験材料を買いに行ったり、JICA事務所に行ったりするのに、彼の車を使い、少し手当をはずむようにしています。妻も週に1回、彼の車で隣のセクターのマーケットに買い物に行ったりしています。当初、私はこちらで車を買う予定でしたが、こちらのドライバーの乱暴な運転に恐れをなし、こちらでは運転しないことにしました。いい運転手に巡り会ったので、せいぜいタクシーを利用しようと思っています。いくら贅沢にタクシーを使っても、月5000ルピー程度。車を持つよりずっと安上がりです。
 
◆ ラワルピンディ
 先日、ラフィークの案内で妻と一緒にこの町を訪れました。イスラマバードではどうしても見つからない実験材料を探すのが第1目的でしたが、ついでに台所用品や野菜も買ってこようということで行きました。
 イスラマバードの中心部とラワルピンディの中心部の間の距離は約15kmです。イスラマバードからラワルピンディに入ったことはすぐに分かります。整然とした街並みが急に埃っぽく乱雑な街並みになるからです。ラワルピンディの中心のラジャ・バザールというところにいきましたが、道は人と車であふれ、道の両側には小さな店がひしめき、客を呼び込む声が飛び交っていて、とても活気のある町です。これは、戦後間もない大阪の町だ!私はとても懐かしい気分に浸りました。
 ラワルピンディは古い町で、新しい首都イスラマバードを建設するとき、その基地となり大きく発展しました。現在の人口は140万人で、イスラマバードの倍近くあります。ラフィークもそうですが、私のカウンターパートのMr.イムランやMrs.サバもこの町に住んでいます。ごみごみしていますが、物価はイスラマの6〜7割で、パキスタン人には住みやすい町だからです。
 ラワルピンディの交通ラッシュを作っているのは、自家用車、タクシー、オートバイ、スズキ、トヨタ、オートリキシャなどですが、それに加えて荷車を引くロバなんかもいて、交通ラッシュに拍車をかけています。
 ここでちょっとパキスタンの交通機関について説明しましょう。
【タクシー】イエローキャブともいわれ、黄色に塗っています。たいていがスズキの軽四輪で、天然ガスで走っています。
【オートリキシャ】三輪のタクシー。イスラマでは走れない。
【スズキ】スズキの軽トラックを改造したミニバス。10〜12人乗り。華やかな装飾が施されている。
【トヨタ】トヨタのハイエースを利用した遠距離ミニバス。14人可。
【パキトラ】こちらのトラックはみんな華やかに装飾している。
【パキバス】こちらの私営バスもきれいな装飾が施されている。
【パキ腹】これは乗り物ではありません。パキスタンで生水を飲むと、てきめんにお腹をこわします。これをパキ腹といいます。これまでに、私が1回、妻は2回経験しました。ではまた。

              パキトラとパキバス

ペシャワール・モールで


ペシャワール・モールで


近所のモスク


早朝のモスク裏ミニ・マーケット


Mr.ラフィーク


7ルピーのチャイを飲むラフィーク


私とラフィーク(シャカールパリアン公園で)


ラワルピンディの交通ラッシュ


ラジャ・バザール


ラジャバザールの八百屋


オートリキシャ


これがスズキだ!