イスラマバードの風 NO.29      2009年9月21日発行

 アッサラーム・アレイコム! お久しぶりです。石原武司です。
 6月3日から8月29日まで約3ヶ月間、パキスタン国理科教育改善プロジェクト(正式名はTechnical Cooperation Project for Promotion of Student-Centered and Inquiry-Based Science Education、略してSCIB Project)の仕事でイスラマバードに行っていました。
 向こうでの生活・活動の様子を、家族や友人に送ったメールを通してお知らせしたいと思います。

◆ 家族宛メールNO.1(6月14日)
 1週間が無事に終わり、今日は帰りにプロジェクトメンバー4人(コーエイ総研のMさん、Nさん、Hさんと私)で韓国料理店に食事に行きました。ビール1本600ルピー、食事も入れると一人2300ルピーもかかりましたが、なかなかおいしかったです。
 この1週間で、やっと仕事も生活も軌道に乗りました、といいたいのですが、仕事の方はまだです。来週、100人規模の大きな会議があり、教育大臣も出席します。そこで私は10分時間をもらって、演示実験を見せます。それが無事に終われば、仕事も軌道に乗ったと云えるでしょう。
 生活の方は、今週月曜から安いゲストハウスに移りました。いろいろ難点もありますが、浴槽、冷房、自家発電、インターネットが完備しているので、何とか我慢できる範囲です。
 先日、日本人学校のH先生に会いに行った帰りに、コサールマーケットでオーストラリア米を5kg(1600Rs)買いました。あと、アッパラマーケットで炊飯器(2400Rs)、手鍋(700Rs)、電気湯沸かし(900Rs)も買い、やっと自炊ができるようになりました。さっそく、ごはんと、みそ汁、味付けのり、ふりかけの夕食をし、ささやかな幸せを味わいました。炊飯器は8合炊きで、最低2合炊かねばならないのですが、工夫すれば、1合でも炊くことが出来ることがわかりました。明日は、3人を招いてカレーパーティーをしようと思っています。 
 治安の方は、3日に1度くらいの割でどこかで自爆テロがあり、イスラマでも警戒して生活するように言われています。大きなマーケットには、11時〜1時半の間しかいけません。また、ジョギングは誘拐が恐いので控えています。以上今週の報告でした。

Oさん宛メール(6月21日)
 こちらに到着して、2週間と少しが過ぎました。生活も仕事もまずまず順調にスタートしました。何しろ、オフィスは私がボランティアでいたニステ内だし、一緒に仕事をするパキスタン人はボランティア時代の同僚、宿泊先は前に住んでいた住宅から100m程離れたところのゲストハウス(1泊2500ルピー=3000円ちょっと)です。ただ、前と異なるのは、イスラマの警戒態勢です。パキスタン軍のタリバン派掃討作戦の激化とともに、タリバン派の報復テロが各地で発生、イスラマ市内も戒厳令が敷かれています。買い物は11:00〜12:30の間のみ、移動は必ず車でといわれています。自爆テロと誘拐を恐れてのことで、朝のジョギングも控えています。仕事しかない毎日なので、ストレスを貯めないように工夫することが大切です 
 今回の仕事は、教師中心・注入型の理科教育を、生徒中心・探求型に変えることですが、ボランティアのように「自分の出来ることを、出来る範囲で」ということではなくて、必ず結果をださねばならないから大変です。

◆ 家族宛メールNO.5(7月6日)
 今週は、まず6月30日(火)に、キック・オフ・ミーティングという大イベントがありました。これは、これからJICAとパキスタンの共同プロジェクトを開始しますという集会で、このプロジェクトに関係する約80人のパキスタン人とJICAから5人が出席、パキスタン側からは教育大臣も出席しました。大臣が出席してくれると、パキスタン人のこれからの頑張りが違ってくるので、とてもありがたいです。
 ここで私は、集会の雰囲気を盛り上げるため、デモ実験をやることになっていました。出しものは、いろいろ考えた末、素人にも見応えのあるものということで、ビンに吸い込まれるゆで卵とマグデブルグの半球実験2種類をやることにしました。昔はこんなデモ実験をやるときは、前の晩遅くまでかかって原稿を書いていましたが、最近は簡単なメモだけでやれるようになりました。今回も出しものの選定がよかったせいか、デモ実験は大成功。NISTEの所長も、昔の同僚も、JICA、コーエイの人たちも、みんなよかった、面白かったと言ってくれました。これで、あとの会議もやりやすくなり、プロジェクトは順調なスタートが切れました。
 7月2日(木)にも大事な会議がありました。このプロジェクトの主たる目標は、生徒中心・探求重視の授業のレッスン・プランをまとめて冊子にすることですが、パキスタン人がそういう授業の見本を見せてくれというので、仕方なく引き受けました。これも失敗すると後の仕事がとてもやりにくくなるので、デモ実験以上にしっかり準備をしました。その甲斐あって、授業もレッスン・プランも大好評でした。
 ということで、プロジェクトは順調に滑り出したので、今日はコーエイの2人と、韓国料理店で祝杯をあげました。(毎週、土曜日は外食しています。)先週の日曜は私のゲストハウスに2人を招待、トリ飯をご馳走、そのあと、ペシャワール・モールに案内しました。明日の日曜は、ヒマラヤ山脈の西端のダマネコに2人を案内した後、コサールマーケットに連れて行き、昼はピザ・ハットでと考えています。
 元気にやっていますのでご安心下さい。

◆ 家族宛メールNO.6(7月12日)
 暑さのピークは過ぎたとはいえ、今週も暑い一週間でした。プロジェクト事務所は2階なので、冷房が効きにくく、その上、8時〜9時、13時〜14時は停電、おまけに節電のため、午前11時までは冷房をするなという通達も出ています。毎日が暑さとの戦いです。
 今週は大きな行事が無く、来週開かれるレッスンプラン会議(40人規模)の準備に追われていました。レッスンプラン作成グループは、NISTEから10人、あと30人は教育省や4つの州から来ています。グループはさらに10班に分けられ、その世話役にNISTEのメンバーがなっています。そのNISTEのメンバーがしっかりしないといいレッスンプランができないので、今週はNISTEのメンバーの指導に追われていました。指導といっても、私の英語力がいまいちなのでなかなか大変です。でも、みんな顔なじみなので、何とかやっています。
 元気にやっていますので、ご安心ください。

◆家族宛メールNO.7(7月21日)
 先週は、14(火)、15(水)と、パキスタン各地から約30人の人間を集めて、新カリキュラム4年生理科の模範教案づくりワークショップを開きました。月1回、計6回のワークショップで、50の模範教案をつくり、それを中心に先生用指導書を作るのが目的です。今年は、4・5年用指導書、来年は6・7年用、最後の年は8年用指導書を作ることになっています。このワークショップは私とコーエイのMさんと2人で取り仕切らねばなりませんが、NISTEの職員がよく協力してくれたので、この仕事もまずまず順調に動き出しました。(仕事の話ばかりでスミマセン)
 15日(水)の夜、若手のH君が日本に帰ってしまったので、パキスタンのこのプロジェクトは私とMさんの2人になってしまいました。2人は違うゲストハウスにいますが、毎日1台の車に同乗して通勤しています。土曜日の夜はいっしょに外食、日曜は私のいるBritish Lodgeで私がカレーか鳥めしか五目寿司をご馳走します。仕事以外は食べるだけが楽しみの毎日ですが、これではメタボになるので、治安もだいぶ改善されたので、また朝のジョギングを始めようと思っています。

◆ 孫宛メール(7月22日)
 あつしくんへ
 夏休みがはじまりましたが、毎日げんきにやっていますか? おじいちゃんはパキスタンのイスラマバードでしごとをしています。世界ちずでイスラマバードをみつけてください。 ここはとてもあつくて、きおんは40どをこえます。 でも、ここのマンゴはとてもあまいです。 あつしくんはマンゴをたべたことがありますか? おじいちゃんはここのマンゴをぜひあつしくんに食べさせたいので、 8月30日に日本にかえるとき、もってかえるつもりです。 たのしみにしていてください。 では、げんきでね。

◆ O
2さん宛メール(7月25日)
 お便りありがとう。6月3日にこちらに着任しました。私の着任とほぼ同時に、JICAの協力隊員、SVの帰国が決まって、協力隊員は6月中に、SVは7月初めに全員帰国しました。でも、最近は治安が少しよくなったようで、外出制限もほぼなくなりました。
 目下の私の仕事は、生徒中心・探求重視の授業の推進ということで、NISTE10人、4州から集まった25人のメンバーで月1回ワークショップを開き、新カリキュラムに沿った模範教案づくりをやっています。最終的には、それを中心とした教師用指導書を作成するのが目的で、今年は、4・5年用、来年は6・7年用、最後の年は8年用指導書を作ります。
 パキスタンでは、生徒中心・探求重視は時期尚早ではないか、教師中心でもいいから、教師も生徒も楽しい理科授業を作る方がいいのではと思いながら、好きなことだけすればよかったボランティア時代を懐かしみながら仕事をしています。

◆ 家族宛メールNO.8(7月26日)
 今週は月曜日に雨が降って、ちょっと涼しくなりましたが、その後は、また晴れの日が続いて暑い毎日です。こちらでは雨が降ると、ナイス・ウェザーだというのを覚えていますか?
 今週は、NISTEの10人のメンバーに、自分の作ったレッスン・プランに基づいて模擬授業をやってもらいました。ここは何事もインシャラの国、仕事はなかなか計画通りにはいきませんが、焦らず気長にやってます。
 金曜は半日なので、イムランとムバシールをゲストハウスに招待して、五目寿司をご馳走しました。そのあと、彼らはゲストハウスの近くのモスクに金曜礼拝に行くというので、一緒に行って、写真を撮ってきました。小さなモスクなのに、中に500人、外に500人、合計1000人以上の人が礼拝をしていました。彼らが一緒だったので安心して写真が撮れました。

◆ 家族宛メールNO.12(8月23日)
 コーエイのMさんが帰られて1週間、私と現地職員のアサッドで事務所を守ってきましたが、今日コーエイのNさんが来パ、私はいよいよ1週間後に帰国することになりました。
 イスラマバードはやっと雨季が終わったようで、このところ朝はとても爽やかです。Nさんは6月のイスラマを知っているだけに、余りの爽やかさに驚いていました。
 今日は5時に仕事を終えて、Nさんの買い物に付き合いました。どこでもいいというので、F6のベストプライスとコサールマーケットに案内しました。ベストプライスでは、郁子さんご所望のアプリコットのピール3個(マンゴのピールはないといわれました)とガーリック・チリソース2個買いました。おみやげはこれらと岩塩3kgとマンゴ4kgをスーツケースに入れて持って帰るつもりです。マンゴは検疫で没収になるかもしれませんが、没収にならないようアラーに祈るのみです。
 今週の月曜、イムラン宅に招待され、イムランの娘とご対面をしました。イムランそっくりの大きな目、一目でイムランの子どもとわかりました。よくみると、奥さんにも似ています。どのように褒めればよいかちょっと困りましたが、ともかく抱かせてもらうことにしました。最初ちょっと泣かれましたが、3分もするとこっちのペース。コチョコチョの技ですっかり手なずけました。「オー・マイ・グランド・ドーター」といってあやしてやると、イムランも大喜び、親ばかは世界共通だと実感しました。でも、抱いているうちに、このギョロメ娘もだんだん可愛く思えるようになりました。
 明日の日曜日からラマザンが始まります。明日はカレーを作って、昼食と夕食にしようと思っていますが、月曜日から昼食をどうしようかと思案しています。多分、パンを買っていって、コーヒーとパンで済ますことになるでしょう。火曜日には、ラベンダー・ゲストハウスに移って、3泊して帰国することになります。関空着は、8月29日(土)の19時(タイ航空TG620)です。迎えよろしく。
※1: アラーのご加護で、マンゴは検疫にはかからず、
    無事孫の口に入りました。めでたしめでたし。
※2: 次号は12月に発行の予定です。

マルガラ山から見たイスラマバード


ゲストハウスの近くのモスク


建設中の証券取引所


ゲストハウス近くの公園


British Lodge ゲストハウス


以前住んでた家


プロジェクト・オフィス(NISTE内)


キック・オフ・ミーティング
(左からJICA副所長、教育大臣、NISTE所長)


キック・オフ・ミーティング


演示実験を見せる私


参加者席


エッグ・イン・フラスコ


マグデブルグの半球実験の演示


指導書作成委員会の会議


ペシャワール・モールの果物屋


パキスタン・マンゴ


寿司を食べるイムランとムバシール


プレイ・タイム(モスク内)


プレイ・タイム(屋外)


イムラン一家


ムバシール・私・イムラン嬢


私とイムラン嬢


イムランの愛娘