イスラマバードの風 NO.22      2008年10月26日発行

 みなさん、こんにちは。石原郁子です。
 
 イスラマバードはやっと涼しくなりました。先月号で「秋分を過ぎるとさすがに暑さの戻りはない」と石原が書いたのは誤りで、30℃を越える日がその後も続きました。10月になっているのに寝室(二階)は32℃を越えウンザリしたのもたびたびです。でも、今日(21日)は晴天で室温24℃湿度20%と快適です。
 イスラマバードは3月末から9月末までの6ヶ月間が盛夏でその他が秋、冬、春です。2月になればもう半袖でもOKと云うところですが、時々季節はずれの寒さがやってきたりするので注意が必要です・・・。
 昨日「22号はまだですか?」とメールで問い合わせてくださる方がありました。拙い文章でも楽しみにして下さる方があると知って私の心にポット明かりがともりました。ここでの不自由極まるシニアボランテアの生活・・・。ラマダンのあとイード(EID)の3日間のお祭りが終わった途端、また停電が始まりました。一日計8時間、一時間止まると2時間点くという規則正しい繰り返しがまたまた始まったのです。UPSを持たない我が家は電気が消えると真っ暗なので寝る以外ありません。夜9時(10月末まではサマータイムなので本当は8時です)に消灯する老人ホームに入れられたような感じです。仕方がないので介護老人ホームに入居したことにして、そこでの会話を想定して楽しんでいます。私がヘルパー役で石原が入居者です。
  
  私 「おじいちゃん!.おしめかえたげよーか?」
 石原 「いらん!!! 」

 ☆ ラホールでの理科部会と日本文化紹介
 10月16日、ラホールのコトラクパット(GCET)大学で生物を教えるT女史主催のワークショップが開催されました。物理、化学、生物の計8名のSVによる理科実験・演示が行われ、それを見る学生や先生達の熱心な目に驚きました。午後からは現職の先生方も見学に来ていろいろ質問をしていました。私は医療関係の仕事をするJOCVの女性3名と一緒に、浴衣の着付けや生け花、歌(”さくら” と ”もみじ”の合唱)、折り紙や習字、大使館から借用の日本のポスターなどの日本文化紹介を手伝いました。浴衣の着付けは女子大生に大人気で、次から次から押しかけ、一度着るとなかなか脱ぎたがりません。とても忙しくてドット疲れましたが、そのどれもが好評だったので、嬉しく思いました。その模様は当日の夜のTVに長い間写っていたとのことです。(ホテルのTVが故障していて私たちは見ることができませんでした。)。
 この大学は昨年一度訪れたことがあるので、T女史のカウンターパートの女性教授二人がとても歓待してくれました。ここの学長はメッカに巡礼に云って留守とのこと・・・当たり前のことですが、ここがイスラムの国だとつくづく思ったのは、この”巡礼”という一言でした。

 ☆大巡礼
 イスラム教徒はサウジアラビアにある聖地メッカのカウバ神殿に巡礼をします。その中でもイスラム暦の12月(ズーアルヒッジャ)の8日から10日に巡礼をすることを大巡礼(ハッジ)といわれています。この大巡礼から帰ってきた人は名前の前にハッジをつけて敬われます。女性ならハッジャーです。
 私は昨年11月29日、バンコク経由で一人日本に帰りました。バンコクでのトランジットで広い待合室に入ったときのことです。奥の方へ行こうとすると、阻止されました。「巡礼者以外入ってはいけない」と。何事かと周りを見ると異様な姿の200人ぐらいの老若男女が何かを口々に唱えています。それをリードする人もいてみんなの気持ちを高めているようです。皆、縫い目のない二つの白い布(バスタオルのようなもの。イフラームと言う。)だけを身につけています。パスポートや貴重品などは白い布袋に入れ、首からぶらさげています。仕方がないので私は彼らの近くで椅子にすわり本を読んでいました。先程私を拒んだ人が近づいてきます。コーヒーを運んできたようです。「どうぞ」と言うので「私は注文していません。間違いですよ。」と言うと、「あなたに持ってきたのです。先程は失礼しました。」とのこと。思いがけず美味しいコーヒーを頂きました。
 それから何となくうち解けて巡礼者の周りの人たちに「何処へ行くの?」「どうして?」「誰と?」など、わかりきった質問をして楽しんでいました。そうこうするうちに彼らの方が先に旅立っていきました。メッカまで飛行機で行ける彼らはかなりの裕福層です。巡礼はイスラム教徒としてしなければならない5行(ごぎょう)のひとつですが、なにぶんにもお金と暇がかかるので必ずしもということではないようです。他の4行は
 @信仰告白; 自分はイスラム教徒であるとアッラーに云う。毎日のお祈りの時に唱える。「ラー・イラーハイッラッラ・ムハンマド・ラスールッラー」。アッラーの他に神はなくムハンマドはアッラーの使いです。
 A一日5回のお祈り; モスクからお祈りを呼びかける「アザーン」が大きな音でスピーカーから流れてきます。この祈りは立ったり座ったり腰を伸ばしたり声を出したりなどの動きのある祈りです。職場の体操のようで見ているととても身体に良さそうです。
 Bラマダン月の断食; 日本でもよく知られている断食です。イスラム教徒は、日の出より一時間以上前に朝食を終わらせ、日の入り後夕食をとります。約12時間水も飲みません。
 C喜捨(ザカート); 自分の持っている財産に応じて、貧しい人々にお金や物を施す。
 なおイスラム暦では一日の始まりは、日没の時刻です。イスラム教のカレンダーのことを、イスラム暦叉はヒジュラ暦といいます。ムハンマドが迫害を受けてメッカからメディナに移住(ヒジュラ)した年がイスラム暦の始まりで、西暦622年に当たります。その時の信者はわずか140人。その後1400年を隔てて今は10億に近い信者がいます。しかもその数はさらに拡大しつつあるようです。イスラム暦でいうと今日2008年10月21日は1429年SHAWAL シャッワール(第10の月)の19日になります。

 ☆イスラマバードの現状
 世界的な金融危機に直面して、日本では株価急落、円高など前代未聞の状況のようですね。パキスタンでも経済状況は悪く、赤字再建国としてIMFの介入を受けるといわれています。 イスラマバードやラホールの銀行の中にはドルを引き出せない所があります。困ったことです。
 また私たちが住むF7地域の真ん中にあるジナーマーケットや、隣のF6にあるスーパーマーケットにテロ予告があります。叉始まった停電とあいまって不安と不自由な毎日が続いています。当然のことながら外出を控えねばなりません。そんな中で私は細々と植物画を描き続けています。描き始めると4〜5時間もすぐに過ぎてしまいます。恥ずかしながら少しだけ披露させていただきます。
 今まで描いた中では、バラ科の多年草で山野に自生するワレモコウ(吾亦紅)が好きです。たしか昨年の紅白で初老の歌手が歌っていたのも「吾亦紅」だったと思います。

 ♪あなたにあなたに謝りたくて・・・・来月離婚するんだよ・・・・はじめて自分を生きる・・・・♪
 
 なんとなく気になる歌でした。吾亦紅・・・雑草の中にあって赤い小さな花をつけ、強い秋風にもめげずに細い茎で立ち上がる強さを秘めている・・・。昔からある花なのでしょう。源氏物語の「匂宮」にも出てきます。その頃からずっと目立たない花のまま強く生き残っているのですね。
 
 吾亦紅、ひとつさびしく花つけて、秋の千草の中にまぎれず
                         峰村国一

 私は今のところ、「宝石を欲しい」とも云わず、「どこかしこに行きたい」などとも云わない、いじらしい古女房をやっています。
                         それではまた。

ラホール教育大学(UE)にて


GCETでSVを代表して挨拶をする石原


一人づつご挨拶


石原のブース(物理)


SVのKさんのブース(物理)


T女史の生物のブース(DNA抽出)


SVのOさんのブース(物理)


SVのSさんのブース(化学)


ふたりの女性教授とS夫人





吾亦紅


バラ