イスラマバードの風 NO.21 2008年9月28日発行
アッサラーム・アレイコム!石原武司です。 (あなたの上に平安あれ!) お彼岸が過ぎて、イスラマバードにもやっと秋がやって来ました。9月初め、2・3日涼しい日が続いたので、妻はやっと秋がやってきたと喜んでいましたが、それはぬか喜びで、パキスタンの夏はそう簡単には去ってくれません。そのあと、何日も寝苦しい日がありました。でも彼岸を過ぎると、さすがに季節の後戻りはなく、朝、ジョギングしながら見る空は、まさしく秋の空です。 ◆ マリオットホテル炎上 日本でも大きく報道されたことと思いますが、マリオットホテルが爆弾テロの標的となり全焼、死者52人、300人以上の負傷者を出しました。 爆発があったとき、私はちょうど風呂に入っていたのですが、大きな爆音と同時に、風呂場の窓が爆風で振動しました。余りにも大きな爆音だったので、てっきり借家から100m以内で爆発が起こったと思いましたが、JICAからの連絡で、2km離れたマリオットホテルであることを知りました。
マリオットホテルには日本食レストランがあり、2・3度行ったことがあります(高いのでたびたびは行けません)。久しぶりに日本食が食べたいなと思っていた時なので、もし食べに行っていたら・・・と思うと、ぞっとします。
マリオットホテルは以前にも一度自爆テロ攻撃を受けたことがあり、それ以後、車や来館者に対するチェックが厳重で、過剰と思われる程の警備体制でした。普通なら攻撃を諦めるところですが、犯行グループは始めに乗用車による自爆テロで検問を爆破、そのあと1トン以上の爆薬を積んだトラックでホテルに突っ込んだそうです。
一体誰がやったのか? 犯行はアフガニスタンのタリバーン(学生という意味)と繋がりがある北部イスラム過激派(パキスタン・タリバーン運動)によるもので、パキスタン軍による北部イスラム過激派撲滅作戦に対する報復だと言われています。アフガニスタンのタリバーンも、ソ連のアフガン侵攻に抗するため、パキスタンで育てられました。アフガニスタンとパキスタンは、宗教的にも民族的にも繋がりが深く、アフガニスタンに平和が戻らない限り、パキスタンにも平和はやって来ません。 自爆テロは第二次大戦中の日本の特攻隊をまねたものと言われ、その実行主体は大部分が10代の若者です。自爆テロの実行犯が自分の命を軽く見るのは当然ですが、罪もない他人の命を同じように扱うのは許されないことです。何が彼らを自爆テロに駆り立てるのか、私はそれが知りたいのですが、なかなか答が見つかりません。 NISTEの副所長であるDr.シャミにそんな疑問をぶつけると、「それは貧困が原因だ」と彼は言います。パキスタン北部の貧しい農民は、子どもを学校にやることが出来ず、お金のかからないマドラサという宗教学校に子どもをやります。マドラサでは、子どもたちにコーランを中心とした宗教教育を施しますが、子どもを自爆テロの戦士に育て上げようとするマドラサの指導者がたくさんいると彼は言います。アラーのために自分の命を投げ出して戦うことは正義であり、その者は天国に行くことが出来、残された家族の幸福も保証されると教え込まれ、彼らは自爆テロの戦士になるのです。お金がなくても行ける公教育を整備することが、自爆テロをなくす道だというのが彼の主張です。ちなみに、パキスタンの識字率は60%弱です。 今年のラマザンは、カレンダーには9月3日からと書かれていましたが、実際に始まったのは9月2日でした。イスラム暦は太陰暦で、ラマザンやイード(ラマザン明けのお祭り)などイスラム教の大切な行事は、イスラム教指導者による新月の観測によって決まります。 ラマザンの1ヶ月、人々は日の出1時間前から日の入りまで、一切の飲食を断ちます。したがって、人々はラマザン中、朝食は午前4時半頃、夕食は午後7時半頃に取ります。私の職場の同僚は全員イスラム教徒ですから、職場では一切飲食はしません。また、町のレストランも昼間はすべて閉店します。 ザマザンが始まったとき、Mr.イムランが ”I started fasting”と言いました。断食することを英語でfastということを初めて知りました。朝食は前夜からの断食を破る行為ですから、だから”Break(破る)fast(断食)”というのですね。 断食は、@食欲という本能を抑える訓練をさせ、精神は肉体より強いことを自覚させる。A食べ物への感謝の気持ちを持たせる。B飢えている人々の気持ちを知る。といった宗教的意義をもっています。私もパキスタン人につきあって断食を!というわけには行きませんが、彼らに敬意を表して、ラマザン中は職場では一切飲み食いしないようにしています。 大変そうですが、実際はそうではありません。ラマザン中の公務員の勤務時間は、午前8時半から午後1時までですから、帰宅する1時半まで昼食を我慢すればよいだけです。普段の勤務時間は8時半から3時までで、その間にお茶と昼食のために1時間半の休憩があるので、実働は5時間。ラマザン中は休憩がないので実働4時間半で、ほとんど変わりはありません。私はラマザン中の方が仕事がはかどるので好きです。これだったら、1年中ラマザンの方がよいと思うのですが、そんなことを言ったら同僚につるし上げられそうです。 私の職場の同僚は全員断食していますが、げっそり痩せる人はいません。日没後の夕食をたっぷり摂るので、かえって肥る人もいます。彼らは決してラマザンが嫌いではありません。みんなで同じ苦しみを味わうことで、仲間との一体感を感じることが出来るからでしょう。 そのラマザンもあと少し、明け方に見る月もだんだん痩せて、次の新月が近づいてました。そして10月1日〜3日、みんなが待ち望んだイードのお祭りがやってきます。 |
秋の果物リンゴ 秋の果物ザクロ 朝の空1 朝の空2 モスク隣の日本人クラブ(2F) お祈りの前の足洗 ジナースーパーのプレイルーム1 ジナースーパーのプレイルーム2 新月に近づいた月(ビルのすぐ上) |