イスラマバードの風 NO.19      2008年8月10日発行

 アッサラーム・アレイコム!石原武司です。
 (あなたの上に平安あれ!)
 このところイスラマバードは毎日のように雨が降ります。もともとパキスタン北部の7・8月は、インド洋からの暖かく湿った季節風が山にぶつかって雨が多いのですが、今年は去年よりずっと雨が多いように思います。一日中雨が降って太陽の出ない日は比較的しのぎやすいのですが、太陽が少しでも顔を出すと気温はたちまち35℃くらいまで上がり、停電と相まって夜はまだまだ寝苦しい毎日です。でも、パキスタンの暑さも彼岸(9月下旬)までですので、もうしばらくの辛抱だと思っています。

◆ 停電のこと
 パキスタンの電力はインダス川およびその支流に作られた水力発電所と各地の火力発電所でまかなわれています。インダス川の水源は氷河なので水力発電量はほぼ一定と思われるのに、今年停電が多いのは、電力需要の急増と火力発電の燃料の高騰のためと思われます。この電力不足に対処するため、パキスタン政府は2月から計画停電、6月からサマータイムを導入しました。
 イスラマ市内の停電は地区によって時間帯が異なりますが、毎日6時間、4時間に1時間の割合で行われています。我が家のあるF7地区では、AM2〜3、6〜7、10〜11、PM2〜3、5〜6、9〜10です。一番困るのはPM9〜10(旧時間PM8〜9)の停電で、寝るには早いけど電気がないと何にもできないので結局寝るしかないのです。PM2〜3の停電も困ります。暑いのでつけて寝る天井扇風機が止まって寝汗ぐっしょりで目を覚まし、もう一度寝つくのに苦労します。
 職場では、AM9〜10、PM0〜1に停電があります。3つの講義室にはジェネレーターがついていて、停電でも講義が出来ますが、我々のいるオフィスは、停電になると明かりもファンも止まってしまって仕事が出来ません。公務員の勤務時間は、AM8:30〜PM3:00、途中ティータイムが10:30〜11:00、昼休みがPM1:00〜2:00で、実働5時間です。それでも少ないと思うのに、停電があると、朝8時半から仕事を始めて30分すると停電、10:00から30分仕事をしてティータイム、11:00から1時間仕事をして12:00からまた停電、停電が終わると1時間昼休み、昼休みのあとPM2:00から1時間仕事をして1日終了。実働3時間です。これでは納税者から給料泥棒と云われても仕方ないと思うのですが、そんな声はあまり聞こえてきません。
 私の仕事は、週に2コマ(1コマ2時間)物理の講義をすること、および科学ビデオの制作(撮影と編集)ですが、ビデオ制作はパキスタン人との共同作業なので、停電の影響をもろに受けて全く予定通り進みません。日本人の私は計画通り物事を運ぼうとしますが、彼らはすべてインシャラ(神の御心のままに)なのです。また、私はカウンターパートのMs.ショエバにビデオ編集を教えねばならないので、毎日2時間くらい一緒に作業をしたいのですが、彼女はいつも遅れてくるので1時間くらいしか作業が出来ません。この調子だと、帰国までにビデオ50本完成という目標は達成できそうもありません。私は「怒りを爆発させてしまったら全てお終い」と思うので、いつも怒りをぐっとこらえます。だからストレスがたまる一方です。私も「インシャラ」と云えるようになればいいのですが、それが出来ないのは悲しい性です。

◆ Director General(所長)のこと
 7月末日、NISTEのD.G.(所長)が引退しました。彼は元軍人でムシャラフ大統領の側近でした。今回の引退は、2月の選挙でムシャラフの所属政党が惨敗、新政府が軍人は軍以外の要職から引き上げるように勧告したからです。
 彼は熱心なムスリムで、昼食後のプレイタイムには、玄関ロビーに絨毯を敷いて、率先してお祈りをしていました。また、NISTEのD.G.としても仕事熱心だったので、NISTEの幹部職員の信望が篤く、NISTEの中ではちょっとカリスマ的存在でした。顔立ちもとても端正だったので、女性職員の人気抜群でした。私のカウンターパート(女性)など、彼が引退する週は、今週は仕事をする気にならないといって、1日も私のもとに来ませんでした。
 しかし、D.Gは.私の作った実験器具や私の講義を高く評価してくれていて、ドクターを持っていない私のことをいつもDr.イシハラと呼んでいました。私のビデオ制作についても、配属先の責任者のMr.アッバスはD.G.に見せるにはもっと手直しが必要といってなかなか合格点を出してくれませんでしたが、直接彼のところに見せに行くと、彼はとても気に入ってくれました。彼のお墨付きを得て、それ以後やっとビデオ制作が軌道に乗りました。

◆ 職場の同僚を我が家に招く
 昨年末結婚した物理のカウンターパート、Mr.イムランには、「一度奥さんといっしょに我が家に招待する」と約束していましたが、7月末日、それがやっと実現しました。
 招待したのは、彼ら夫婦以外にイムランと同室のMr.ムバシール、私のビデオ制作のカウンターパートのMs.ショエバとその上司のMrs.サバの5人です。ところが、Ms.ショエバはD.G.引退ショックで気分がすぐれないので行けないと電話してきて、結局4人がやってきました。
 招待したのはランチですが、何をご馳走しようかと妻と相談。簡単なのは日本のカレーライスで、パキスタン人もきっと美味しいと言ってくれそうなのですが、問題点があります。カレーライスのルーの中には、モスリムにタブーである豚肉エキスが入っている可能性があるからです。妻と相談の結果、メイン・ディッシュは巻きずしに決定。妻の提案で、巻きずしが食べられない人のためにイカ・エビ入りスパゲッティとフィリピン料理のアドボを妻が作ることになりました。
 約束の時間は午後1時。パキスタン人は時間にルーズだから、きっと30分は遅れてやってくると妻は予想していましたが、1時5分前にMr.ムバシールがやってき、あとの3人も1時きっかりにやってきました。パキスタン人の名誉のために言いますが、彼らは決して時間にルーズではありません。
 メイン・ディッシュの巻きずしは4人ともとても気に入ってくれ,
イカ・エビ入りスパゲッティもアドボもほぼ売り切れました。パキスタンではアルコールは一切ダメなので、場が盛り上がらないのではないかと心配しましたが、紅茶とケーキのあと4人がパキスタンの歌を歌ってくれ、我々はお返しにマジックを披露しました。結構盛り上がって、楽しい一時を過ごせました。
 次回はみんなでイムラン夫妻の新居を訪問することになりました。

雨季のイスラマの空


NISTEの前庭に咲く花


雨に映えるサルスベリの花


イスラマバードに近い避暑地マリーにて


マリー(高度二千b)は浅草の賑わい


研修グループ記念写真(中央がDG)


修了式で講評をするDG


職場の同僚を招いて


イムラン夫妻・私・サバ・ムバシール


マジックを披露する妻