イスラマバードの風 NO.17      2008年6月9日発行

 アッサラーム・アレイコム!石原武司です。
 (あなたの上に平安あれ!)
 忙しかったり、ちょっと体調を崩したりで、2ヶ月ご無沙汰しました。ご無沙汰しているうちに6月、パキスタンで最も暑い季節を迎えました。日中、室温は40度近くまで上がり、夜でも30度を下回ることはありません。その上、今年は停電が頻発、つけて寝た扇風機が夜中に止まり汗ぐっしょり、寝苦しい夜が続いています。でも、アラーは私たちに苦しみだけをお与えになる訳ではありません。酷暑と同時に、大きくて甘いマンゴがマーケットに出回り始めました。まだ、1kg40ルピー(約80円)と高いですが、それでも1個500gくらいの大きなマンゴが40円で食べられるのですから安いものです。仕事から帰って、冷えた大きなマンゴにかぶりつく幸せは、パキスタンでしか味わえない幸せです。

◆ フライデー・マーケット(別名ペシャワール・モール)
 このマーケットは、G9、我が家から5〜6km離れたところにあり、毎週火・金・日の3日開かれます。八百屋、果物屋、布地屋、金物屋、雑貨屋等、同じ種類の店がそれぞれ20〜30並んでいて、品物が豊富で値段が安いのが特徴です。以前は今の場所から少し離れたところにあり、もっと店が混み合っていたのですが、幹線道路が通るので今の場所に引っ越してきました。私は戦後の闇市みたいな以前のマーケットの方が好きですが、近代化された今のマーケットも結構楽しめます。
 先日の金曜日は、妻とSVの I さんと3人でマンゴを買いにこのマーケットに行きました。結局、マンゴだけでなく、スイカ、スモモ、乾燥ナツメ、じゃがいも、人参、ナス、トマト、キュウリなど両手で持てないほど買い込みましたが、それでも300ルピーでお釣りがきました。買い物の途中で絞りたての冷たいマンゴジュースを飲みました。グラス1杯10ルピーでした。美味しかったのですが、氷を使っているのと、バケツの水でグラスを洗っているのを見て、後でパキ腹にならないかと随分心配しましたが、3人とも大丈夫でした。私たちのお腹もすっかりパキスタンに同化したのだと思います。
 「仕事が楽しい」というのはボランティアの特権ですが、ちょっと油断すると、”仕事only”の生活になってしまい、体調を崩したり、精神のバランスを崩したりということになりかねません。仕事だけでなく、生活を楽しむ工夫が必要ですが、娯楽の少ないこの国では、そしてSVの安い生活費では、それがなかなか難しいのです。その点、このマーケットで安い野菜や果物をどっさり買うのは、何か心が豊かになったような気がして、精神衛生上とてもよいことだと思います。

◆ パキスタンのスイカ売り
 スイカはマンゴのひと月前、5月から出回りました。スイカはマーケットでも買えますが、幹線道路の道ばたでも売っています。道ばたで売っているものは店の約半値です。1kg当たり10ルピーですから、日本なら2000円くらいしそうな6kgもののスイカでも60ルピー(約120円)で買えます。
 道ばたのスイカ屋はイスラマバードから100km離れたペシャワールからやってきます。トラックいっぱいのスイカを道ばたに下ろし、その横にテントを張って、スイカが売り切れるまで約1ヶ月そこで寝泊まりします。テントのそばにはスイカの食べかすがいっぱいありますから、スイカ売りも時には外食もするのでしょうが、基本的には売りもののスイカを食べて生きているようです。
 私の通勤経路にもスイカ売りがいて、私は通勤の帰りに、最初、週に2回も買っていましたが、3週目以降は売れ残りを買うのは嫌なので買っていません。
 でも、売り尽くすまで村に帰れないなんて、いかにもパキスタン的で面白い。

◆ Mr.イムラン と Mr.ムバシール
 Mr.イムランは私の物理のカウンターパート、Mr.ムバシールは独身の数学のリサーチ・オフィサー(研究員)で、イムランと同室です。二人はとても仲がよくて、よく男同士で手をつないでいました。この二人は出来てるのでは?と疑っていましたが、昨年暮、イムランが結婚して、やっと二人の潔白が証明されました。
 最近は、ムバシールと私は新婚のイムランを冷やかして、楽しんでいます。イムランは職場のレストランより隣のコムサット大学のレストランが好きだというので、「なぜか」と聞くと、「きれいな女の子がいっぱいいるから」と答えました。「それは問題発言、奥さんに言いつけてやる」と私とムバシールは言うのですが、いっこうにこたえません。
 最近、何かのきっかけで、インドの女性はグラマーだという話が出たとき、「奥さんはplainでいいが、ガールフレンドはグラマーがいい」と彼は言いました。本気なのか冗談なのかわかりませんが、これはもっと問題発言ですね。
 大部分のパキスタン人は金曜の午後、モスクにお祈りに行きます。新婚のイムランに、「奥さんといっしょに行くのか?」と聞くと、「自分だけだ」と答えます。モスクへ行くのは男だけで、女は家でお祈りするのだそうです。学校も男女別学、バスの座席も男女別だし、イスラム世界はまだ「男女7才にして・・・・」がまかり通っているようです。

◆ 3人のタクシー・ドライバー
 私は職場まで毎日タクシーで通っていますが、昨春は60ルピーだった料金が今は80ルピー払っています。ガソリンの値上がりと共に、タクシーの燃料であるCNGも値上がりしたためです。パン、牛乳、卵等の食料品も軒並み2割程度値上がりし、パキスタンでも庶民の暮らしは大変です。
 それはさておき、初代専属タクシー運転手のMr.ラフィークとの契約は今年3月に解除しました。いい運転手だったのですが、クリスチャンの彼は、タクシーの運転手をやめて、キリスト教系の学校の会計係として就職したからです。新しい職場の月給は11,000ルピーと言っていましたから、タクシー運転手の収入はもっと悪かったのでしょう。
 ラフィークとの別れが余りに悲しかったので、もう専属運転手は雇うまいと私は心に決めました。でも、彼が去って1週間もすると、毎朝私の家の前で私を待つタクシーが出来ました。それが、Mr.サディキです。彼は43才のモスリムで、奥さんと小学生の女の子がいます。彼の車は、職場への往路だけ利用するので専属タクシーとはいえませんが・・・。
 職場からの帰りによく利用するタクシーの運転手がMr.シャビールです。彼との出会いは、今年4月頃のことです。当時、私は万歩計をつけて職場に通っていましたが、それがいつの間にか行方不明になりました。多分家のどこかに置き忘れているのだろうと思っていました。ところがある日、私が帰宅すべく、ニステの門を出たとき、ひげ面の男が走ってきて、「これはお前のだろう、自分の車に落ちていた」と言って、私の万歩計を渡してくれました。日本ならまず戻ってこないだろうに、パキスタンで戻ってくるなんて! 私は感動しました。御礼に500ルピー渡そうとしましたが、彼は頑として受け取ろうとしません。
 それ以後、帰りにはなるべく彼の車に乗って、少し多めに料金を払うようにしています。それにしても、パキスタン人のこの正直さはどこからくるのでしょうか?やはりコーランでしょうか?

マンゴの季節始まる


スイカ屋(フライデ^−マーケット)


先の尖ったパキスタンのモモ


マンゴジュース屋さん


道ばたのスイカ売り


朝早く行くとまだ寝てるスイカ売り


Mr.ムバシール(左)とMr.イムラン(中央)


初代専属ドライバーMr.ラフィーク


二代目ドライバーMr.サディキ


Mr.シャビール

パキスタンの建築現場では、鉄パイプの
代りに曲がった木をいっぱい使います。