イスラマバードの風 NO.16      2008年6月3日発行

みなさん、こんにちは。石原郁子です。
 今回も引き続いて私が担当することになりました。石原が少し体調をくずしたためですが、一日も休まず相変わらず荷物(パソコン、書物、お弁当など)を両手にいっぱい持って、ニステに通っています。物理、化学、生物の実験をビデオにしたり、マスタートレーナーの人達に講義したりと、忙しい毎日を送っています。

 ☆二度目のラホール
 約一ヶ月前(4/20)SVの I さんと我々夫婦の3人で、ラホールを訪ねました。ラホールの女子教員大で生物を教えるSVのT女史のお招きです。飛行機ならば40分で着くのですが今回はバスを使いました。一人550ルピ(1100円)です。ラホールまでの幹線道路(韓国の援助により作られた)は片道3車線、よく整備されていて快適です。日曜日の午前8時、車はスイスイと走ります。バス席は男女別で、私は一番前の左窓際です。隣にバスの車掌さん(女性)が座りました。働く女性を見るのは久しぶりです。
 何度もお願いして制服姿の彼女の写真を撮らせてもらいました。まだ19才のかわいい人です。乗ってすぐサンドイッチとお菓子のサービスがありました。水、コーラ、スプライトなどが何度でもお代わりできます。乗客へのサービスが一段落すると彼女アミラ(Aamira)は私に話しかけてきました。2年後に結婚すること、彼は21才で学生(?)だということ、知り合って2年になるけどまだ手をつないだこともないと言っていました。コーランの教えをまもっているのだそうです。彼女の家はラーワルピンディにあって、「是非3人で遊びに来てください」といって、詳しい住所と親の名前も書いて渡してくれました。
 私はとても幸せな気分で1泊旅行のスタートがきれました。朝8時に乗ったバスは12時半にラホールのバスプールに着きました。さすがにラホールは暑く、4月というのにもう35度を越えています。T女史の車でミュージアムへ。カメラも携帯も窓口に預けねばなりません(有料)。その上まだ30分も観ていないのに停電が始まり、館内は真っ暗になりました。仕方なく外に出たのです。次はラホールフォートに向かいました。今修理中です。右に行くとバードシャーヒーモスク(皇帝のモスクの意)です。ここには10万人が礼拝出来る広場があります。何度見ても魅了されてしまいます。美しく巨大です。これを作ったのはムガール帝国最盛期の6代皇帝、アウラングゼーブです。タージ・マハールをつくったその父シャージャハンとの確執を思い出しました。二人の兄と弟を殺し父親を幽閉して皇帝の座に座ったアウラングゼーブは狂信的なモスリムでした。彼は周りの異教徒はもちろんのこと、異宗派のものをすべて遠ざけました。そのため戦争が続きムガール帝国はだんだん衰退していきました。皇位継承権のある皇子には栄光か死があるのみです。長男が次の皇帝になると言う保証はありません。すべてその側近の能力(いち早く敵の情報を集め対応し勝利をおさめる)がモノをいいます。この帝国の最盛期はちょうど徳川時代前期にあたります。
 その夜はフードストリートー(歩行者天国のような所にテーブルを並べ食事を提供する店が延々と並んでいる)で、ラホールのご馳走をいただきました。うすら明かりの中で見る人々はなかなかの美男美女ぞろい・・・。お酒がなくとも解放的な気分になりテンションがあがります。その後スイートラッシーと言われるおいしいヨーグルトと二重になったアイスクリームをたべました。しめて250ルピ(500円)ほどです。イスラマバードに較べて物価が安いのが魅力です。少しパキ腹(下痢)が気になりましたが、お腹の方は私より早く、パキ人化してしまったようです。
 一泊後、T女史の女子大を見学させてもらい、思いがけず歓迎を受け長時間ゆっくりしてしまいました。帰りは電車で帰ろうと(ラホールからラーワルピンディまで)12時半の切符を求めましたが、売り切れ。仕方なく2時半のコンバートメントの予約をしようとしましたが、どうしたことか、3人でどう言っても、駅員が切符を売ってくれません。B番の窓口へ行け D番の窓口へ行け、を繰り返えされ、やっと切符を手にしました。あとで気がついたのですが、もしかしたら6人寝られる寝台車に男二人と女一人が乗るっというのがいけなかったのかも? 未だにさっぱり意味がわかりません。ともあれ長い間待ってやっと電車に乗り込みました。
 30分遅れて発車しました。発射する前から石原は一番上の寝台でぐっすり寝ています。何処でもすぐに寝られるひとです。I氏は出発するとすぐに、中段で眠りました。私は向かい側のイスに座ったまま、ぼぉ〜〜〜と車窓を眺めていました。その時ドンドンとたたく音。「はい」とドァーを開けると車掌さんです。二人を起こして切符を渡すと「何処へ行くんだ?」と不思議な顔。「ラワルピンディです」。「この電車はファイサラバードへ行くんだよ」「ええ?」。ファイサラはラホールの西にあります。私たちは北へ向かわねばなりません。この電車に乗る前に何人の人に確かめたことでしょう!それぞれ違った答えを言うので困っていました。駅には英語の表示はなく、駅員がいません。「次の駅で降りてリキシャ(三輪自動車)でラホールへいけ」と言われ次の名もない駅で、電車から線路に直接降ろされてしまいました。向こう側のプラットホームには鈴なりの人・・・。全員私たちを見ています。たぶん無銭乗車人だと思われているのでしょう!I氏と石原がその人たちに一生懸命聞いて、ラホールへ戻るプラットホームがわかりました。ほどなく来た電車に飛び乗りました。ドアーも窓ガラスもない、汚らしい電車ですが文句は言えません。約15分後たちっぱなしから解放されました。ラホールに着いたのです。あと10分以内にピンディー行きの電車に乗らねばなりません。でないと次は3時間後になります。英語の表示はありません。I氏の機転で電車が分かり、飛び乗ると同時に発車しました。当然のごとく我々の座席はありませんが一応冷房車に入りました。私は空いた座席に座りました。パキ女性の隣です。すぐにその女性の夫が来て「切符を見せて?」!万事休す。これから5時間の立ちん坊はこたえます。エアコン付きの乗車券は380Rs、コンバートメントの乗車券は650ルピ(1300円)です。日本ではたいしたことのない金額ですが、こちらでは小学校の先生の初任給が月2500ルピなのです。
 3人で立っていると私だけが呼ばれました。さっきの婦人の夫です。「ここに座りなさい。私はいいから」といいます。見ると彼は、子どもの座席の手すりにちょっと腰掛けています。申し訳ないので立とうとしましたが、その人の妻が「いいのよ」と言ってくれました。その後しばらくして車掌が来て、なんとか3人とも座ることが出来ました。親切な男性は大家族で旅行をしているようです。思いがけず、地獄で仏ではなくアラーの神。こうして3人はなんとか無事に、家にたどりつくことができました。

 ☆CHIKANの話
 石原と次男が、スカイプで話をしています。4時間の時差を考えてパキスタンからは午後6時に、日本からは午後10時にかけるようにしています。仕事の話やらお互いの健康について大きな声で話し合っています。でも今はなにやら声をひそめています。次男が「パキスタンには痴漢がいないのか?」と聞いているようです。日本では著名な大学教授や、近頃ではストーカーもどきの電話攻勢をして、なに食わぬ顔で被害者の女性の相談に乗ろうとしていた現職の裁判官が捕まったようです。手の込んだことをする悪玉ですね。パキスタンでは痴漢行為とかのわいせつ罪は、がんじがらめのコーランの影響であまり聞きません。父親が息子に言っています。「若いJOCVの子はバスの中でよく痴漢にあうそうや。外国人の女性は、好き者(?)というふうに間違って伝えられてるようや。日頃のうっぷんが外国人女性に向かうようやな。そやけどお母さんは一度も痴漢に遭ってないと言ってた。若い頃から一度も。」息子が言っています。「もう無理やろ。痴漢にも選ぶ権利があるからな」。 父親「それはそーや。かわいそ〜に」??
                 何でやねん!

 ☆イスラマバードの近況
 長引く停電で、ジェネレーターやUPS(電気をためて停電時に点灯)をつける人が増えてきました。ウチの地域はだいたい朝6〜7時、10時〜11時、2時〜3時、7時〜8時、9時半〜10時、夜中2時〜3時に停電します。ただ今室温35度、湿度20%(午後2時)です。暑いですがまだカラッとしています。暑さ本番はやっぱり6月、7月の降雨期です。夕方や夜中に雷雨や強風がおこり、湿度が60%ぐらいになります。
 最近は、夕方の停電時(7時〜8時)に、近くのジンナーマーケットに散歩を兼ねて毎日出かけています。家にいても真っ暗で暑く何もできないからです。同じような考えの人が多いのか、マーケットは着飾った人でいっぱいです。私はきらびやかな宝石店街に石原を誘おうとしますが、彼は夜店のような所に私を連れて行きたがります。そこで食べたアイスクリームやカプチーノは思ったよりおいしくすっかりだまされてしまい、その後は、古本屋をのぞきながらトボトボと帰ってきます。これでだいたい一時間です。
 昨年のようなテロもなくなり、イスラマバードは深い緑の中に鮮やかな南国の花を咲かせています。一見平和そのものです。でも物価はじわじわと上がっています。卵もパンもガソリンも値上がりしています。
 今日(6/1)からサマータイムが始まりました。日本とパキスタンとの時差が3時間になり、少し近く(?)なりました。
                      それではまた。

ラホール行きダエウバス


I氏と石原(右側の席)


車掌服のアミラ


修理中のラホールフォート


バードシャーヒーモスク


モスク入口天井のアラベスク模様


10万人が一度に礼拝できる広場


フードストリートにて


SVのTさん(左端)の女子大にて


ラホール駅


寝台車で眠る石原


夜のジンナーマーケット


ジナーマーケットの古本屋