8/31/1999
アメリカ研究夏季セミナー1999(イリノイ大学シカゴ校)参加報告
冨 田 隆 文
此の度私はフルブライト奨学生として、1999年6月19日より同年7月30日までアメリカはシカゴを主会場として行われたAmerican Studies Summer Institute(アメリカ研究夏季セミナー)に参加する機会を得ました。それについて以下簡単に報告します。
1)今回UIC (University of Illinois at Chicago)で行われた ASSI(American Studies Summer Institute) はUSIA(United States Information Agency)というアメリカの政府機関が主催しているもので、26カ国から総勢30名が参加しました。日本(2名)とドイツ(3名)からの参加者計5名が私のようにフルブライトから派遣され、それ以外の国の参加者はすべて各国のアメリカ大使館の要請を受け各国の文部省や教育委員会から派遣された人達で、私のようなclassroom teacherは少なく、教科書執筆者、指導主事、カリキュラム作成者、大学講師など要職にある人達が多く、いずれの方々も教科の専門性だけでなく、英語の水準も非常に高い人々ばかりですごく良い刺激を受ける事ができました。日本の文部省からも教科書調査官が1名派遣されており、いろいろとお互いに情報交換する事が出来てこの面でも有意義な機会となりました。ちなみに参加者の国は下記のとおりです。オーストラリア、ブラジル、メキシコ、カナダ、チュニジア、セネガル、トーゴ、コートジボワール、マダガスカル、ドイツ、イタリア、ラトビア、ブルガリア、ルーマニア、ポーランド、チェコ、パレスタイン、パキスタン、中国、モンゴル、香港、インドネシア、ラオス、カンボジア、そして日本。教授陣がアメリカ人、事務局にはハンガリーの人もいました。一度にこれだけのいろいろな国の人たちと知り合い、しかも6週間生活を共にしてお互いに本当に親しくなれた事は、講座本来の目的に勝るとも劣らない大きな財産を得た思いです。今後このnetworkを大いに生かしたいものと思っています。
2)Instituteは4週間のlecture sessionと 2週間のstudy tourから構成され、最後に授与されたcertificateによれば、教室でのlecture(主としてシカゴのUIC構内で行われた)はgraduate-levelで80時間、それに関わるon-site field tripが44時間、study tour部分でlecture10時間、on-site instruction90時間、合計224時間の大学院レベルの講義内容を修了した事になっています。4名の専任教授と3名の事務局スタッフでInstitute全体が運営され、講義の分野によっては専門のguest lecturerが招かれ内容の充実が計られていました。
3)lecture sessionでは毎日午前、午後3時間ずつ、かなり密度の濃いレクチャーが続けられ、その分野は文学、芸術、法学、教育、音楽、文化、社会等多岐にわたるものでした。以下にその一部をを列挙しておきます。Whitman, Horatio, Mrs. Stowe, Emily Dickinsonなど近代から、Hemmingway, Dreiser, Toni Morisonにいたるアメリカ文学の研究。政治哲学、法学の分野ではアメリカの価値観(所謂private propertyの保護)の根底にあるジョンロックの政治哲学という理論的な講義から、憲法の修正条項に係わる係争事件ついての最高裁の判例研究。あるいは、シカゴに見られるアメリカの都市の発展とracismの関係について。独立革命以後のアメリカ近代史やアメリカ地理。教育および教育制度(特にcommunityの概念を中心とする中等教育制度に関しての非常にすっきりと整理されたinformationを得られた)。さらに、Native Americansの歴史や文化。Deep Bluesについての講義(夜に行われたBlues Houseへのon-site tripは圧巻だった)など。
講義はintensiveで課題図書が多く英語のスピードも極めて速いので大変でしたが、きわめて多彩で良く練り上げられたプログラムに感心しつつ久しぶりに学生に戻った気分に浸る事が出来ました。また、その内容も方法もアメリカの政治臭の強い宣伝とは全く無縁で、極めて批判的にアメリカ文化を研究するという研究態度で一貫し、Institute内における発言はどのようなものであれ全て保障され守られるという雰囲気に「学問の自由」を感じた事でした。
4)on-site tripとして、シカゴ市内downtown のwalking tourやシカゴ郊外のRiverside やEvanstonなどの高級住宅街の見学。Ethnic town tour(シカゴには数多くのethnic townがある)。7月4日の独立記念日のparadeやhome party等に招待され、communityを実感。Edge Cityと言われる巨大shopping mall tourも有りアメリカの大量消費文化の隆盛振りを見る機会や、比較的裕福な地域と黒人居住地域の二つの高校を見学し、そこの教員や生徒と質疑応答の機会もあり有意義でした。これらのon-site tripは全て教授のguideまたはlecture付きという事で、我々参加者が理解を深める上で誠に申し分の無い配慮がされていました。
5)2週間のstudy tourでは、飛行機の中継地も含めるとNew Mexico, Colorado, Utah, Arizona, California, Washington D.C., Virginia, Maryland、Missouri, Kansasの各州を回りました。訪れた主な都市や町は、Albuquerque, Santa Fe, Dulce, Taos, Cortez, Durango, Silverton, San Francisco, Santa Cruz, Washington D.C. Charlottesville, などであり、訪れた場所や公園は、Pueblo Cultural Center, Pueblo de Taos, Jicarilla Apache Reservation, Mesa Verde National Park, the Rocky Mountains in Colorado, Four Corners, Silicon Valley, Monticello, University of Virginiaなどが主なところです。
6)Study tourでは各地のホテルに滞在した訳ですが、シカゴでの4週間は大学構内のResidence hallに滞在しました。一つのcluster に4〜5のsingle roomがあり、机、ベッド、洋服タンス、簡単な本棚が備え付けられ、バス、トイレが共用になっています。他に参加者専用のラウンジ、キッチン、ランドリーがあり快適な生活が送れるように配慮されています。
7)今回の費用は、航空運賃、滞在費、書籍代、study tourの旅行費用等、全て日米両政府によって賄われている事は承知していましたが、現地で生活費まで支給された事については驚き、また有難い事でした。(条約によって免税適用)
以上今回私が経験し学んだ事の一端を紹介しました。今回の成果をまとめると、
1)アメリカについての膨大なauthentic informationを得た事(提供された多数の書籍を含めて)。
2)世界27ヶ国の人々と出会い共同生活を通じて親しくなり、networkを構成できた事。
3)講義を通じてアメリカという国の裏側、したたかさ、dynamism等あらためて強く感じた事。
4)今回アメリカ16州を見ることが出来て広大なlandscapeに感動した事。
5)自分が撮影したものを含め、教材として活用しうる多くのビデオや書籍を入手できた事。
6)2ヶ月間ではあるが、英語世界に生活し日本人中心の自分の視野が多少とも広がり、日本の事を異なる視点から考える機会を得た事。また、多少とも自分の英語力にもプラスになったと思える事。
以上が主なものです。今後さらに整理し今回の研修の成果を学校に少しでも還元できるように努力したいと考えています。
(以上は私の勤務校へ報告したものです。写真は英語版でご覧下さい。)