T あなたはやり直すことができる(手束正昭著「ヨシュア記連続説教集B」より)

             あなたはやり直すことができる
               ―ヨシュア記20章1〜9節―     (2/5頁)

        デール・カーネギーはその名著『人を動かす』の中で、

       どのようにして人を動かすのかについて、三つの重要な

       ポイントをあげている。その第一は「盗人にも五分の理を

       認める」とし(ちなみに第二は「重要感をもたせる」、第三に

       「人の立場に身を置く」である)、アメリカの16代大統領

       アブラハム・リンカーンについて言及している。
 

        南北戦争の最中、リンカーンは自分の家族や側近者たち

       がこぞって南部の人たちを非難し、悪しざまに言うのを聞い

       て、次のように語ったという。「あまり悪く言うのはやめなさい。

       われわれだって立場をかえれば、きっと南部の人たちのよう

       になるのだから」と。広大な綿花畑を有する南部は、奴隷制度

       を主張して譲らなかった。そこで奴隷制度を止めさせようとする

       リンカーンと対立した。北部の人たちはリンカーンを支持し、

       遂に南北戦争に至った。しかしリンカーンは南部の人々の

       立場を理解し、それをあたかも犯罪者の如く裁く北部の人々

       に向かって、「そう裁くことはできない。もし私たちも南部に

       住んでいたならば、同じように主張するかもしれないのだか

       ら」と答えたという。


        リンカーンの死に際して、陸軍長官スタントンは「彼ほど
      
       完全に、人間の心を支配できた者はこの世に二人とは

       いなかった」と追悼した。このようにリンカーンは、常に、

       盗人にも五分の理を認め断罪しない人間であった。その人

       には、その人なりの理由があるということを常に理解しよう
   
       と努めたのである。彼の深い人間理解の故に、リンカーンは

       多くの人々に慕われ、今もなお尊敬され続けている。

                        

        ヘブル人への手紙4章15、16節に、次のような御言葉が

       ある。「この大祭司は、私たちの弱さを思いやることができな

       いような方ではない。罪は犯されなかったが、すべてのことに

       ついて、わたしたちと同じように試練に遭(あ)われたのである。

       だからわたしたちは、憐れみを受け、また恵みにあずかって、

       時機を得た助けをうけるために、はばかることなく、恵みの御座

       に近づこうではないか」。

   

        キリストは私たち人間の弱さをすべて思いやることがおできに

       なる。なぜなら、ご自身があらゆる試練に直面され、そこを通られ

       たからである。キリストは私たちの弱さ、罪、醜さ、愚かさの全て

       を知られ、理解しておられる。だから安心して、喜んで御座に近づ

       こうではないかとヘブル書の記者はすすめている。然り、

       その通り。

       キリストは私たちの全てをつぶさにご存知の上で、愛し、赦し、

       招いて下さるのである。


        「のがれの町」が造られた第二の理由は、神は結果ではなく、

       動機を重んじられるということである。人を殺してしまったという

       結果以上に、なぜそうなったのか、その動機を大切にされるのが

       神のご性質である。



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