131.典型元素と遷移元素 main group element and transition element

 元素には典型元素main group elementと、遷移元素transition elementがあります。日本語から考えると「典型」なのでtypical(typeの形容詞)かと思いますが、よく考えると元素はそれぞれに異なる性格を持っているので、典型的な元素というものはないわけです。chiefが人に関して「第一」の優位を占めているの意味をもつのに対して、mainというのは古期英語の「力」からきたもので、main streetのように必ずしも「第一」でなくても物事の大きさや重要さが他よりまさっていることから「主要な」という意味になります。transitionはラテン語の「移行」からきた言葉で2族から13族の間をつなぐ元素ということになります。類語のtransitはラテン語の「通過」から(空港などでの)乗り継ぎのこともトランシットといいます。

132.軟らかい soft

 softにはa soft ice creamのようにhardの反対語としての意味の他に、soft as velvetのように滑らかという意味や、a soft manのようにweakという意味もあります。化学でThe alkali metals are so soft that they can be easily cut with a knife.というときは力を加えることで容易に形が変わるという意味でsoftを使っています。軟らかいという言葉にはtenderもあり、牛や豚の肉の一番柔らかい所は腰肉の下部でここはtenderloin(loinは腰肉、腰肉の上部はsirloin)といいます。しかし、tender は、tender skin(敏感な肌)、Love me tender.(やさしく愛して)のようにsoftとは少し感じの異なる言葉です。

133.光沢 luster

 光沢lusterは、ラテン語の「光り輝く」からきた言葉で光沢の意味の他に名声や、(陶磁器の)うわ薬の意味があります。また、古期北欧語の「輝き」に由来するglossにも光沢の意味があり、the gloss of silk 絹の光沢、a lovely gloss on her hair 彼女の髪の美しいつやのように使いますが、化学ではThe surface of silver has a luster.のようにlusterの方をよく使います。似た言葉のbrightは星のように自ら光を出して光り輝くのに対して、lusterは光を当てると反射して輝くところが違います。「光沢がない(つや消し)」という意味でよく使われるmatやfrosttedは表面に細かい傷をつけてつや(光沢)をなくしたもので、例えば磨りガラスはfrostted glassといいますが、frostは「霜」なので霜がついたようなガラスという意味です。表面が滑らかなのに光沢がないことは、The surface of wax is dull.のようにdullを使います。表面(surface)の様子を表す言葉としては、ほかにざらざらした状態を表すglanularがあります。glanularはgranule(小粒)の形容詞で、「つぶつぶ」から「ざらざら」という意味になったのでしょう。granulated sugar(グラニュー糖)は粒状の砂糖ということです。一般的に、手触り(texture)というときにはroughやsmoothで表現しますが、このtextureは「織り物」からきた言葉で生地の手触りというのがもとの意味で、textileで「織物の」になります。

134.保存する preserve

 preserveには「「前(pre-)もって保つ」から「長持ちさせる」ということに意味があり、Smoking [Salting] preserves food from decay.(燻製[塩づけ]は食物を腐らせずに長持ちさせる)やSodium is preserved in kerosene.(ナトリウムは灯油中に保存する)のように使います。類語のconserveは「共に保つ」から浪費しないという意味あいで、conserve one's strength(体力を維持する)やconservation of energy(エネルギー保存)のようになります。よく似た使い方をする言葉にkeepがありますが、keepは古期英語の「見守る」からきているので、「取っておく」ことに意味があり、She has kept all the letters from him.(彼女は彼から来た手紙はすべてとってある)やKeep the film in a dark and cool place.(フィルムは冷暗所にしまっておきなさい)となります。より積極的に「将来の使用またはある目的のために…を取っておく」というのがreserveで You had better reserve your energies for the new task.(新しい仕事のために精力をたくわえておくほうがよい)のように使い、reservationで予約[席]となります。少し意味が違いますが、store the mind with knowledge(頭に知識をたくわえる)のように動詞としてのstoreには、「たくわえる」の意味があり、computerでは記憶装置のことをstorage deviceといいます。

135.潮解と風解 deliquesce and effloresce

 To absorb water from the air by crystals so that the crystals dissolveが潮解deliquesceで、反対のTo lose water of crystallization from crystal to the air so that the crystals form a powderが風解efflorescenceです。deliquesceのliquesceはラテン語のliquescere(溶ける)に由来する言葉で、liquidやliquorと同じ語源でであり、ドイツ語でもZerfliesung(潮解)の語幹のfliesenは溶けるという意味です。もう一方の、effloresceは「咲き始める」の意味から「花が咲く」という意味だけでなく「(文明などが)花と咲く、栄える」などの意味もあり、結晶が空気中で水分を失って白く塩分が吹き出ることを花が咲くことに喩えたのでしょう。どちらの言葉の語尾も-esceですが、これは「…化する」という動詞語尾です。この系統の言葉の名詞は-escence で「…する作用」となり、形容詞は-escentで「…性の」となります。

136.苛性ソーダ caustic soda

 causticには、a caustic tongue(毒舌)のように「痛烈な」という意味がありますが、ギリシャ語のkaustikosが「焼成」なので、「焼け付くような」というのがもとの意味ではないでしょうか。化学では、主に強アルカリ性の物質に使い、濃硫酸などの強酸性の物質にはcorrosiveを使います。反対の言葉はblandでOlive oil is bland.のように食品や化粧品の表現によく使われます。mildはa mild person(温厚な人)のように人格や気候、そしてa mild cigarette(軽いたばこ)のようにたばこや飲み物などに使われます。しかし、化学ではa mild alkali which is not caustic, but is stronger than a weak alkali.のようにcaustic(strong)とweakの間を示す言葉です。

137.焼く(焙焼) roasting

 化学では、to heat materials in air at the temperature too low to fusionをして、酸素と反応させたり分解させてCO2のような小さな分子を取り除いたりすることをroastingといいます。料理の世界では、熱を用いて料理することがcookで、その中には、オーブンなど直火(じかび)でなく輻(ふく)射熱によって肉を焼くroastをはじめ、同じくオーブンなどでパンや菓子などを焼くのがbake、肉などを直火で焼くのがgrillやbroilで、grillはフランス語の鉄格子からきていて焼き網のこともgrillといい、broilは中期フランス語の「焼く」からきているので焼き肉用の器具だけでなく、焼き肉用の若鶏もbroilerとなります。その他には、fryが油で揚げたりいためたりすることで、deep fryというとたっぷりした油の中で揚げること、panfryやsaute(ソテー)はフライパンなどで少量の油でいためることとなり、boil は熱湯で煮る、stew はとろ火でゆっくり煮る、steam は蒸気で蒸すことです。また、料理のうちでも下ごしらえのように熱を使わないのはdressといい、dress a saladで「サラダを仕上げる」という意味になり、だからdressingなのです。

138.合金 alloy

 いくつかの金属を混ぜて溶かしたものが合金alloyです。身近なものをいくつか挙げてみましょう。brassはBrass is an alloy of copper and zinc(亜鉛).で黄銅や真鍮とも呼ばれ軟らかく加工しやすいので金管楽器brass instrumentに使われます。そのため、吹奏楽団のことはbrass bandともいいます。また、純粋な銅は軟らかいので、錫tinを混ぜて硬くしbronze(青銅)として使います。オリンピックの銅メダルはbronze medalといいます。そのほか電熱線は鉄にニッケルnickelとクロムchromiumを混ぜたものでnichrome、はんだは錫と鉛leadの合金でsolder、ステンレスはstain(汚れ、錆)がless(ない)でstainless steel、飛行機の機体に使うジュラルミンは、硬いというdurusとaluminiumからduraluminとなります。

139.石灰 lime

 Chaplin (Sir Charles Spencer、チャップリン)の作品にあるLime lightは、昔の舞台照明で石灰(lime)製の棒または球を酸水素炎に当てた時生じる強烈な白光を利用したもので、「注目の的」というような意味があります。石灰岩lime stoneはCaCO3でてきていて、地下の熱変成で大きな結晶になったものが大理石marble、さらに大きくて透明な結晶になったものは方解石calciteとなります。生石灰quicklime、CaOは石灰岩をlime kiln(石灰炉)で焼いたものでburnt lime、また強アルカリなのでcaustic limeともいいます。生石灰に水を加えると反応して発熱し消石灰Ca(OH)2になるので、消石灰のことはslaked lime(slake消す)、dead lime、hydrated limeなどといいます。消石灰を水に溶かしたものが石灰水lime waterで、水で溶いてドロドロにしたものは空気中のCO2と反応して水に溶けないCaCO3、calcium carbonateになるので、「しっくい(漆喰)、mortar(モルタル)」として建築材料に使います。

140.沈殿 precipitate

 precipitateはもとの「まっさかさまに投げる」から、「突き落とす」という意味もあり、precipitateは動詞で「沈殿する/させる」の他に名詞で「沈殿物」となります。化学ではまだ浮いていて底にたまっていなくても沈殿と言うので、モロモロしたのが浮いているのをflocculent precipitate(flockが毛くず、綿くず)、白くにごったのをmilky precipitate、白くにごっていてトロトロしたのをcreamy precipitate、そして底に沈んでいるのをheavy precipitateとなります。沈殿が生成して不透明なことをopaque(ラテン語で「陰になった」という意味)といい、opal(オパール、蛋白石)はここからきています。また、光は通るが反対側のものが見えるほど透明ではないことをtranslucent、反対側のものがはっきり見えるほど透き通っていることをtransparent あるいは単にclearといいます。最後にTea is a clear, brown liquid.のように透明であることとcolourlessは同じではありません。

141.石膏 plaster

 石膏CaSO4・2H2Oは壁土などに使われ、英語ではplaster(ラテン語の「塗りつける」から)ですが、鉱物としてはgypsumでドイツ語でもGipsといい「ギブス」として日本語に入っています。石膏は200℃くらいに加熱すると結晶がくずれて粉末になりこれを焼き石膏plaster of Parisといいます。焼き石膏を水で溶くと結晶が再生して固まり、再びもとの石膏になります。このことを利用して石膏像a plaster figureなどを作ります。水で溶いたセメントcementが固まるのも同じ原理で、セメントを砂利や砂に混ぜて水を加えて固めたものが「一緒に育つ」という意味のconcrete(コンクリート)で、concreteには「具体的な」という意味の他に「凝結した」という意味もあります。化学ではcementは無機質の接着剤のことで、concreteの中でcementは砂利と砂の接着剤の働きをしています。cemedineはcementから名付けられた接着剤です。

142.無水と脱水 anhydrous(anhydride) and dehydrate

 日本語の「無水」という形容詞には3つの意味があって、1番目は無水アルコールanhydrous alcoholのように水が混ざっていないこと、2番目は結晶の硫酸銅CuSO4・5H2O、copper sulfate pentahydrateから結晶水water of crystallizationをとった無水硫酸銅CuSO4、anhydrous copper sulfateや塩化ナトリウムNaClのように結晶水を持たないこと、3番目は無水マレイン酸maleic anhydride、C4H2O3(マレイン酸maleic acid、C4H4O4)のようにformed by removing the elements of water(水の元素を取り除くことによって作られる)ものがあります。「無水」にするという意味の「脱水」にも2つの意味があり、混ざっている水や結晶水を取るような乾燥させるという意味ではdesiccateで、実験室で使う乾燥用のガラス容器はdesiccaterといいます。もう一つは、分子から水素と酸素の原子を水の形で取るという意味のdehydrate(名詞はdehydration)で、baking powderが分解して炭酸ガスが発生することは、脱炭酸decarboxylationというようにde-で分離・除去を表しています。

143.両性元素 amphoteric element

 amphotericという見慣れない言葉はギリシャ語のamphi-「両側に」の比較級のamphoterosからきた言葉で、両生類はAmphibia、水陸両用の戦車はan amphibian tank、そして(古代ギリシャ・ローマの)両取っ手付きのつぼのアンフォーラamphoraも同じ語源からきたものです。両性元素というのは金属性metallicと非金属性nonmetallicの両方をもった元素という意味で、両性(双性)イオンamphoteric ionというと、+の電荷と−の電荷の両方を持ったイオンということになります。

144.毒性 poisonous

 ものの本によると砒素(arsenic、As)のような無機物の毒はpoisonで、古期フランス語「飲むもの」の意味からきていて、中毒はpoisoningといいます。それに対して、有機物の毒はtoxinで、ギリシャ語のtoxon(矢)からtoxikon(矢の毒)を経てできた言葉です。例えばフグ(河豚、海豚は?)の毒はtetrodotoxin(テトロドトキシン)といいますが、tetrodoの部分はフグの学名tetraodontiformesと毒toxinに由来するものです。toxinからは、毒性toxicity、毒性のあるtoxic、毒性のないnontoxicの他にも毒物学toxicology、毒物学者toxicologistなど多くの派生語があります。その他にも毒性という意味ではvirulenceがあります。この言葉はラテン語の毒(virus)からきた言葉ですが現在ではvirusはウィルスとして別の意味で用いられています。

145.重いと軽い heavy and light

 heavyやlightのように生活に密着した言葉は言語によってその意味が微妙に異なるものです。例えば、heavy rain 大雨、heavy fighting 激しい戦闘、heavy smoker(drinker)ヘビースモーカー(大酒飲み)などのheavyや、The traffic is light today.(今日は交通量が少ない)、light wind そよ風、light beer 弱いビールなどのlightは、heavy=「重い」やlight=「軽い」ではありません。化学では、「重金属heavy metalと軽金属light metal」のように使いますが、これらは「重工業heavy industryと軽工業light industry」などと同様に英語を日本語に訳したものでしょう。しかし、「ライトビール」のような言葉を使うことによって語感が変わり、「弱いビール」とは言わずに「軽いビール」というようになるのでしょうか。では、rock'n' rollのheavy metalはどうheavyで、どうmetalなのでしょう。

146.遊離 isolation

 separate(分離、「分けて準備する」の意)やextract(抽出、「外へ引き出す」の意)が分けることや取り出すことに重点が置かれているのに対して、isolationの動詞isolate は「島(island)のように孤立した」からきた言葉で、to obtain a pure substance from a mixture of substanceのように一つの純物質が他のものから分かれて得られることで、「単離」とも言います。isorated system(孤立系)とは、外界と物質もエネルギーもやりとりしないような系のことです。

147.不規則 disorder

 「不規則」と辞書で引くとirregularityが最初にでてきます。これはirregular(不規則な)の名詞で、「定規の」の意味からきたregularにnotの意味のir-がついた言葉です。regularは、a regular life規則正しい生活、regular features 整った顔だち、a regular concert 定期演奏会のようにルールとしての規則正しさを表しますので、原子などの配列が不規則なことをいうときには、irregularではなくdisorderを使います。orderは「列、配列」からきた言葉でin alphabetical [chronological] order(ABC[年代]順に)やkeep things in order(物を整理しておく)のようにあるべきところにきちんと並んでいることを表します。そして、disorderは逆にものの順序や配列が乱れていることを表し、be in disorder(混乱している)のように使います。類語のconfusion はものが無差別にまざっているために個々の区別がつかない混乱状態をあらわします。例えば、話がややこしくてわからないときには、I'm confused.ということになります。さらに、手のつけられぬほどの極度の混乱状態になるとchaosといいます。では、out of orderはどういう意味でしょう。

148.固いと脆い hard and brittle

 漢字では「かたい」という意味の字はいろいろあり、剛は鍛えられた刀のように金属が剛いことを、堅は土が堅いことを、硬は石が硬いことを表しますが、基本の字は「固」で、物質が固いことから意志が固いことまで広い意味を持っています。英語でも、質が堅いのはfirm、結び目が固い(きつい)のはtight、約束が固い(信頼できる)のはreliableなどがありますが、一般的にはhardということになるのでしょう。ただ、同じように材質が堅いことでもstiffは堅くて曲がったり伸びたりしないことを、rigidは堅くてむりをして曲げると折れるというような細かい使い方もあります。一方、「脆い」というのは、substance which breaks into small pieces under a forceのことで、「割る」からきたfragileは、Crystal is fragile.(水晶はこわれやすい)のように使います。また、ダイヤモンドを金槌で叩けば砕けるのは金槌ではなくダイヤモンドであることのように堅いが弾力性がないために砕けやすいことをあらわす言葉はbrittleです。少し意味は変わりますが、「(感覚にとって)心地よい」という意味のdelicateは繊細で微妙なの意味でもろさを伴う美しさを示します。さて、固い結び目のことをa tight knotといいますが、ゆるい結び目は何と言うでしょう。

149.弾性と塑性 elastic and plastic

 物質に力を加えたときに砕けてしまうのが「脆性brittleness」ですが、形が変わるのが「柔軟性flexibility」といい、形容詞はflexibleです。これらは動詞flex(関節を曲げる)からきています。そして、力を加えて変形させた後、力を取り去るともとのゴムのようにもとの形に戻る性質を弾性elasticといい、粘土のようにもとに戻らない性質を塑性plasticといいます。例えば、勤務時間がいろいろ変えられるのはflextime、輪ゴムはelastic band、塑像はa plastic imageのようになります。

150.原料 raw materials

 raw fishのことを生魚というように、原料のままで料理していないことをraw(lawは法律)といい、raw silk 生糸、raw film 生フィルムのように使います。ここではraw materialsで原料となります。原料に関わる言葉を調べると、鉄鉱石iron oreのore(鉱石)は古期英語の「真鍮」からきた言葉であり、炭鉱coal mine、金鉱gold mineのmineは鉱山という意味で、mineralは形容詞としてmineral waterのように使われますが、animal(動物)やplant(植物)と比較する場合には名詞として「鉱物」の意味になります。鉱床はuranium deposits(ウラニウム鉱床)のように「下に置く」から貯めるという意味のdepositが、seamはa coal seam 石炭層のように地層の間の薄い層を示します(パンストpantyhoseのシームレスseamlessはここからきています)。さて、swim in the rawとはどんな意味でしょう。

151.点火 ignition

 動詞はignite(点火する)で、この言葉はラテン語のignis(火)からきたものです。派生語としては火成岩igneous rocksのigneous(火の)などがあります。その他にも一般的に「火をつける」というfire、「火をともす」という感じのlight、その他にkindleという言葉もありますがこれはcandle(もとは輝くという意味)に関係しているのでしょうか。反対に「消す」というのはquenchで、 quench fire with water(水で火を消す)、quench one's thirst with beer(ビールで渇をいやす)をはじめ比喩的に愛の炎が消えるときにも使います。そして、化学では消火だけでなく発光を消光させることもquenchといいます。

152.臨界 critical

 criticalはcriticism の形容詞形として、a critical essay 評論、a critical writer 評論家ようにも使いますが、化学ではギリシャ語の「決定する」からきた危機・重大局面といった意味のcrisisの形容詞として使います。例えば、a particular temperature for each gas, above which the gas cannot be liquefied by pressure alone.をcritical temperatureといい、その他にもthe critical angle臨界角、the critical state臨界状態、a crucial moment決定的瞬間などがあります。

153.シリカ silica

 ケイ素siliconの酸化物であるSiO2のことをsilicaといいますが、語尾が-aで終わる酸化物はたくさんあり、例えば、lithiumの酸化物がlithia、aluminunの酸化物がalmina、magnesiumの酸化物がmagnesiaなどがあります。元素の名前を見ると気づくことですが、-umで終わっているものがたくさんあります。この語形はラテン語の中性名詞の主格の単数形で、この形の言葉の主格の複数形は-aとなりその変化に従って酸化物の命名をしています。男性名詞の場合は単数形が-us、複数形が-iなので、fungus(きのこ)の場合はfungi of Japan(日本のきのこ)のようにfungiとなります。

154.吸着 adsorption

 動詞のadsorb(吸着する)は、「固着」「付加」という意味のad-と「吸い込む」という意味のsorbからできた言葉で、When it is heated, the adsorbed gas is released.(加熱されると、吸着されていた気体が放出される。)のように使い、吸着はadsorption、吸着剤はan adsorbentとなります。ところが、化学でよく使う「吸収する」という意味の言葉がabsorbで間違えそうになります。この言葉は「分離」のab-と「吸い込む」のsorbからできていて、吸収はabsorption、吸収剤はabsorbentと語形変化も似ています。adsorbの反対語は「敷居から追い出す」という意味のeliminate(脱離する)で、absorbの反対語は「送り出す」という意味のemit(放出する)で、LEDはlight emmition diode(発光ダイオード)の略です。

155.ガラス glass

 古期英語の「輝く」からきたglassはamorphous solids composed of silicon dioxideのことで、glasses眼鏡、hardened glass強化ガラス、three panes of glass窓ガラス3枚(pane布きれ)のように使いますが、さらにlooking glass姿見、sandglass砂時計やガラス状のものという意味でwater glass水ガラスというような使い方もあります。amorphous solidのamorphousはmorph(形、morphologyで形態学)と否定のa-からできた「決まった形がない」という意味でcrystalに対立する語としてとして使われます。化学ではsilicon dioxideに限らずamorphousな物質をglassyと形容することがあり、液体を急冷してとりあえず固まったものの結晶にはなってないことをglassy state(ガラス状態)といいます。ガラスや金属など硬いものが溶けたときにはmeltの古い形の過去分詞moltenを使い、チーズのように軟らかいものが熱で溶けたときのmeltedとは区別をします。

156.無臭 odourless

 「におい」を表わす最も一般的な語はsmellで、odorは不快なにおいについて使うことが多く、fragrance は花や香水などの快いにおいをあらわす言葉として使われますが、これは「臭い」と「匂い」の漢字の使い分けにあたります。odorからはodourless(無臭)の他に動詞のdeodorize(…の臭気を除く)やその形容詞deodorant(防臭効果のある、防臭剤)、「においを含む(ferous)」という意味のodoriferousは「香気を放つ」などが派生しています。「香気・芳香」という意味のaromaはギリシャ語の「甘い薬草」からきていて、the aroma of fine coffee(上等なコーヒーのかおり)のように使います。化学では、the eyes become painful, and the nose has an unpleasent feeling.となるような臭いはirritating odor(刺激臭)、酢(vinegar)のようにan odor which has a strong effect on the nose and the tongueはpungent odorやacrid odor(刺すような臭い)、塩酸のようにan odor which is felt at the back of throat and is very unpleasent.はchoking(息がつまる)、そして食べ物が腐ったときの臭いはmalodorous odor(腐敗臭)と表現します。

157.無色 colorless

 colorは色を表わす最も一般的な語で、primary color原色、complementary color 補色、transparent and colorless無色透明、colored有色など色そのものだけでなく、oil color油絵、watercolor水彩画のように絵の具、集合的に用いて「有色人種」、His writing shows considerable color.(彼の作品にはかなり個性が出ている)、the rich color of a Stradivarius(ストラディヴァリウスの豊かな音色)のように持ち味としての特色や音色もcolorで表現されます。色の濃淡や明暗の度合について用いるshadeは、a lighter shade of green(より薄い色合いの緑)やThe tree gives a pleasant shade.(その木は気持ちのよい日陰を作る)のようにつかわれ、光がさえぎられてできる輪郭のはっきりした影のshadowとは区別されます。また、ほのかな明るい色合いを表わすtint はautumnal tints 秋色、in all tints of red (濃淡さまざまな赤色で)のように使い、古期英語の「様相」からきたhueは、a change in hue(色調の変化)、a cold hue寒色、the hues of the rainbow (にじの七色)のように色合いや色調という意味で使われます。では、the Tricolorフランス国旗は何色でしょう。

158.肥料 fertilizer

 fertile land肥沃な土地、fertile rain慈雨ように「実りが多い」という意味のfertileがもとの形容詞で、その動詞がfertilize、そしてfertilizerが肥料となります。肥料という意味の言葉にはfertilizerとmanureがありますが、fertilizerは過リン酸石灰のように人工の化学肥料をさすのに対して、もう一つのmanure は、horse manureやgreen manureというように、動物の排泄物や草など自然の肥料に使われます。

159.紫外線 ultraviolet rays

 赤redから紫violetまでの光を可視光線visible raysといい、visibleは「見る」という意味のvision(形容詞はvisionary)から、光線のrayは車の輻(や)からきています。そして、紫の光より高いエネルギーを持ったものがultraviolet rays紫外線UVとなります。接頭語のultra-には、「超…、限外…」などの意味があってultrasonic超音波、ultramicroscope限外顕微鏡のような言葉があります。対になるのは「下、副、亜、半」の意味のsub-でsubstructure基礎、subtropical亜熱帯の、subconscious潜在意識といった言葉があります。このような組み合わせには「(以)上、過度、超越」などの意味のsuper-(supra-)と反対の意味のinfra-があり、これらにはsupersonics超音速、supercharger過給器、superconductvity超伝導、infrastructure基盤、infrared rays赤外線IRなどの派生語があります。superiorとinferiorはこの組み合わせの比較級にあたるものです。その他hyper-(上)とhypo-(下)も同様の組み合わせです。化学でこれらの接頭語が付く言葉を探してみると、群青(ウルトラマリン、青色の顔料)はultramarine、過酸化水素(H2O2)はhydrogen peroxide、超酸化ナトリウム(NaO2)はsodium superoxide or sodium hyper oxide、次リン酸(H4P2O6)はhypophosphoric acidなどがあります。

160.粘性 viscosity

 「ねばねばする」という意味のviscidはラテン語の「鳥もち」からきた言葉で、この言葉からviscidity(ねばねばすること)、viscous(ねばり気のある)、viscosity(ねばり気、粘性)などが派生しています。人絹の一種のビスコースレーヨンviscous rayonは綿を溶かしてドロドロにした液(この液はviscousという)から作られるのでその名前があります。

161.ゴム rubber

 一般に諸種の植物の樹皮から分泌する乳状液をgumといい、とくにゴムの木などの乳液をlatexといいます。これらは粘性ゴムとよばれ粘土のように力を加えると形が変わりますがもとには戻りません。この粘性ゴムに硫黄sulfurを混ぜて加熱する加流valcanizationをおこなうと弾性ゴムrubberになります。rubberは、こするという意味のrubからきていますがこれはゴムを消しゴムとして使ったことからこするものとしてrubberというようになりました。「加流」をvalcanizationというのは、ギリシャ神話の鍛冶の神がValcanでその鍛冶場がエトナ火山であったことから火山のことをvalcanoといい、valcanoで産出する硫黄を反応させることからきたようです。日本語のゴムはオランダ語のgomからきた言葉ですが、遡ればラテン語のgummiに至ります。これは「グミ」のことでしょうか。そうすれば、ゴムとガムとグミは親戚ということになります。

162.漂白 bleaching

 漂白にはbleachingという言葉が使われますが、古い英語のblac(青白い)という言葉に由来するようです。また、英語のblankは「空白」ですが、フランス語のblancは「白い」となり、ドイツ語のblankは「白い」より「輝く」という意味になります。これらもblacを語源とすることから考えると、blacには「白く輝く」というような意味があってbleachは「漂白」という意味になったのでしょう。漂白剤はa bleaching agentとなりますが、a decolorantということもあります。

163.殺菌 sterilization

 殺菌するという言葉はいくつかあります。sterilizeは、「不毛の(反対語はfertile)」からきたsterileに「無菌の」という意味があって、その動詞として「不毛にする、不妊にする」といった意味と併せて使われ、名詞がsterilizationです。disinfectは「中に入れる、汚れる」からきたinfect(感染する)に否定のdis-をつけたもので、an infectious disease伝染病(epidemic diseaseは人の間にはやる、流行病という意味)、disinfection消毒、disinfectant殺菌[消毒]剤となります。そして、pasteurizeは加熱処理をすることで殺菌ができることを発見したPasteur(パスツール)の名前からできた言葉で、pasteurized milkは「殺菌牛乳」となります。「殺菌剤」としては「細菌を殺す」という意味のgermicideもあり、類語にinsecticide(殺虫剤)もあります。

164.工業的と実験室的 industrial and laboratry

 工業industryは、the Industrial Revolution(産業革命)や、修飾語を伴ってthe broadcasting industry放送事業、the shipbuilding industry造船業、heavy industry重工業のように使いますが、もともとはラテン語の「勤勉industria」からきた言葉です。またPoverty is a stranger to industry.(諺:かせぐに追いつく貧乏なし)のように「勤勉」という意味でも使いますが、このときの形容詞はindustrialではなくindustriousとなります。laboratry実験室にはlanguage laboratory(語学演習室)のように実習室や演習室の意味もありますが、もとはラテン語のlaboratorium(働く所、仕事場)からきた言葉で、a laboratry rat(実験用のネズミ)というように形容詞としても名詞と同形で使われます。laborが骨の折れるつらい肉体的労働であるのに対して、workは努力して行なう肉体的・精神的な仕事なのでworkshop(作業場)はみんなで仕事をするところということになるのでしょう。laboratoriumのように-riumで終わる言葉を探してみると、aquarium水族館、atrium(ローマ建築の)中庭、auditorium講堂、sanatorium療養所などがみつかります。

165.検出 detection

 動詞のdetectは「おおいを取る」という意味からきていて、I detected a change in her attitude.(彼女の態度に変化が出てきたのに気づいた)のように「…に…を見つける、発見する、検出する」というような使い方をします。detectiveは形容詞としてa detective device 探知装置、a detective agency 秘密探偵社、detective story推理小説などがありますが、名詞としてpolice detective(刑事巡査)、private detective(私立探偵)という使い方もあり、detectorはlie detector(うそ発見器)のように看破者、探知器となります。

166.装置 apparatus

 an object made for a special purpose, e.g.(ラテン語exempli gratia(for example)の略) a thermostat to keep a constant temperature.はdevise(工夫する、考案する)の名詞device、a device which is held in the hand and used to help a person who is working with his hands, e.g. a screwdriver.はtool、a device used for measuring, recoeding or detecting, e.g. a thomometer.はinstrument、そして、all the objects, devices, tools and instruments used for work in chemistry or science.がapparatusとなり、experimental apparatus 実験装置、Kipp's apparatusキップの装置のように使います。実験室で使うapparatusをあげると、水槽はtank、ガスコックや水道の蛇口はtap、瓶の栓はglass stopper、誘導管はdelivery tube、集気びんはgas-jar、スポイドはspout、三角フラスコは考案者Erlenmeyerの名前からErlenmeyer flask、漏斗はfunnel、分液漏斗はseparating funnel、るつぼ(坩堝)はmelting pot(crucible)、るつぼばさみはtongs、薬匙はspatulaなどがあります。いくつくらい知っていたでしょうか。

167.延性と展性 ductile and malleable

 遷移元素transition elementsは、全て金属なので遷移金属transition metalsともよばれます。金属の特徴としては、can be drawn out(引き延ばす) to form a thin wire.であるductile(延性)とcan have its shape changed to a thin sheet by beating with a hammer.であるmalleable(展性)があります。ductileもmalleableも力を加えて形を変えることから、人の性質が「従順な」ことも表します。ductileは管を意味するductと形容詞を作る語尾の-tileから管のように細長い(thin wire)という意味でできたのでしょうか。また、malleableはpoloやcroquetの打球槌をマレットmalletというように、槌(hammer)で打って形を変えることができるという意味でできたのでしょうか。

168.クロム chromium

クロムの化合物にクロム酸銀の赤から過酸化クロムの紫まで多く美しい色の化合物があるので、ギリシャ語のchroma(色)にちなんでクロムchromと名付けられています。chromaに由来する言葉としては、chromatics色彩論[学]、chromosome染色体、chromatographyクロマトグラフ法などがあります。ラテン語の色(color)からでた言葉には英語のcolor、スペイン語のcolor、フランス語のcouleurなどがあります。

169.鉄、コバルト、ニッケル iron, cobalt, nickel

 鉄はiron、ドイツ語でEisenとともにゲルマン系の言葉を使っていますが、Fe2+を表すferrousやFe3+を表すferricは、鉄の元素記号Feとともにラテン語のferrum(鉄)からきています。steelは鋼のことで、鉄ironと炭素carbonの混合物のことです。鬼を表す言葉にギリシャ語のkobalos、ラテン語のcobalusという言葉があり、それがドイツ語のKoboldになって、このKoboldが銀などを盗んだ後の屑鉱石(これもKoboldという)から発見されたのがcobaltです。cobalt blueはコバルトの化合物の色でコバルトそのものは金属で青くはありません。スウェーデン語「銅の悪魔」のことをNicholasといい銅に似ているが銅を含まないことからnickelと名付けられました。現在でもOld Nicholasで悪魔を意味しますが、子供の守護聖人のSt. Nicholas(聖ニコラス)はSanta Clausとなりました。5cent硬貨coinのことをnickelと言いますが、coinの表はhead、裏はtailといます。

170.金、銀、銅 gold, silver, copper

 金は英語でgold、ドイツ語でGold(ドイツ語ではお金はGeld)、元素記号のAuはラテン語のaurum(金)に由来する言葉で、暁の女神Auroraもaurumに由来しています。銀は英語でsilver、ドイツ語でSilberですが、フランス語のargent、イタリア語のargentoなどはラテン語のargentumに由来し、英語でも「銀色の」はargentineです。銅copperは、古代キプロスは良質の銅を産したのでラテン語「キプロスの(Cyprian)金属」の意味からきていて、形容詞はcupricとなります。

171.錯イオン complex ion

 An ion which has molecules joined to it by coordinate bonds.のことを錯イオンと言います。日本語の「錯」の字には「交錯」のように混ざるという意味があるので中心の金属元素に配位子ligandが結合した(ラテン語でligare)という意味でつけられたのでしょうか。英語のcomplexは、「共に折りたたむ」の意味から、complex sentence(複文)のように種々の部分や要素から成っていてその理解に相当の研究や知識を必要とする複雑さをいい、類語のcomplicatedは非常に複雑で理解や解決が困難なことをいいます。塩のうち、錯イオンを含むものを錯塩complex saltといい、明礬alumのように2種類の塩からできたものは複塩double saltといいます。

172.形 shape

 形を表す言葉はいろいろあり、figure skatingというときのfigureは内部構造と外形との両方を表し、outlineが線や輪郭によって表わされた外形を表すのに対して、formはa devil in human form(人間の姿をした悪魔)のように中身や色と区別した物の外形や形を、そしてshape はa rock in the shape of a human face(人間の顔の形をした岩)のようにfigureと同様に外形を表わしますが内部がつまっているという意味合いがあります。また、shapeは動詞としてShape up or get out.(しっかりしろ、さもなければ出ていけ)のようにも使われます。分子やイオンの形としては直線型line、正方形型square、六角形型hexagon、正四面体型(regular) tetrahedron、正八面体型(regular) octahedronなどがあります。lineは「亜麻(linen)で作った綱」からきていて形容詞はlinearとなり、その他の形容詞は、square、hexagonal、tetrahedral、octahedralとなります。

173.染料と顔料 dyes and pigments

 aniline dyeなどで代表される染料dyeは、a substance used to give colour to cloth, plastics or paper.ですが水に溶けやすいので媒染剤mordantを使って色落ちしないようにします。dyeは動詞としてShe has dyed her hair brown.(彼女は髪を茶色に染めている)のように使い、その過去形、現在分詞形はdyed、dyeingなのでdieの過去形、現在分詞形のdied、dying と間違えないように注意しましょう。一方、ターンブル青(turnbull's blue)やベルリン青(berlin blue、prussian blueともいう)などa solid substance used to give colour to paintはpigment顔料といいます。

174.確認 confirmation

 confirmは「完全に確実な(firm)ものにする」からきていて、confirm a rumor(うわさの真偽を確かめる)やThe new discovery was confirmed by further experiments.(その新発見はその後の実験によって正しさが確認された)のようにうわさや実験などを確かめるという意味で、名詞はconfirmation、旅行でのreconfirmationは「再確認」です。類語には「正しいことを確かめる」というverifyがあります。

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