85.変化 change

変えるという言葉を調べると、ラテン語の「交換する」からきたchangeが、Heat changes water into steam.(熱は水を水蒸気に変える)のように一部分または全体を本質的に変えることを意味するのに対して、ラテン語の「別の」からきたalter はI had the coat altered by a tailor to fit me.(私の体に合うようにそのコートを服屋に直してもらった)のように部分的・外面的に変化を加えることを、ラテン語の「尺度に合わせる」からきたmodifyはAdverbs modify verbs and adjectives.(副詞は動詞や形容詞を修飾する)のように修正のために変更をすることを、さらにvaryは同じものからの離脱や、徐々にまたは断続的に変化させることを、transformは外形と同時にしばしば性格や機能もすっかり変えることをあらわします。changeに似た言葉のexchangeはexchange gifts at Christmasのように人と人とが複数のものを交換するという意味です。またA dollar exchanges for 110 yen.のようにも使い、exchange bankは外国為替銀行となります。さて、a change of seasons は陽気の変わり目で、a change of lifeは人生の節目となりますが、the change of lifeは何でしょう。

86.触媒 catalyst

 触媒とは、a substance which increases the rate of chemical reaction but itself remains chemically unchanged.のことです。動詞はcatalyzeで反応を促進させるという意味になります。名詞のcatalysis(触媒作用)は、cat(a)-「〜を通じて」と-lysis「〜を分解する、分ける」とからできていて、触媒を使って分解(反応)させるということを意味します。普通に使うときには、物事を促進させるのにpromoter、抑制するのにinhibitorをよく使います。また、ここでは、反応の速さのことをrateで表していますが、rateはthe rate of discount (割引率)やthe rate of exchange(為替相場)のように割合という意味がもとにあり、時間に対する割合としてat the rate of 40 miles an hour(毎時40マイルの速さで)ように速さを表しています。物理では、「速度」としてはvelocityを、「速さ」としてはspeedを使います。

87.粉末 powder

 ラテン語の「ほこりpulvis」からきた言葉で、粉末にするという動詞には、powderやgrind into powderとともに、pulverizeもあります。powderには、curry powderやbaking powderのような粉という意味だけでなく、gunpowderのように火薬という意味もあり、powder magazineで火薬庫(magazineはアラビア語で倉庫の意味)となります。ほこりはdustですが、同じdustでもgold dustは砂金で、大きな金のかたまりは、gold nuggetといいます。形状を表す言葉としては、大きなかたまりがlump、小さなかたまりがchip、小さくて薄いのがflake、粉がくっついて小さな粒になったもの(顆粒)がgranule、細かい粉がgrain、もっと細かいのがpowderとなります。これらを身近な言葉で探すと、チキンナゲット、ランプ肉、ポテトチップ、まぐろのフレーク、グラニュー糖、ごはん粒(a grain of rice)と食べ物がならびます。

88.周囲 surrounding

 この反応は周囲に熱を出す(This reaction gives off hest to the surroundings.)というときの「周囲」は周りのどれか一つを指すのではなく、反応を取り囲んでいるもの全部を指すのでsurroundingsとなります。動詞のsurroundは「上に水があふれる」という意味からきた言葉で、roundの影響を受けて「囲っている、めぐらしている」という意味でThe town is surrounded by [with] walls.(その町は城壁に取り巻かれている)のように使います。environmentは、environの名詞形でsurroundのように取り巻くという意味なのですが、社会的、文化的、精神的に影響力を持つような環境を意味し、the environmentで自然環境となります。この他に、circumstanceは、circum-「周囲に」とstance「立つ」からできた言葉で、複数形で(ある事件や人の行動などに関連する周囲の)事情、状況を意味し、peripheryはギリシャ語の「回りを動く」からきていて、幾何では図形の外周や表面を、peripheralsというとコンピュータの周辺装置を示します。また、periには回りという意味があるので、periscopeは「見回す」という意味になり潜望鏡となります。

89.発熱反応と吸熱反応 exothermic reaction and endothermic reaction

 熱の流れから見ると、反応を発熱と吸熱の二つのタイプに区別することができます。(From the standpoint of heat flow, we can distinguish between two type of reactions, Exothermic and Endothermic.)exo-には「外」という意味があるので、exothermicは熱が出るという意味になり、発熱となります。exo-で始まる言葉には、exorcist(エクソシスト)悪魔払いの祈祷(きとう)師や、exotic外国のという意味で「異国風の」、そしてexodusは外に出るという意味から(移民などの)出国になりますが、the Exodusとなると旧約聖書中の出エジプト記になります。これに対して、endo-には「内」という意味があり、endothermicは熱が入るという意味で、吸熱となります。endo-で始まる言葉には、endocrine内分泌の、endogamy同族結婚などがあります。

90.エネルギー energy

 energyは、ギリシャ語の「仕事中、活動していること」という意味のergonからきた言葉で、mental [physical] energy 精神能力[肉体的能力]、work with energy (精力的に働く)やkinetic energy 運動エネルギー、potential energy 位置エネルギー、energy-saving省エネ(ルギー)のように使われて、潜在的な力または蓄積された力を表します。力や能力の最も一般的な言葉はpowerですが、変わった用法としてはpower plantの発電所、the second powerの二乗などがあります。force は実際に用いられた力で、物理で力をFと書くのはforceのFです。そして腕力や暴力の意にもなるので、the air force 空軍というような使い方もあります。might は権力・武力などの強力な力でMight is right.は「力は正義なり」という諺になり、スペードのエースはAlmightyとなります。語形変化の問題でstrongの名詞として出てくるstrength は個人の行為や行動を可能にする力です。

91.表記法 notation

 熱化学方程式では状態に関わる情報は各物質の化学式の後ろにカッコに入れて与えられます(In thermochemical equation, information concerning phase is given in parentheses after formula for each substance.)。このような書き方のルールを表記法notationといい、10進法ならdecimal notationとなります。もとのnoteはラテン語の「noto目印(をつける)」からきた言葉で、「記録」という意味はありますが日本語の「ノート」の意味はありません。また、a threatening note 脅迫状、a ten-pound note 10ポンド紙幣、a quarter note四分音符のような使い方もあり、複数形ではtake notes(メモを取る)のように使います。さらに、化学式の表記法で出てくるH2の2は下付き(subscript)、H+の+は上付き(superscript)といい、scriptには書くという意味があります。類語をあげるとmanuscriptは「手で書かれた」の意味から(手書き)原稿、typescriptはタイプで打った原稿となります。transcriptは写しや(学校の)成績証明書となり、postscriptは「後で書かれた」の意味から後書きや追伸(略P.S.)となりますが、前書きはprefaceで、prescriptは法令となります。

92.固有の peculiar、proper、inherent、characteristic or typical

「固有の性質」といようなときの「固有の」という言葉にどの単語を当てるかというのは、たいへん難しい問題です。peculiarは「私有財産の、自分自身の」という意味からきた言葉で、Language is peculiar to mankind.(言語は人間特有のものだ)のように特定の人(もの、こと)にのみ属する意味で「独特の、固有の、特有の」を示し、properも「自分自身の」という意味からin the proper sense of the word(その語の厳密な意味において)やproper noun(固有名詞)のように「適切な、本来の、固有の」となります。inherentは、性質などが(もともと)存在する・内在するというinhereの形容詞でA love of music is inherent in human nature.(音楽を愛好する心は人間性に固有のものである)のように使います。また、characteristicは「独特の、特徴的な」という感じでtypicalは「典型的な、代表的な」という感じを示します。

93.道すじ process

 processは「進行する」の意味から過程、経過を表し、the process of digestion消化作用、The process for making steel is complex.(鋼鉄を造る工程は複雑だ)というように使います。また、道すじがいくつかの段階に分かれているときには、「立つ所」からきたstageを使ってin the first stage of…(…の第1段階で)というように表します。本来の道としては、pathが人に踏まれてできた小道や細道を、laneが生垣や家などにはさまれた小道を、footpathが人が歩くための小道を、alleyは建物の間のせまい道を表します。より一般的な言葉として、courseは「走る(こと)」の意味からtake one's own course(独自の方針を取る、好きにする)、a course of study学習指導要領などとなり、「切り開かれた道」の意味のrouteからはフランス語を経由して日課(手順の決まった仕事)をあらわすroutineなどが派生しています。

94.燃焼 combustion

 heat of combustion燃焼熱やspontaneous combustion自然発火というように堅い感じで使われるのが、combustionです。「燃える」という一般的な言葉はburnで、バーナーburner、日焼けsunburnなどでなじみがあり、burning love for〜(〜への燃える思い)という使い方もあります。「火」を表す言葉としては、火事だ!というときのfireがありますが、マッチやライターの火はlightと言います。「炎」という感じの言葉にはflame(frameは枠)があり、「可燃性の」というときにはflammableやcombustibleを使います。はげしい燃焼である「爆発」はexplosionで、動詞は「外に拍手する」という意味のexplodeです。さらに「炸裂」になるとdetonationです。また、implosion(真空管などの)内破という言葉もあります。燃えた後の白くなった灰はashですが、真っ黒焦げになったのはcinderで、(料理などが)黒焦げになった(burned to a cinder)ときに使います。cinderに女性指小辞の-ellaがついた「すすだらけの女の子」というのは誰でしょう。

95.生成 formation

 ラテン語の「形」からきたformには、An idea formed in his mind.(ある考えが彼の心の中に生じた)のように形作るという意味があり、the formation of a cabinet 組閣、the formation of character 人格の形成のように使いますが、他にcreateやgenerateというどちらも「生み出す」という意味の言葉があります。createは、God created the heaven and the earth.神、天地を創造(つくり)たまえりと聖書の「創世記」にあるように神や自然の力などが新しいものを創造することを示します。派生語としては、形容詞のcreativeが創造的な、名詞のcreationが創造(the Creationで天地創造)、creatureが「創り出されたもの」という意味で生き物になります。もう一つのgenerateは、熱や電気などを(物理的・化学的に)発生させる(起こす)という意味で、派生語には発電所や発生器のgeneratorや、the rock-'n'-roll generationロックンロール(で育った)世代のgenerationがあります。

96.単位 unit

 unitは、The joule is a unit of energy.(ジュールはエネルギーの単位である)のような物理量の単位だけでなく、The family is the basic unit of society.(家族は社会の基本単位である)のように構成単位もあらわします。unitのもとの言葉はunityで、racial unity(民族的統一)のように共通の目的のためにひとつの組織に結合されて調和や協調が保たれていることを表し、また(数量の単位としての)1という意味もあるから、「単位」を意味するunitが派生しました。類語のunionはUniversal Postal Union(万国郵便連合)のように諸種の要素や個々には独立したものから成り立っていて, 基本的な利害や目的などが一致して統一がとれていることを表します。理科では、物理量を表す記号は斜字体(イタリック)で書き、その単位は立字体(ローマン)で書くので絶対温度TK(ケルビン)となり、質量のmとメートルのmは区別されます。

97.試験管 test tube

 testはラテン語のtesta(土製のつぼ)からきた言葉で、金属を試すのにこのつぼを用いたことから能力などを試す「試験」という意味になったようです。test paperは、リトマス試験紙などの試験紙のほかに試験問題紙や試験答案を意味しますが、「ペーパーテスト」は和製英語で、英語ではa written testで筆記試験を表します。また、employer(雇用主)とemployee(被雇用者、従業員)と同じように、試験をする人や装置をtesterといい、試験される人(受験者)をtesteeといいます。似た言葉にtestamentというのがありますが、この言葉は別の「証言する」という言葉からきたものでthe Testamentで聖書を意味になります。tubeには、管や筒の意味があり、a glass tubeガラス管やtube colors チューブ入り絵の具のように使います。地下鉄は米語ではsubwayですが、英語ではトンネルの形からtubeといい、The tubeでロンドンの地下鉄となります。最後に、tube の形容詞形はtubularですが、test tubeは形容詞としては「体外人工授精の」という意味になって、a test tube baby(体外人工授精児)のように使われます。

98.ビーカー beaker

 冷たいものを入れるのがglassで、暖かいものを入れるのがcupということを聞いたことがありますが、beakerも飲み物の器からきた言葉です。ギリシャ語で土器のことをbikosといい、ラテン語を経て中世英語のbikerになったようです。beakerには普通のcupと違って注ぎ口がありますが、鳥のくちばしのことをbeakといい、その形からこの言葉には「注ぎ口」の意味があります。そのあたりから、現在ではbeakのあるbikerがbeakerとなったのでしょう。

99.フラスコ flask

 日本語のフラスコは、江戸時代にポルトガル語のfrascoから入ってきたもののようです。もともと瓶の意味で、英語のflaskにも瓶の意味があります。イタリア語ではfiascoといい、「瓶」の意味の他に「失敗」の意味がありますが、これは、ガラス細工で失敗したものを瓶(fiasco)にしたことから後に「失敗」という意味が付いたようです。英語のfiascoにも同じ意味があります。ドイツ語のKolbenは、「丸い」というところからきた言葉です。

100.ピンセット tweezers

 化学をしている人がアメリカなど英語圏に行ったときに、「ピンセット」と言っても通じなくて困ったという話をよく聞きます。フランス語ではpincettesといい、pincerという「つまむ」という動詞があります。ドイツ語でもPinzzeteですが、対応する動詞はないので、この言葉はフランス語からドイツ語に伝わったようです。英語では、(a pair of) tweezersとなります。tweezeが毛抜きで抜くという意味なので、英語のtweezersはそこからきた言葉のようです。

101.酸 acid

 一般に、酸acidという物質は「酸味」という言葉があるように酸っぱいので、形容詞でan acid fruit(すっぱい果物)のように使いますが、この酸っぱさは未熟な果物などのすっぱ味を表わすもので、sourのように「おいしい」と感じられる酸味にはあまり用いられません。派生語としては、酸がもつ共通の性質を酸性acidityといい、酸性になるはasidify、酸性化(酸性になること)はacidificationなどがあり、俗語ではLSDの意味でつかわれることもあります。また、名詞のacid(酸)の反対語はbase(塩基)ですが、形容詞のacid(酸性の)の反対語はalkaline(アルカリ性の)となります。

102.塩基 base

 baseには、ラテン語のbasis(土台)からきた文字どおりの「物を支える土台」の意味から、the base of one's belief 信仰の基盤、at the base of the hill 丘のふもとでのような使い方の他にa base of operations作戦基地、a three-base hit三塁打、そして塩基(塩の土台となる部分という意味でしょう)のような使い方もあります。また別の意味では、音楽で使われるようにbassと同様に「低い」という意味がbaseにはあり、そこからa base action(卑劣な行為)、銅 鉄 鉛 スズなどのbase metals(卑金属、貴金属はnoble metals)のように使われます。これらのbase metalは酸と反応して塩をつくります。このことも塩基をbaseということに関係しているのでしょうか。

103.水素イオンの授受 transfer of hydrogen ion

 水素イオンといってもその実態は陽子protonそのものなので、水素イオンの代わりに「プロトン」ということがあります。日本語では+の電荷を持っているので「陽子」と名付けられていますが、protonは原子核の中から最初に見つかった粒子なので「最初の、原始の」の意のproto-から名付けられたものです。proto-で始まる言葉としては、原形質protoplasm、原型prototypeなどがあります。一方、transferは「横切って運ぶ」からきた言葉で、I took the streetcar and transferred to the bus.(電車に乗ってそれからバスに乗り換えた)のように使われます。trans-にはこのほかにも「越えて」という意味があり、FF9 のトランス状態というのは、transfiguration変身(figureは形や姿の意味)のことでしょうか。

104.価数 basicity

 the number of hydrogen atoms which can be replaced in one molecule of an acidのことです。例えば、塩酸hydrochloric acidのようにこの水素の数が1のものはmonobasic acid(一価の酸)、硫酸sulphic acidのように2のものはbibasic acid(二価の酸)、リン酸phosphoric acidのように3のものはtribasic acid(三価の酸)と分類されます。もちろん、ここにでてきたmono-、di-、tri-、(tetra-)は1、2、3、(4)を表す数詞でギリシャ語由来のものです。ラテン語由来のものとしては、uni-、bi-、ter-、quad-が対応します。

105.電離度 degree of electrolytic dissociation

 電離electrolytic dissociationの程度degreeということです。degreeと同じく程度を表す言葉のextentには広さの意味があるので、degreeがa matter of degree (程度の問題)のように程度をその点で示すのに対して、extentはto a considerable extent(かなりの程度まで)のように0からあるところまでの範囲を意味することがあります。degreeには、an angle of 45 degreesやat ten degree Celsiusのように角度や温度のほかに、a doctoral degree(博士号)のような使い方もあります。たとえば、理学博士の称号のPh.Dはthe degree of doctor of philosophyで哲学博士の意味になります。これは科学がかつて自然哲学と呼ばれていた時代の名残でしょう。

106.強酸 strong acid

 strongは力強いという意味の最も一般的な語で、a strong man 力の強い人のような使い方の他に、have a strong memory(記憶力がよい)のように精神力や記憶力などが強いことや、strong black coffeeのように茶などが濃くて強烈なときにもstrongが使われます。類語を調べると、精神的または肉体的にたくましくて力があふれているのがrobustで信念や精神が強く外からの圧力に屈しないことを表します。toughにはa tough constitution(頑丈な体格)のように外部からの力に抵抗できるほど丈夫なという意味で、tough meat (堅い肉)のようにsoftの反対の意味もあります。最後に、powerfulは力にあふれているという意味をもち、the most powerful nation in Asia(アジア一の強国)のように社会的な地位や権力などを表わすのにも用いられるほか、薬などのききめやエンジン、においなどが強いことも表します。

107.弱酸 weak acid

 weakは弱々しいという意味の最も一般的な語ですが、strongよりも意味が広くてa weak chair(壊れやすい椅子)のような使い方だけでなく、She is a little weak in the head.(彼女は少し頭が弱い)のように能力が劣っていること、a weak constitution(虚弱な体質)のように体が弱いこと、a weak government(弱体な政府)のように権威がないことや、Math is my weakest subject.(数学は一番苦手な科目だ)のように不得意なことも表します。類語では、feebleが病気で弱ったという意味をあらわし、poorは、have a poor memory(記憶が悪い)やa poor imagination(乏しい想像力)のように能力が弱い(乏しい)ことを示します。

108.水のイオン積 ion product for water

 数量が倍増するように増えるという意味のmultiplyの名詞がmultiplication(かけ算)で、2×4=8の時には、2をmultiplicand(被乗数)、4をmultiplier(乗数)、8をproduct(積)といいます。また、Add a little salt.(塩を少々加えなさい)のように(他のものに)加えるというaddの名詞がaddition(足し算)で、和はsumといいます。引き算やわり算のときはどういうのでしょう。

109.酸性雨 acid rain

 雨はラテン語でpluvia、フランス語でpluie、ドイツ語でRegen、デンマーク語はregnなので英語のrainはヨーロッパでも北の方の言葉ということになるのでしょうか。スペイン語ではどういうのでしょう。フランス語で雨傘はparapluieですが、parasolはカフェの店頭やプールサイドにあるような大型のビーチパラソルのことで、英語の日傘とは少し違います。rainbowは、よく知られているようにrain(雨)とbow(弓)からできた言葉で、外側から順にred、orange、yellow、green、blue、indigo、violet となりますがindigoとblueを合わせて6色と考えられる場合もあり常に7色とは限りません。rainbow trout(ニジマス)は体の斑点から名付けられたものです。

110.中和 neutralization

neuterは「どちらでもない」からきた名詞で「中性」をあらわし、文法用語として男性(masculine)、女性(feminine)、などとならんで中性として使われ、a neuter noun 中性名詞という言葉もあります。つまり、英語では名詞に性はありませんが、ラテン語をはじめとするヨーロッパ系の言語の多くには性があります。例えば、ドイツ語ではHund(犬)は男性名詞、Huhn(ニワトリ)は中性名詞、Katze(猫)は女性名詞と決まっていて、それによって冠詞も変化します。そのため、日本語のように簡単に外国語を取り入れることができません。さて、neuterからの変化をたどると、neuter の形容詞形がneutralで、(酸性でもアルカリ性でもない)「中性の」やa neutral nationのように「中立の」となります。つぎにneutral の動詞形がneutralizeで、化学では「中和する」という意味になり、a neutralizing agent(中和剤)、Alkalis neutralize acids.(アルカリは酸を中和する)のように使います。neutralizeの名詞形はneutralizationで「中和」となります。

111.滴定 titration

 titrationとは、The process of letting a solution flow from a burette into another solution held in a conical flask until a chemical reaction is complate.ということで、動詞はtitrateです。そして、The sign that a titration is complate as the chemical reaction has been completed.をend point(終点)といい、the volume of a solution from a burette needed to reach the end point in a titration.をtitreといいます。滴定に使う器具はいろいろ変わったものがあります。例えば、小さなoperaオペラのことをoperettaオペレッタというように、滴定のときに使うpipetteは、pipeに縮小形を表す-tteがついて小さなpipeという意味で、buretteは英語のbottleに近いフランス語のbuire(水差し)の縮小形からきたものがです。また、conical frask(beaker)は、その形が円錐coneのようなconicalであるところからきたもの、メスフラスコのメスは英語の「めちゃくちゃ」という意味のmessではなく、ドイツ語のmessen(測る)からきたもので測定用のフラスコという意味です。最後に、BTBやphenolphthaleinのような指示薬は、示す(indicate)からindicatorといいます。

112.塩 salt

 塩は古くからの言葉で、フランス語でsel、ドイツ語でSalzなどはラテン語のsalに由来し、ギリシャ語のhalsからはhalogen(ハロゲン)が派生しています。saltを含む言い回しで、worth one's solt(給料分だけの働きはある、有能な)は、昔は給料として塩が支給されたことによるものです。また、above the salt(上座に)は、かつて食卓の中央に大きな塩入れ(saltcellar)を置き、上手に身分の高い客や家族が下手に身分の低い客や召使などがすわった習慣からきたものです。化学で塩は、a compound made by replacing some or all of the hydrogen of an acid by metal.で食塩(NaCl)だけでなく他の多くの物質も塩として扱われます。

113.正塩 normal salt

normはラテン語の「(大工の)物差し」からきていて、標準や規格を表します。写真のフィルム(Photographic film)の感度(speed)を表すのにJISとDINがありますが、DINのNはDeutsche Industrie-Norm(ドイツ工業規格)のNormです。normの形容詞はnormalで「正常な」という意味になります。反対語のabnormalは、ab-という「離脱」の意味の接頭辞がついたもので正常からはずれたということで「異常」となります。abuse(乱用)も同じab-がuseについたものです。normalの名詞はnormality正常となり、動詞はnormalizeでnormalize relations between the two countries(両国間の関係を正常化する)のように使われます。その名詞のnormalizationは、標準化という意味だけでなく、福祉問題でも使われるようになってきました。

114.定性分析と定量分析 qualitative analysis and quantitative analysis

 質と量を表すqualityとquantityは、対をなす概念(concept)で重要なものです。まず、qualityは、「どのような」というラテン語のqualisからきたもので、high qualityのように品質やa quality of manのように(人間の)特性を表します。a lady of qualityと言えば貴婦人となり、企業でQCといえばquality control(品質管理)のことでしょう。qualitativeで「性質の」となり、qualifyで「資格(性質)を与える」、qualificationで「資格」となります。一方、quantityは「どれくらい」というラテン語のquantusからきたもので、物質や液体の量を表すのに使われます。quantitativeで「量の」となり、quantifyで「…の量を定める」、quantifierでsomeやmany などの数量詞となります。

115.調製 preparation

 「前もってきちんと並べておく」からきた準備するという意味のprepareがもとの動詞で、Prepare your lessons.(予習をしなさい)や、Prepare yourself for a shock.(今からショッキングなことを言うから心構えをしろ)というような使い方になります。生物のプレパラート(Praparat)も英語ではpreparationです。では、The student is preparing for the examination.とThe teacher is preparing the examination.ではどうちがうでしょう。

116.酸化と還元 oxidation and reduction

 酸素がoxygenで、酸素と化合する、つまり酸化するのがoxidize、そして酸化はoxidationとなり、酸化されたものはoxideとなります。還元は、「後ろに戻す」という意味のreduceがもとの動詞で、reduce one's weight from 70kg to 60kg.(体重を70キロから60キロに減らす)のように使います。名詞のreductionは、What reduction will you make on this article?(この品をどれくらい割り引いてくれますか)のように使いますが、数学では「約分」の意味やreduction to absurdity の意味のreductio ad absurdumで帰納法となります。化学では「還元」の意味で、酸化と還元は同時に起こるので、酸化還元反応はredox reactionといいます。

117.酸化数 oxidation number

 numberは「数」の意味のラテン語のnumerusからきた言葉で、数に関わっては、偶数even number、奇数odd number、実数real number、虚数imaginary number、基数cardinal number、序数ordinal numberといろいろありますが、「数字」はnumeralでローマ数字はRoman numeralsとなります。numberの形容詞には、「数の」という意味でnumericalがありin numerical order (番号順に)のように使います。「数が多い」を表す形容詞には、numberless、innumerable、numerousなどがあり、 numeracyは「数の扱いに長けた(理数系の能力が高い)」という形容詞です。

118.増加と減少 increase and decrease

 増加するという意味の言葉には、大きさや量などが増加するenlargeや、数量が倍増するようにふえるmultiplyなどがありますが、「上に成長する」の意味から数量や程度が増えるのがincreaseで、a rate of increase(増加率)やincrese in oxidation number(酸化数の増加)のように使います。in-のかわりに「下へ」の意味のde-になったものがdecreaseで、類語には「小さくする」という意味のdiminishがあります。これらはイタリア語でcrescendo、decrescendo、diminuendoとなります。

119.酸化剤と還元剤 oxidizing agent and reducing agent

 酸化(還元)剤とはa substance which oxidizes(reduces) elements or compounds.で、それ自身は逆に還元(酸化)されている(be reduced/be oxidized)ことに注意が必要です。「剤」をあらわすagentは「行為する」からきた言葉で、a free agent自由行為者(自分の行為を自らが決定できる人)やby natural agents自然の力によってという使い方のほか、代理人の意味でa patent agent特許弁理士、a travel agent旅行代理業者、さらにはa diplomatic agent外交官、a secret agentスパイ(CIAのA)などもありますが、化学ではa substance, or a form of energy, which is used to produce a named effect.という意味でan oxidizing agent causes oxidationということになります。よく似た言葉の「試薬」reagentは、a substance which causes a chemical reaction to take place.でよりひろい意味になります。

120.イオン化傾向(列) ionization tendency (series)

 ラテン語のtendoには「目指す」という意味があり、そこからきた英語のtendは不定詞を伴って「…する傾向がある」となります。このtendからできた言葉には、attend(出席する)、contend(戦う)、extend(広げる)、intend(意図する)、pretend(ふりをする)などがあります。tendencyはtendの名詞で、Girls have a stronger tendency to chatter than boys.(女の子は男の子よりおしゃべりをする性向が強い)のように使います。seriesが相互に関連のあるものが連続することに対して、sequenceは理論的な関係や序列など互いの関係が緊密なつながり、successionは単に事件やものが連続すること、chainは因果関係や論理的な関係のはっきりしているseriesをあらわします。形容詞はserialでserial murders(連続殺人)のように使います。テレビなどの連続番組で一作一作が完結しながら続くのはseries、クライマックスで終わり次に続く連続物はserialといいます。数学ではseriesは級数、電気ではin seriesで直列、そして並列はin parallelとなります。

121.電池 cell or battery

 cellは「貯蔵室」からきた言葉で、小室や独房とともに細胞や蜂の巣の穴もcellといいます。電池では2つの電極からできた基本のunitのことをcellといい、2個以上のcellをつないだ高い電圧が出るようにした電池のことはbatteryといいます。例えば、自動車の12Vのbatteryは2Vのcallを6個in seriesにつないだものです。batteryにはa cooking battery(料理道具一式)などのように「ひとそろい」の意味があり、野球で投手と捕手を「バッテリー」というのは電池の意味ではありません。

122.+極と−極 anode and cathode

 教科書では電池のときは正極と負極、電気分解のときは陽極と陰極と分けていますが、実際の実験としては、極板の間にかかる電圧が起電力より高いか低いかだけの違いなので電気分解の陽極や電池の陰極のように電極に電流が入っていく(電子が出てくる)ところをanode、反対側をcathodeと呼ぶことが推奨されています。anodeとcathodeを命名したのはファラデーで、彼はup+wayの意味でanode、down+wayの意味でcathodeとしました。

123.充電と放電 charge and discharge

 chargeはShe was charged $200.(彼女は200ドルを請求された)のように料金の請求やHe charged himself with a heavy task.(彼は重大な任務を引き受けた)のように責任などを追わせるというような使い方があります。しかし、もとは「(車)に荷を積む」という意味で、charge a battery(バッテリーを充電する)というのは電池に電気を積み込むという感じになり「充電する」となりますが、反対のdischargeは「荷を降ろす」という意味からdischarge electricityは貯めていた電気を放出するという感じで、「放電する」となります。

124.起電力 electromotive force

 electromotiveはelectro-「電気の」という連結形とmotiveがつながったもので、単位はボルタ電池のVoltaからとったボルトvolt(電圧はvoltage、ネジはbolt)を使います。motiveは、a motive for murder(殺人の動機)のように行動を起こさせる内部的な衝動をあらわすのに対して、類語のincentiveは人にいっそうの努力や行動をうながす刺激を、inducementは人に行動をとらせる外部からの特に金銭的な誘因をあらわします。原動力をmotive powerというので、electromotive forceは電気を起こす内的な力と言う意味でしょう。motiveの意味をもつフランス語のmotifは、英語としては芸術作品などの主題、テーマ、動機(モチーフ)として使われます。

125.減極剤 dispolarizer

 likeとdislikeのようにdis-は動詞について反対の動作を表しますが、distrustやdisagreeableのように名詞や形容詞に付いて「不…」「非…」「無…」のようにも作用します。ここでは「分極する」がpolarizeなので、dispolarizerは「分極を減らすもの」という意味で減極剤となるのでしょう。ただし、このpolarizeは、分子の中の電荷の偏りではなくて、起電力electromotive forceが電流を流すことによって変化することで、electrochemical polarizeが正確な使い方です。

126.乾電池 dry battery(cell)

 dryは「乾いた、乾く」という感じですが、「乾燥させる」というような堅い感じの言葉はdesiccateで乾燥剤はdesiccantといいます。一度、お菓子か海苔の乾燥剤で確かめてみましょう。日常語にはたくさんの意味があることが多く、dryの場合では、a dry riverbed(水がかれた川床)のように「干上がった」という意味から、His imagination has dried up.(彼の想像力は枯渇した)というような比喩的な使い方や、a dry lecture 内容のない[つまらない]講演、dry thanks 通りいっぺんのお礼などがあります。さらに米口語で「禁酒の」という意味から麻薬やアル中患者が禁断療法を受けることもdryで表現されます。また、基本の「乾いた」という意味での反対語はwetですが、酒の辛口をdryというときの反対語はsweetになります。では、a dry cowはどんな意味でしょう。

127.蓄電池 storage battery(cell)

 まずはstoreから、storeというと「店」という訳しか思い浮かばないかもしれませんが、動詞ではstore the mind with knowledge(頭に知識をたくわえる)のように貯蔵するという意味になります。類語のshopは古期英語の「(差し掛け)小屋」からきた言葉で仕事場の意味があり、beauty shop(美容院)とは言ってもbeauty storeと言いません。storageはstoreに状態などを表わす名詞語尾-ageがついた名詞形で「蓄積」という意味になります。コンピュータでstorage deviceというと情報を蓄積するということで記憶装置(memory)を指します。

128.メッキ(鍍金) plating

 plateはギリシャ語のplatys(平らな、広い)に由来する言葉で、a plate of glass(板ガラス1枚)やnameplate(名札)のように板という意味や、平皿の意味で使われます。plateが大皿から銘々に取り分ける平皿を意味するのに対して、円板(disk)からきたdishは全員の料理を盛りつける円型または楕円形の大皿や盛り皿を、saucer はコーヒーカップなどの受け皿を意味します。plat du jourはフランス語でplate of the dayの意味になり(レストランの)その日のおすすめ料理のことになります。化学では金属の薄い膜(A thin coat of metal)で覆うことをメッキといいますが、「広く」膜で覆うことろからgold-plated spoons(金めっきのスプーン)のようにplateがメッキの意味で使われるようになったのでしょう。類語では、高原や(グラフの)平坦域をあらわすplateau、「平らな場所」からきたplatform、広い葉をもつという意味のplatanusなどがあります。

129.陽極泥 anode sludge

 電解精錬をしたときに陽極anideの下にたまるのがanide sludgeです。mud は水分を含んでドロドロになった「土」ですが、sludge(下水などの)「汚物」や「ヘドロ」という感じになります。陽極泥は日本語では「泥」ですが「土」ではないのでmudではなくsludgeを使います。ただし、このsludgeには金や銀が含まれているので決してwasteではありません。また、底にたまるのではなく鍋料理のアクのように溶液の上に浮いてくる「浮きかす」は、scumでthe scum of the earth(世間のくずども)のようにも使われ、溶けた金属の上の浮きかすはdrossといいます。溶鉱炉などで鉱石を精錬する時に出るかすはslag(かなくそ)といいます。slugになるとナメクジやなまけ者のことになりますが、米口語ではslugに「強く打つ」という意味があるので強打者のことをsluggerといいます。

130.精錬 smelt or refine

 一般的に「精錬」とは鉱石から純粋な金属を得るための操作ですが、To separate a metal from its ore by heating the ore with a suitable reducing agent.(適当な還元剤とともに鉱石を加熱することによってその鉱石から金属を分離すること)はsmeltといい、Iron ore is smelted in a blast furnace.(鉄鉱石は溶鉱炉で精錬される)というように使われます。そして電解精錬のようにすでに金属ではあるが、不純物を含んだ状態からより純粋な状態への精錬はInpure copper is refined by electrolysis.のようにrefineを使います。refineには「精製、精錬」の他に、言葉や態度などを洗練するという意味があり、refinedは洗練されていて上品であり知性を感じさせることを表します。類語には、繊細で微妙なの意味でもろさを伴う美しさを暗示するdelicateのほか、豪華で趣味がよく洗練された様子のelegant、精妙なの意味で、特に感覚の鋭い趣味の高尚な人にだけ分かるような美しさを暗示するexquisite、しとやかで優美な様子を表すgracefulなどがあります。

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