最初に

私のサイトでは、製鉄のしかたから、刀の作り方まで完全に近いマニュアルをご紹介するつもりです。しかし長い刃物は武器として規制されていて、一般の人が勝手に作ることは出来ません。日本刀は武器ではなく、美術品として扱われ、文化庁が管轄する別枠になっています。日本刀の制作は文化庁の許可をもらった刀匠だけに許されています。作刀の許可を取るにはどこかの師匠について5年間の修行を終え、最後に文化庁による実技講習を受け、十分な作刀技術を習得している事を示さなければなりません。道のりは結構有ります。更になんとか独立できて仕事をはじめても、一人前に自分の仕事で飯を食えるようになるのに運の良い人で5年はかかります。努力をしない人や運の悪い人は、刀だけを作っていては一生飯は食えません。

それに私のページの全てを読めば、こんな気の遠くなるような仕事をする奴は、頭のネジがまとまって抜け落ちている奴に違いないと気付かれるでしょう。刀鍛冶の世界ではそれでも刀を作りたいと言う、本格的な「イカレタ奴」を探しているのは事実です。ただし、若くて、独身で、身体だけは丈夫で、粗食に耐えるのが条件です。出来れば、十分太いスネを持った親がいれば、なお結構ですが......。鍛冶屋を始めるのにはそれなりの資金も必要なのです。チャレンジして見ますか?

ちなみに刀を作れる人は全国に300人弱いると思われますが、刀鍛冶が本職の人は100人ぐらいでしょうか。本職が刀鍛冶でも刀のみを作って十分生活できる人は更に少なく、自分の理想とする刀で鑑賞に耐える物のみを作り、ちゃんと飯を食える人は、ほんの一握りの人達だけです。

どの世界でもそうですが、表に出て活躍している人は良く見えます。でもその後ろにはその何倍もの下積み生活をしている人や、結局最後まで芽が出ずに終わった人が沢山いるものです。もしどこかの師匠について修行するのなら、それなりの覚悟を決めてから事に当たって下さい。いいかげんな気持ちで弟子入りしたり、途中で簡単にやめてしまっては、弟子入り先には大変迷惑ですし、貴方も貴重な時間を無駄にすることにもなりますから。

ここまで読んでどうしようかと考え込んだ貴方は、普通の人です。刀など作ろうと思わない方がいいですよ。真面目に仕事をすればきっと普通の人生を送れると思います。それでも刀を作りたいと思ったのなら、貴方は本格的な「イカレタ奴」の可能性があります。刀鍛冶にチャレンジして見て下さい。でも幸か不幸か刀鍛冶になれても、80パーセント位の確率で一生貧乏になりますよ。

少し冗談ぽく書きましたが、刀を作るには何が何でも刀を作りたいと云う執念と、溢れるような刀に対する情熱が必要です。貴方にはそれがありますか?「他にすることが無いから、刀でも作ってみるか」では決して良い刀を作ることは出来ませんよ。貴方の人生です、慎重に考えて下さい。その上で尚刀鍛冶になりたいという強い意思が有れば、次へ進んで下さい。

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