3 出銑

 いよいよ最後の大仕事です。私の「たたら場」で一日に作れる銑は25kg前後ですから、出銑は最後にまとめて一度だけ行っています。この行程は手早くしなければ銑が冷えて固まってしまいます。その上とても危険を伴いますから、何度やっても緊張する仕事です。なにせ私は鍛冶屋ですから鋳物は素人なのです。刀の勉強を始めた頃はこのような仕事をするとは夢にも思っていませんでした。

 まず砂鉄を入れ終わると30分くらい炭だけを投入して空焚きをします。更に炭の投入を止めてからも焚き続けて炭の位置が十分下がると、送風量を増やし炉内の温度を上げて、残っている砂鉄や出来ている鉄のかけらを溶かします。同時に最後のノロを流し出します。準備が整うと、炉全体を傾けて炉底に溜まった銑を流し出します。


出銑の様子


銑をインゴットに流し込んでいる所

まだ冷めきっていないインゴット

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