短期集中連載!
デスカノン
第九話
雨が降ってきた。
小雨。
通り雨ではなく、しばらくやみそうもない。
北川が傘を持っている訳がない。
濡れた。
髪の毛から水滴が落ちるほどに。
「これこそ、水も滴るいい男と言う訳か!」
にやりと不敵に笑って、濡れた髪を掻き上げる。
北川、ずぶ濡れになっても風邪を引くような男ではなさそうだ。
もちろんデスクリムゾンも濡れたくらいで発砲できなくなるなんてコトはない。
北川もデスクリムゾンもそんなヤワではないのだ!
「しかし、これだけ降ると寒く感じるな」
人間らしい感情はまだ残っているらしい。
ぶるっと身を震わせる北川。
しばらくとぼとぼと移動。
哀愁の漂う後ろ姿。
男を感じる一時である!
「男は背中で語るものサ。ふっ。さすが俺、決まったな」
「そういう見え透いたお世辞は自分で言わないものですよ」
「何!?」
驚き振り返る。
そこには空き地にたたずむ一人の少女。
だた、こちらを見ている訳でもなく、静かに目を閉じ、雨の中、じっとたたずんでいる。
「俺の背後を取るとは……」
「いえ。わたしがここに居たら勝手に背中を向けていただけです」
静かにそう告げる。
揚げ足。
いや、それ以上のなんであろうか?
北川はそんな彼女に冷や汗を感じる。
今までのキャラとは違う……そう、いわゆるボスキャラ級のキャラクターだ。
ゆっくりとデスクリムゾンの照準を彼女に合わせる。
「ここで発砲する気ですか?」
「そのつもりだ」
デスクリムゾンを持つグリップに力を込める。
うっすら汗ばむ北川の手。
そして、物静かにたたずむ彼女。
「殺す…つもりですか?」
「やらなきゃやられるのが掟だろ?」
「それもそうですね」
ゆっくりと彼女が目を開く。
思わず北川はそれに見とれそうになった。
「いざ!」
「勝負…」
雨の中、左に飛ぶ北川。
反してふわりと動く少女。
手に持っているのは傘。
北川のデスクリムゾンに勝てる気はしない。
ドゥゥン!
一発目。
が、それは彼女のスカートの端を捕らえただけ。
「くそっ」
北川は焦っていた。
雨の視界の悪さではない。
冷たく降る雨の痛みではない。
プレッシャーだ。
「そんなコトではヒロインはやられません」
「黙れ!」
「所詮、貴方は脇役でしかなかったんです」
「黙れ!!!」
ドゥゥン!
二発目。
今度は彼女の真正面に飛んでいく。
が、彼女は傘をすっと構え、その弾丸を……
まぁ、傘で受け止められたら苦労はしない。
もちろん、もんどり返って、地面にたたきつけられる少女。
「やはり普通の市販の傘(定価2890円)では防げませんでした」
「あーえーっとだなーこれは……」
北川が事態を飲み込むのに多少時間がかかる。
今までの緊張感はなんだったのか?
分からない。
何もかも分からない。
「永遠は…あるんですよ」
彼女の最後の言葉。
それは何を意味していたのか。
が、彼女の身体が動かなくなると同時に、北川は震えた。
「勝った…」
残り 0人
杉菜追記
今回の挿絵でなんと主人公である北川くんを描き忘れるという痛恨の失敗を犯し
ハベラさんを悲しませてしまったので(笑)早速北川くんを追加させて頂きました!!
ご満足頂けたでしょうか(笑)
この茜はレヴォの時大変お世話になったL−Rさんに捧げます(笑)
つづく
是非是非是非是非ハベラさんにご感想を(笑)
ちなみに杉菜は内容に関与しておりません(笑)
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