短期集中連載!

デスカノン
第五話


 「つまらないモノを撃ってしまった……」
 黄昏れる北川。
 その姿は、男の哀愁さえも漂わせる。
 デスクリムゾンの形が変わったようだがやはり気にしない。
 「そういえば、大切な目的があったよな?俺」
 既に目的さえも忘れている。
 が、北川は前に進むしかないのだ!
 彼の後ろに道は出来ない。
 前に進むことに意義がある。
 「まぁ、進んでいればなんとかなるか!」
 ポジティブ。
 デスクリムゾンを持つ者としてまったく恥じない姿。
 人間としてどうかはわからないが。
 しばらく進むと、何やら言い争っているような声が聞こえてくる。
 言い争いと言うよりも一方がただ怒りをぶちまけているようだ。
 だんだんとその声が大きくなっていく所を見ると、こちらに近づいているらしい。
 「みさきっ。今日という今日はしっかり払ってもらうわよ」
 「それはちゃんと身体で払うよぉ」
 「わかったわ。身体で払うなら明日、きっちり働いてもらうわよっ」
 「……明日は腹痛で寝込む予定なの」
 「どうして、明日の腹痛の予定が分かるのよ。それにみさきが腹痛になる訳ないでしょ」
 「そ、それはひどいよー」
 あまり酷いと思っていないような口振りだが。
 言われている相手はのんびりとした口調で受け流しているようだ。
 「今の一言はやっぱり酷いよ」
 「払わない方が悪いの」
 「ううっ。すぐそうやっていじめるんだから」
 声はだんだん近づいてくる。
 距離もそんな離れてはいまい。
 「いやな予感がする……」
 すっと物陰に入る北川。
 しばらくすると、その話をしていたであろう女性たちが通る。
 「だから、ちゃんと働いてくれればいいのよ!」
 バシッ。
 怒りにまかせ、一人の女性が近くに放置してあった段ボールを蹴る。
 かなり力を入れて蹴ったのだろう。
 段ボールはベコリと酷くへこむ。
 「ぬぅぅっ。隠れている所をねらうとは……」
 それと同時につぶれた段ボールからふらふらした男性が現れた。
 もちろん、その段ボールに隠れていたのは北川であり、頭をくらくらさせながら段ボールから抜け出す。
 地球がぐるぐる回っている気分だ。
 軽い脳しんとうを起こしているかもしれない。
 「わっ。人がいたよ」
 「べ、別に私が悪いんじゃないわよ?」
 「蹴ったのは雪ちゃんだし……」
 「何よ!?責任転換?」
 「それは雪ちゃんだと思う」
 「ほほぉ、貸しのある私に逆らうと」
 「それとこれとは別」
 互いに引かない攻防。
 もちろん北川をそっちのけで。
 「私とやるっていうの?」
 「雪ちゃんじゃ、私に勝てないよ」
 飛び散る友情。
 美しき友人愛。
 どことなく違うような気がするが細かい事は気にしない。
 そして、一人のけ者にされている北川が、ゆっくりと立ち上がる。
 「主人公を差し置いて何をそんなに目立ってるんだ!おまえら!」
 「うるさいわね。ちょっと黙ってなさいよ」
 ドスッと鈍い音と共に、北川の腹部に見事なひじ鉄が入る。
 それと同時にもう一人が笑顔を絶やさず、裏拳を北川の顔面にぶち込むっ。
 「くはぁぁっ。身体が割れるように痛いっっ。ああっ。顔面から血がドクドク出るぅぅぅぅ」
 のたうち回る北川。
 むろん、相手にしてくれる人は一人もいない。
 しばらくの間、一人で悶絶。
 「きーさーまーらー!殺す!銃殺だ!コンチクショウ。このデスクリムゾンが火を噴くぜ!オラ!」
 血だらけの顔でそう叫び、渾身の一発を放つ北川。
 むろん、デスクリムゾン仕様の右下に逸れる弾丸では、当たりもしない方向に飛んでいく。
 気力だけが空回りしていくような、そんな光景。
 「雪ちゃん危ないっ」
 「へっ?」
 ドンと突き飛ばす。
 もちろん銃弾の方向へ。
 その結果……一つの死体が転がる事になる。
 「みさき、あんた覚えておきなさいよ……」
 「ああっ。親友の雪ちゃんになんて事をっっ。許さないよっ」
 ぐっと北川の方を向く彼女。
 どう見ても確信犯な気がするのだが。
 「あー、なんて言うか、逆恨みも良いところだと思うんだが。つーかトドメ指したの君」
 「目に見えている事に頼ってばかりは駄目」
 「説得力ねぇし」
 思わずあきれ顔の北川。
 彼女の顔には偽りの文字は見えない。
 あぁ、役者万歳。
 「別にお昼代を借りてて、これで帳消しだなんて思ってないよ」
 「誰もそんな事、聞いてないんだが……」
 「まぁ、それはそれとして、敵討ちでいいのかな?」
 「断じてよくない」
 にっこり微笑む彼女。
 彼女、できる。
 北川の本能がそう叫んでいた。
 「と、その前にお昼ご飯にしたいね」
 くるりと北川に背を向けてカメラ目線。
 こちらを向いてにっこりスマイル。
 きっちりとFANサービスを忘れない。
 「敵に背を向ける余裕があるなら、弾丸でも食らっとけ」
 パン!パン!パン!パン!
 乾いた銃声が彼女の背後から響く。
 「今日の夕日は40点だね……あと、弾丸は美味しくないよ……」
 真っ昼間に倒れた少女の最後の一言だった。
 
 残り人数 7人


 つづく


是非是非是非是非ハベラさんにご感想を(笑)
ちなみに杉菜は内容に関与しておりません(笑)

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