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1.概要 しかし,ほんのわずかな電流で作動する機器があれば不可能ではないと気づきました。それは,果物電池などを調べる中で,電子メロディや液晶製品(電卓や時計)など究極の省電力電子機器が身近になっているからです。 つまり,従来は不可能とされていた実験が,案外,容易な状況になっていると考えたのです。 針立て式の検波ダイオードとして機能する半導体探しで,最高性能を示したのが「シリコン(粗製シリコン)」でした(鉱石検波ダイオード参照)。そこで,「シリコン+電子メロディ」の組み合わせで研究を始めました。 2.必要なもの 2〜3V程度の可変交流電源(理振の電源装置でよい)。自作する場合,以下の構成を勧めます。 「スライダック(単巻可変電源装置)→ヒータートランスなど(小容量のものでよい)→交流出力」 ※例えば,トランスの6.3V二次出力タップを用いると,0〜100Vのスライダックなら0〜6.3Vの連続可変交流出力が得られることになります。なお,スライダック出力をそのまま実験に用いるのは危険なので,絶対に避けます。 (2)針立て式「整流ダイオード」 シリコン(粗製シリコン)に針を立てたもの(鉱石検波ダイオード参照)を用いました。 黄鉄鉱などでも可能だと思われ,それらしい感触を得ている。ただ,実用となる成果は得られていません。 (3)作動させる省電力電子機器 電子メロディ(大和科学教材)が作動することに拘りました。これは,省電力機器であるとともに,音によって作動を多くの生徒に気づかせやすいからです。電子メロディが可能なら,さまざまな液晶製品(電卓や時計)も当然作動するはずです。このような省電力電子機器は,果物電池などで用いたものが手近に余っていることと思います。 (4)平滑コンデンサー 交流をダイオードで整流しただけでは半波波形(脈流)で,きれいな直流ではありません。上記の直流機器は作動しなかったりノイズが発生します。そこで,コンデンサーを機器に並列接続して平滑にします。ケミコンで良いのですが,極性に注意します。 ・「1〜10μF」少しノイズが残るが,針を半導体に触れた瞬間に作動を確認できるよさがある。 ・「50〜100μF」きれいな音が出る。充電時間が必要で,針を半導体を触れてから作動するまでに多少のタイムラグが発生する。 ※耐圧は6V以上あれば十分です。 3.実験の方法
シリコンに針を立てて,電子メロディが作動する場所をしばらく探すと,ブッブーというノイジーな音が出てきました。何とか,メロディらしく聞こえることもあります。十分に整流されていないのか,電流が足らないかのどちらかです。 電子メロディに50〜100μF程度の平滑コンデンサーを接続すると,一瞬遅れてからフワーときれいなメロディが出てきました。コンデンサーへの充電時間によるタイムラグのようです。針を接触させる場所を変えると,音の大きさも変化します。最適な場所は,案外,苦労して探す必要があります。 いろいろな条件で実験しましたが,交流電源電圧2.4Vの時,作動した電子メロディに加わる電圧は0.8〜1.5Vまでありました。当然,1.5V時が最も明瞭できれいな音でした。 実験で難しいのは,針で探す作業です。最適位置であっても,メロディが出るまでのタイムラグ(わずかですが‥)のあることです。チョンチョンといったスピードで探せないのです。ゆっくり探すか,コンデンサーなしで探してブー音がでればコンデンサーを接続することになります。別法は,小さな容量のコンデンサー(1〜10μF程度)を接続して探します。ただ,少しノイジーな音となり,気になります。 電子メロディ自体が整流用ダイオードとして機能しているのではないかという疑問も出てきました。そこで,代りにダミー抵抗を入れてオシロスコープで調べると,かなりきれいな直流の半波波形が見られました。 (2)液晶機器の作動実験 電子メロディの作動に成功したので,液晶機器も接続してみました。 電子メロディの時と同様,2.4Vの交流電源を用いた条件で作動しました。
4.備考 ・平成6年度 『東レ理科教育賞授賞作品集』 P54〜56に掲載されています。 ・「科学の祭典CD-ROM 『原子の世界へ旅立とう! PART1』 科学技術館」に収録されています。 |