1.概要

当時の鉱石検波ダイオード(現在,入手不可能)
(左:直径9mm×長さ27mm, 右:直径8mm×長さ28mm)
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「鉱石」にはダイオードの性質をもつ半導体があり,それを用いた「鉱石ラジオ」はラジオや無線通信の原点がわかる貴重な存在でした。歴史を振り返るため,奈良県の鉱山跡で採集した黄鉄鉱を用いて針接触タイプの検波ダイオードを自作しました。
市販の鉱石検波ダイオードに使われていた「方鉛鉱」など,いくつかの鉱石は購入しました。また,地学の先生にもらったり,家の中で使えそうな硬貨や鉄錆を探しました。
半導体の最先端技術は,児童,生徒にとっては遠い存在です。しかし,こういった採集品や身近な半導体を実用に結びつけた時代が存在するのです。そのため,とても興味深い教材として利用できると考えます。
2.必要なもの
(1)実験用改造ラジオ
「6石スーパーラジオ」の検波ダイオードを置き換えることによって,明瞭なラジオ放送で容易に性能確認ができます。この改造ラジオを持参すると,鉱山で拾った時,その場で実験できます。また,家の中や学校,実験室などで見つけた素材も,次々に性能をチェックできます。ラジオの検波回路から出る2個のミノムシクリップに針を挟むと,少し不安定ですが大きな岩に貼りついた鉱石などのチェックも可能です。つまり,改造ラジオは,携帯検波ダイオードチェッカーになるわけです。
(2)針立て式検波ダイオード

左:改造6石スーパーラジオ 右:針立て式検波ダイオード
(実験:黄鉄鉱を用いた例,ベースはステンレス板)
(イヤホン:衛生面を考慮してフィルムケースに取り付けた。)
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実験準備
実験の前に検波ダイオードを接続し,
ラジオ放送の受信を確認します。
(キット付属のゲルマニウム検波ダイオードを接続)
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3.鉱物検波ダイオードの実験例

大きな「黄鉄鉱」検波ダイオード
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小さな「黄鉄鉱」検波ダイオード
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大きな「方鉛鉱」検波ダイオード
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小さな「方鉛鉱」検波ダイオード
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「黄銅鉱」検波ダイオード
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「磁鉄鉱」検波ダイオード
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「シリコン」検波ダイオード
・入手はアルミニウム鋳物業者,鉱石標本業者など。
・比較データは持っていないが最高性能と考えている。
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※シリコンといってもいろいろあります。私が用いたのは,石英を還元しただけの段階の粗製シリコンです。このままでも,アルミニウム鋳物の添加物として利用されるそうです。私は,そのルートから入手しました。半導体製造に用いるためには,不純物を取り除いてten9やeleven9といった高純度の結晶にします(更に微量のドーピングをします)。こうして作ったインゴットやウェハーでも試しましたが,もちろん検波ダイオードとして作動しました。

検波ダイオードとして作動した鉱石例
A「シリコン◎」, B「方鉛鉱○」, C「黄鉄鉱◎」, D「磁硫鉄鉱○」 E「黄銅鉱○」, F「斑銅鉱○」, G「磁鉄鉱○」, H「閃亜鉛鉱△」 ( 性能高◎⇔○⇔△性能低:評価は主観的なもの )
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参考:市販の鉱石検波ダイオードの構造
貴重品ですが,側面を切り取りました。
方鉛鉱のかけらがバネで押さえてあります。
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「錆びた10円硬貨」検波ダイオード
丁寧に探すと検波ダイオードとなる部分が見つかります。
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※他にも,検波ダイオードとして機能する素材が,身近でいろいろ見つかります。探してみましょう。
4.備考
・平成6年度 『東レ理科教育賞授賞作品集』 P54〜56に掲載されています。
・「科学の祭典CD-ROM 『原子の世界へ旅立とう! PART1』 科学技術館」に収録されています。
・2000年7月15日(土)18:30〜19:00テレビ東京「テクノ探偵団」”電子を自由自在!の謎〜半導体〜”で,提供した「原始ダイオード」実験装置が使われました。内容も,ほぼ私のレポートに沿って構成されたました。
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