「ずず・・・ずずず・・・・・・、ふーー。あぁー、お茶がおいしい」

 丹波屋で買ってきたおはぎを食べながら、五十六さんに送ってもらったJAPANは静岡産のお茶をすする。

「はぁー、しあわせーってかんじ」

 思わずしみじみとつぶやいてしまった。

「・・・ほんとに幸せそうにお茶を飲むね、かなみちゃんて」

 目の前に座っているメナドに呆れ顔で言われてしまった。

「はは・・・、ちょっと落ち着くって言うのかな、そういう感じになるんだよね」

 そう言って私はその場をごまかした。

 

 ・・・んっ?

 

 あぁっ! もう始まってる!!

 

 ・・・えーと、のっけから幸せにひたっちゃて自己紹介が遅れてしまいましたが、私の名前は見当かなみです。えっ、年ですか? ・・・今年でちょうど二十歳となってしまいました。

 私の目の前でいっしょにお茶を飲んでいるのは親友のメナドです。まだ緑茶の味に慣れてないようでちょっと苦そうにしている。でも和菓子には緑茶が一番だよね。

「やっぱり世の中が平和だと、何をしてても幸せに感じるよね」

「うーーん? ・・・平和かなぁー? まあ確かに一時期よりは平和になったけど・・・」

 私の言葉はどうも無条件にはメナドに受け入れられなかったみたいだ。

「・・・だって、まだ世界中のあちこちであのときの災害の爪痕がしっかりと残ってるんだからね・・・」

 メナドの言うあのときの災害というのは、創造神ルドラサウムによる恐るべき大破壊のことだ。確かに、今もその被害に苦しんでいる人のことを考えたなら、不謹慎と言われても仕方ないことを言ってしまったと思う。

 でもね・・・。

「・・・それに、今リーザスは大変なんだし。

 王様が離縁状おいてどっか行っちゃった上に、そのショックでリア様だって寝込んでるんだから・・・」

 

 それっ! それよっ! ずばりそれなのよっ!!

 

 リーザスのことを考えて(そうだよね? ランスのことなんかじゃないよね?)うれいているメナドには悪いのだけど・・・。

 私が幸せを感じている理由は静岡産のお茶でもなければ、丹波屋のおはぎでもない。真の理由はずばりそこにあるのよ。

 リーザスの忍者としての仕事はマリス様から受けているので、仕事をしていない訳ではないけど・・・。

 

 ・・・無茶な仕事を押しつけられない・・・。

 

 ああ、なんてすばらしいことなんだろう。

 それにリア様には悪いけど、ランスがシィルちゃんと一緒に出奔したのは当然のことと言うか、一番自然ななりゆきだったと私は思っている。むしろさっさとそうしてなさいよ! と思ったものだ。

 そんなこんなで今、私はしあわせというものをしみじみと感じているのだった。

 

 でも・・・。

 

「・・・なんか不安」

「んっ、どうかしたの?」

「あっ、いや、こっちのこと・・・」

 思わず口から出てしまったけど、幸せを感じる一方で、・・・いや、幸せを感じれば感じるほど、どぉーーしよぉーーもなく不安になるのだった。

 幸せに慣れていないせいだからなのだろうか(自分で言っててすごく悲しいけど)、ふっ・・・と思うのよ。・・・思ってしまうのよ。

 

 ・・・このしあわせはその後にやってくる不幸のためにあるのではないのか・・・と。

 

 いやああああああぁぁぁーーーーーー!!! いやすぎるうぅぅーーー!!

 

「ちょ、ちょっと。・・・大丈夫? かなみちゃん」

 思わず頭を抱えてしまっていた私に、心配げにメナドが聞いてきた。

「あ、あはははは・・・。へいき」

 自分でもわかるかわいた笑いを浮かべてとりあえずそう答えた。手に持った湯飲みも心なしか震えている。

 笑顔をはりつけたまま、震える手でお茶を飲む。

 頭の中に浮かんだ恐るべき考えを必死で否定しようとしながらも、なんだかそのとおりのような気になってくるのだった。

 せっかくのしあわせさえ素直に喜べないなんて・・・、私ってば不幸すぎる・・・。

 

 そして悲しいかな皆さんの予想通り、私の幸せな時間もそう長くはなかった。

 

 

  鬼畜王ランス外伝  かなみちゃん忍耐帳

 

壱之巻  「ランスを探して三千里」

 

 

「・・・お呼びになりましたでしょうか?」

「ええ」

 私はマリス様に呼ばれて、リア様の部屋に来ていた。

 リア様はランスに一方的に離縁された事がよほどショックだったようで、それから一週間ぐらい寝込んでしまわれている。マリス様もリア様が心配なようで、公的な事以外ではいつもリア様の部屋で看病をなされていた。

「かなみっ!」

「リッ、リア様っ!」

 私の名前を呼んだのは、誰あろうリア様だった。

「お目覚めになられたのですね。・・・よかった」

 ランスについで無茶なことばかり言うリア様だけど、私にとっては大事な主君、元気になられて本当によかった。

「・・・わたしずっと考えてたの。ダーリンがわたしを置いてどっかに行くなんてぜぇっっっったいにおかしいわ。かなみもそう思うでしょ?」

「あ、・・・はあ・・・」

 私はあいまいにうなずいた。

「これはきっとあの奴隷のせいよ! あの置き手紙だってあの奴隷がいやがるダーリンに無理やり書かせたのよ! 絶対そう! 全部あの奴隷が悪いのよっ!!」

 そんなことは絶対ないと思うけど、とりあえずは黙って聞いていた。

「第一この離婚、わたしはぜえぇぇーーーーーーっっっったいに認めないんだから」

 リア様の気性からしてそういうことを言うだろうな、とは思っていた。

「だいたいあんな紙っ切れで・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 そこらへんのことをわかっているからこそ、ランスだって置き手紙だけをおいて夜逃げみたいに出ていったのだろう。

「というわけで、・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 ・・・・・・

「・・・はあっ?」

 私はリア様が何を言ったのかわからなかったため聞き返した。

「何? ちゃんと聞いてなかったの?」

 勢いに水を差されたようで、リア様はわずかに憤慨したように言った。

 でも・・・、私は聞いていなかったのではなく、リア様が言ったことが「理解できなかった」ために聞き返したのだった

「もう一度いうわね、・・・」

 リア様の口からでた言葉はさっきとまったくいっしょだった。

 

「・・・ダーリンをここに連れてきて」

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・

 ・・・

 ・・・思考が停止してしまった。

 ・・・えーと、それはつまり、この広い世界でどこへ行ったのかもわからないランスを見つけ出したうえに、(おそらく)嫌がるであろうランスをここへ連れて来い、とそういうことでしょうか?

 

 ・・・・・・

「あ、あの・・・。リア様、冗談・・・ですよね?」

 いちるの望みをこめてそう言った私に対して・・・。

「・・・何が?」

 きょとんとした顔でそう言われてしまった。

 最後の希望をこめてマリス様へと視線をうつす。

「・・・・・・」

 しかし、なにも言ってくれなかった。

 ・・・そう、わかっていたはずよ。マリス様はリア様の望みはどんなに無茶でも聞き届けようとする人なんだと。

 

 ・・・わかっていたはずなのよ。

 

「かなみ、たのんだわよっ!」

 リア様がうれしそうにそう言った。

「・・・・・・わかりました・・・」

 私にはそう言う以外は道がなかった。

 

 ・・・いつもそうだ。私の不幸の始まりは、それにせざるをえない選択を選ばされることからだった。

 

 

 とぼとぼ・・・・・・。

「・・・はああぁぁーー」

 捨てられた子犬のように、とぼとぼとリーザスの城下町を歩く。ため息だってそりゃあ出るってもんよ。

 なんといってもこの世界は広い。

 ランスのやった世界統一のため、今ではJAPANにゼス、それにヘルマンとだってリーザスは国交を結んでいる。目立つやつとはいえ、この広い世界からたった一人の男を探せなんて・・・。

 

「・・・JAPANに、・・・かえろっかな・・・」

 

 思わず口から出てしまった言葉だが、今の私にとってそれは非常に魅力的に聞こえた。

 五十六さんのコネでJAPANで働こうか?

 それとも、もう忍者なんてやめちゃって普通の女の子として、普通に恋愛して、普通に結婚して、やさしい旦那さんと田舎でのんびり暮らそうかな?

 

 五十六さんの名前が出たところで少し説明させてもらうと、ランスがいなくなったので当然ながらハーレムはなくされた。

 他に仕事を持ってた子(メナドとかレイラさんとかね)はその仕事一本に、他国からランスがさらってきていた子(メルシィちゃんとかアナセルちゃんとか)は責任をもって親御さんのもとへおかえしし、身寄りがないなどで残りたいという子(レベッカちゃんとか)には他の仕事についてもらうことになった。

 大抵の子は嬉々としてハーレムの解散を受け入れたけど、なかにはがっかりしている子達もいたからびっくりだ。メナドもちょっとがっかりしていた方だったな。

 でもこのことってようするに、ランスが帰りたくなる材料をかなり減らしたってことなんだよね。

 

 ・・・もっとも、それ以前にランスを見つけるという大問題があるんだけど・・・。

 

 意外と近くにいるような気もするし、全然遠くに行っちゃってる気もする。ランスは魔剣カオスを持っているから、下手すると魔人領にいるなんてことも考えられる。

 捜索範囲はこの大陸全部ってことー? とっほっほ・・・()

「とりあえずはランスの家に行ってみるか、お留守番のあてなちゃんに何か言ってるかも」

 それが私に残された唯一の手がかりである。もしここに誰もいなかったら、私はあてもなく旅立つ以外には道がなくなってしまうことになる。

 

 

 ・・・アイスの町・・・。

「・・・ここね」

 ランスの家・・・前にリーザスが陥とされたとき、助けを求めて来たことがある。たった数年前のことなのに、もうずっと前のように感じる。

「・・・・・・ゴクッ」

 緊張する。だれもいなかったらどうしよう。

 

 ピンポーン・・・。

 インターホンを押す。・・・だれも出てこない。

 

 ピンポンピンポーン・・・。

 もう一度続けて押す。・・・お願いだからだれかでてよー。

 

 ガチャ・・・。

「はーい。どちらさまでしょうか?」

 かわいらしい声とともにドアが開いた。

 

 ・・・あー、よかったよー。

 

「あっ、あの・・・・・・・・・んなっ・・・」

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「あれ、かなみさん。どうかしましたか?」

「・・・なっなっなっ・・・・・・」

「んー、だれだー、シィル?」

「かなみさんです、ランス様ぁ」

 

「んなぁーー! ななななななななーなーなーなーなー・・・」

 

 奥から顔をだした男を指差したまま、私は開いた口がふさがらなかった。

「んん、どーしたかなみ? お前はなーなー星人か」

「なーなーなーなーなーなー・・・」

「ランス様ぁ、なーなー星人ってなんですか?」

「なーなー言う星人だ」(まんまじゃないか)

 

「なーなーなーなー・・・、・・・なぁーんでランスがここにいるのよー!!!

 

 ・・・・・・ぜーはー、ぜーはー」

 私の心からの魂の叫びに対してこいつは・・・。

「なんでって、俺様の家に俺様がいて何が悪い」

 胸をはってこう言いやがった。

 そーよ、・・・こーいうやつだったのよ、ランスってやつは。

 

「・・・ん、まあ・・・、とりあえず結果オーライってやつかな・・・」

 私は頭を押さえつつも、そう思うことにした。

「・・・あの、それでまたどうしたんですか、かなみさん?」

 シィルちゃんがおずおずと聞いてきた。

「あっ、ああ、あのね・・・」

「ピィーーン! ・・・ははあぁん、わかったぞ・・・」

 私が用件を言おうとしたときにランスのやつが口をはさんできた。

「なにがピーンよ、だいたい・・・」

 しかし、こいつは予想通り人の話なんぞ聞いちゃあいなかった。

「・・・俺様に抱かれたくなったんだな。そうだろうそうだろう、がっはっはっは!」

「・・・あのねえ、私はただ・・・」

「えーい! みなまで言うな!

 俺様はやさしいから今すぐ抱いてやるぞ、がっはっはっはっは!」

 そう言うとこいつは私の服を脱がそうとする。

 相変わらず強引で、自分勝手なやつだ。

「ちょっ、ちょっと・・・、違うっての。服の中に手を入れるな・・・」

「・・・うるうる・・・・・・ランス様ぁ・・・」

「がぁーっはっはっはっはっは・・・」

 

「ふぅー、・・・あやうく玄関で犯られるとこだったわ・・・」

 なんとかランスの魔の手をかわして、私はリビングでひとここちついていた。

「ちっ、・・・それでなんのようだ」

 私の前に座っていたランスが仏頂面で聞いてきた。

「ああ、・・・あのね・・・」

 さすがにちょっと言いづらい。

「・・・あの、ひょっとしてやっぱり・・・、・・・リーザス関係ですか?」

 シィルちゃんがおずおずと聞いてきた。

「う、うん、そう。リア様がランスに話があるんだって・・・」

「俺様はないぞ!」

 ランスがぴしゃりと言った。

「お願いだから会って話をするだけでも・・・」

「やだね!」

 間髪入れずにランスが言い放った。

「・・・だいたいリアのやつとまともに話ができると思うか?」

「うっ! ・・・それを言われると・・・」

 ものすごく痛い所をつっこまれてしまった。

「・・・会うだけでも・・・」

「やだって言ってるだろう」

「お願いします・・・」

「い、や、だ」

「この通り・・・」

「しつこい」

「私を助けると思って・・・」

「・・・あの、ランス様、会うだけぐらいなら・・・」

 手をあわせてお願いしている私をかわいそうに思ったのか、シィルちゃんが助け船をだしてくれた。ランスがリア様に会うのを一番嫌がっているだろうに、本当にいい子だ。ランスにはもったいないぐらい本当にいい子だ。

「はっはぁーーん・・・」

 ランスがにやにやといやらしく笑う。

「なっ、なによ・・・、そのいやらしい笑みは・・・」

 背中に寒気を感じつつ言った。

「ふふん・・・お前、俺様に帰ってきてほしいんだな?」

「へっ・・・、へ、変なこと言わないでよっ! なんで私が・・・」

「じゃあ別にいいってことだな?」

「うっ、・・・それとこれとは・・・」

「残念だなあ、かなみがどうしてもって言うんなら考えたんだが・・・」

「くっ・・・くくぅ、・・・こ、こいつは・・・」

「いやあ、まったく残念だ」

 

「・・・ど・・・」

 

「ど?」

「・・・ど、・・・どうしても帰ってきてほしい・・・です・・・」

 ぷるぷると肩を震わせながら、自分でも誉めてあげたいぐらいの持ち前の忍耐力で言った。

「・・・お願いしますは?」

「くっ、・・・お願いします・・・」

「・・・うーん、誠意が感じられないなあ」

「こっ、・・・このぉ・・・。

 ・・・ど、・・・どうすればよろしいでしょうか?」

「そうだなあ、リアのやつに会うというのは精神的にかなり苦痛だからなあ、その苦痛をなぐさめてもらいたいなあ」

 にやにや笑いながらランスが言った。ものすごく何かを含んだ物言いだ。

「・・・・・・・・・わかったわよ。

 抱きたいなら抱けばいいじゃない!」

 そう言った私に対してランスのやつはさも心外そうに言った。

「・・・なにか誤解しているようだな、俺様はべつにどうでもいいんだぜ。

 まあ、かなみがどうしても抱いてほしいって言うんなら別だがな・・・」

 

 ・・・く、くやしい・・・。

 私に選択権がないのを知っていて言ってるんだ。

 

 ・・・くやしいよう。

 

「・・・お・・・」

「お?」

「・・・お願いします・・・。・・・どうか抱いて下さい・・・」

 私はうつむいたままそう言った。・・・そう言うしかなかった。

「まあ、そこまで言われればしかたないなあ。がっはっはっはっは・・・」

 

 ・・・ほんとにくやしいよう。

  

 

 ランスがどっかりとベッドに腰をおろした。

「で、どうしてほしい?」

 ぼうぜんと突っ立っていた私にランスが言った。

「・・・どうしてほしいって?」

 私が憮然とした表情のままで聞き返した。

「おんやあ、かなみのほうが抱いてほしいんだろ」

「くっ・・・」

 くやしさで唇をかみしめたまま何も答えられなかった。

「・・・まあとりあえずは俺様の準備をしてもらおうか」

 そう言うとランスはズボンをおろして私に見せ付けた。

「・・・・・・」

 私はなにも言わずにしゃがみこむと、それをにぎって舌をはわせていく。

「ぴちゃぴちゃぴちゃ・・・・・・」

 なにも考えず、ただ作業として私はそれをもくもくと行う。

「よし、俺様もしてやろう」

 ランスはそう言って裸になると、私をベッドに横たわらせ着物の帯に手をかけた。

「・・・・・・」

 私の下着をおろすとあそこに舌をはわせてくる。

 ぺちゃぺちゃという音を聞きながら、ぼんやりと天井をながめていた。

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・

「・・・つまらんな・・・」

「えっ?」

 ランスの声にわたしの心が現実へと引き戻された。

「俺様に抱かれるのがそんなに嫌か?」

「・・・ランス?」

「嫌なのかと聞いているんだ」

 ランスが珍しく真剣な表情で聞いてきた。それに対して、どうしてなのだかわからないけど、私は逃げるように視線をそらせてしまう。

「・・・でもしょうがないんでしょ、そうしないとリア様と・・・」

「リアは関係ない!」

「!」

 ランスが大声を出した。私は思わずびくっとなる。それからランスは少しボリュームを落として言葉を続けた。

「俺様はお前に聞いているんだ」

「・・・わたし・・・に・・・」

 私は呆然とつぶやいた。

「そう、リーザスの忍者としてじゃない、かなみ自身に聞いているんだ」

「・・・でも、・・・任務が・・・」

 ランスの真剣な表情におされてしまい、ただそう答えた。

「忘れろ!」

「えっ!」

「なにも考えるな!

 ただ俺様に抱かれるのが嫌なのか、そうじゃないかを聞いてるんだ」

 私はすこし考えてから答える。

「・・・いやよ。・・・だっていつもランス強引に、私の気持ちを無視して・・・」

「だからいま聞いている」

「・・・・・・」

「いやなのか? いやじゃないのか?」

「わたしは・・・」

 

 ランスのこと嫌い・・・ううん、ほんとはそんなに嫌いじゃない・・・でも、好きでもない。

 抱かれるのが嫌なのか? 嫌じゃないのか? ・・・こんなこと聞かれたのは初めてだ。

 だっていつも強引に、あるいは仕方なく・・・。

 

「誰の気持ちでもない。お前自身の気持ちだ」

「私自身の・・・」

「そうだ! かなみ自身の本当の気持ちだ」

「わたし・・・じしんの・・・」

 

 わたしのほんとうのきもち・・・。

 

「俺様に抱かれるのはいやか?」

 私は目をふせて、ゆっくりと首を振る。

「・・・わからない」

「いやじゃないのか?」

 ・・・ただ、首を振る。

「・・・・・・わからない」

 

 わたしいつも無理強いされて、しかたなくそうしなきゃいけない方を選んでた。

 それで、わたしって不幸な子だと思ってた。・・・自分で決めることもできないって。

 

 ・・・でも、ただ流されていただけなんじゃないの・・・。

 自分で決めるのがこわくて、任務にその決定をゆだねていたんじゃあないの。

 

「・・・前にも、・・・あったよね」

 

 ぽつりと私が言った。

 

 ・・・そう、闘神都市に飛ばされたランス達を救出しに行ったとき・・・。

 私はランスの救出のほかに、もうひとつの任務を受けていた。

 すなわち、・・・シィルちゃんの暗殺・・・。

 もちろんそれは失敗したのだが、そのときにランスに言われた。

 

 ・・・いやならいやって言え。

 

 目に涙があふれてくる。

「わたし、あのときとぜんぜんかわってないんだ・・・」

「・・・かなみ・・・」

「・・・ランスって強引で、自分勝手で、自己中心的で、そっちを選ばないと世界が滅びるとしても、自分がいやだって思ったら絶対に選ばないぐらいの・・・」

「・・・・・・」

「わたし・・・、私、そんなずるいくらい自分勝手なランスが、すごく、すっごく・・・。

 

 ・・・うらやましかったんだ・・・」

 

 自分の気持ちがはじめてわかったような気がした。あんなにもランスに対して反発していたのも、きっとうらやましかったからなんだ。

 

 ・・・気がつくと私はランスの胸のなかで大泣きしていた。

 

「・・・・・・・・・・・・すん・・・すん・・・」

「・・・落ち着いたか?」

 ランスが私の頭をやさしく撫でながら聞いた。

「・・・うん」

「・・・はあ、まさか泣かれるとは思わなかった・・・」

 嘆息しながらランスが言った。ぶっきらぼうな物言いだが、私の頭を撫でてくれている手からはやさしさが伝わっていた。

「・・・それで、答えはもういいの?」

「んん、・・・いいやもう」

「・・・いまは、・・・今は抱いてほしい。

 ・・・今日の記念に・・・」

 私は思い切って言った。顔が火照ってきているのを感じる。

「・・・かなみ・・・」

「でも次からは「いやだ!」ってはっきり言うからね」

 照れ隠しにそう言った。

 

「ラ、ランス、・・・すごくどきどきしてきたよ」

 心臓が張り裂けそうなくらいにどきどきと脈打っていた。まるで自分のものじゃないようだ。

「ほう、どれどれ・・・」

 そう言って、ランスが私の胸に耳をおく。

「ほんとだ、すっごくどきどき言ってるぜ。・・・それにしても、あいかわらずちっちゃいな」

「・・・もう、・・・ばか」

 ランスが顔を近づけてきた。私は自然に目を閉じる。

「んっ、んん・・・、んん・・・んむんむ・・・」

 ランスが舌を絡ませてくる。私もそれに応えるように舌を動かした。

「・・・・・・はぁー」

 キスがすっごく感じた。

 ランスが首筋に舌を這わせてくる。

「んっ」

 じょじょに舐める部分を下ろして行く。

「んんん・・・」

 ランスの舌が私の乳首をとらえる。

「ふぁっ、あん・・・」

 思う存分舐め尽くすと、さらに下へ下へとはっていく。

「あっ、あっ、あっ」

 ランスの舌が私の大事な部分へと到達した。

「ぴちゃ・・・」

「ふあああああぁーーー!!」

 さっきと同じように舐めているはずなのに、今回はものすごく感じた。

「・・・舐めるまでもなくもうびちゃびちゃだぜ」

「・・・・・・言わないで。・・・はずかしい・・・」

 私は真っ赤になって言った。

「はは、かわいいぜ、かなみ」

「ぴちゃぴちゃぴちゃ・・・・・・」

「あっ、あっ、ああっ、あんっ、ああぁっ!」

 すごく敏感になっていて、ランスの舌の動きがものすごく感じられた。

「はっ、はあ・・・、どーして、・・・どーしてこんなにかんじるの?」

 

「・・・そりゃあ、はじめてだからな」

 

「えっ?」

「・・・だってはじめてだろ? ・・・自分から抱かれたいと思ったのは・・・」

「あっ、ああ・・・。

 ・・・うん、うん!」

 

 不覚にもまた涙がでてしまった。

 

 ランスは私の涙をキスで舐めとって・・・。

「・・・はじめてだからな、うんとやさしくしてやるよ」

 ランスはそう言って、すっごくやさしく笑った。

「うん、うん! ・・・やさしくして」

 

 やさしい! ランスすごくやさしい! すっごくやさしいよ!!

 

「・・・じゃあそろそろ入れるぜ」

「・・・うん」

 ずっずっず・・・。

 ランスのものが私の中に入ってきているのをすごく感じる。

 もう何回も入れられたもののはずなのに、本当にはじめてのように感じた。

「あっ、あっ、ああぁーー! ・・・・・・はいった・・・」

 私の中にランスのものを強く感じた。

「かなり濡れてたからな。・・・一回目で全部入ったのははじめてじゃねえか?」

「・・・ばか」

「がはは・・・、・・・そろそろ動くぞ・・・」

「・・・うん」

 ランスが腰を引く。じょじょに私の中での存在が小さくなって行く。

 再び腰を進める。私の中がランスのでいっぱいになって行くのを感じる。

 

「あっあっあん、ああぁっ、あっあ・・・ああ・・・ん、んああああぁぁーー!!」

 

 ランスの動きがどんどん速くなって行く。私もじょじょにのぼっていくのを感じていた。

「・・・くっ、そろそろ・・・」

「・・・うん、うん! ・・・来てランス、・・・きてえぇぇーー!!」

 ランスのが私の一番奥まで刺し貫いた。

 

「ああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁーーーーーーーー!!!」

 

「くっ・・・」

 私は中ではじけるのを感じながら、意識を失ってしまった。

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ちゅんちゅん・・・・・・

 空があからんでくるころに私は目を覚ました。隣を見るとランスがしあわせそうに眠っていた。

 結局昨日は一回しかしなかった。一回ですんだのはきっとはじめてだろう。・・・でもお互いにすごく満足した一回だった。

 はじめてといえば、ランスの腕枕で眠ったのもはじめてだ。

 ふと、ランスの寝顔を見ながら微笑みを浮かべている自分に気付く。

 ランスが起きるまで見ていたい・・・という自分でも信じられない衝動を押さえて起き上がる。

「・・・これ以上はシィルちゃんに悪いものね・・・」

 言い訳のようにつぶやいた。

 

 ・・・それに自分がわからなくなってしまう・・・。

 

 忍び装束を着ると、ランスを起こさないように気をつけながら下に降りて行く。

 これで私は変われる、ひょっとしたらもう変わってるのかも・・・。

 ランスが起きたらお礼を言おう。・・・昨日はどうもありがとう・・・って、たくさんの思いをこめて・・・。

 

「・・・かなみさん、おはようございます」

「えっ! あっ、シィルちゃん。・・・おはよう、はやいんだね」

 ・・・すごく罪悪感を感じてしまう、顔をあわせずらいな・・・。

「かなみさんは何か食べたいものありますか?」

「私はなんでもいいよ」

「そうですか、じゃあ私は朝食の準備をしますので」

 そう言うとシィルちゃんはキッチンへと消えていった。

 

 ・・・ちょっと緊張してしまった・・・

 

「あっ、おはようございます。ランス様」

「ふあああぁーー。・・・シィル、今日の飯は何だ?」

 ランスはあくびをした後、開口一番そう言った。

「はい。今朝はランス様が大好きなへんでろぱです」

「そうかそうか」

「あっ、あの、ランス。・・・おはよう」

「おう」

 お礼よ、お礼を言うのよ!

「あっ、ねえ、朝ご飯を食べたらさっそく出発しようか。そうすれば夕方には帰って来れるわよ」

 しかし、私の口から出てきた言葉はそんなものだった。

 

 ・・・お礼を言おうと思ったのに・・・、・・・とほほ・・・。

 

「・・・出発って、どこに?」

「へっ? ・・・だからリーザス城・・・」

「ああっ!」

 思い出したかのようにランスがポンっと手を打った。

 

 まったく、ランスったらねぼけちゃっ・・。

 

「行かん!」

「・・・はいっ?」

 われながら、まのぬけた声をあげてしまった。

「だから行かん!」

「ちょっ! ・・・ちょっと、だって昨日・・・」

 私が最後まで言う前に、ランスが口を開いた。

「あれは任務に関係なくかなみ自身が決めたことだろう。・・・任務に関係なく・・・な!」

 そう言うとランスはニヤリと笑った。

「でっ、でも、話の展開上とーぜん・・・」

「俺様は考えてやると言ったんだ。考えた結果、やっぱり行かんことにした」(はいっ! お約束!)

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ・・・頭のなかがまっしろになってしまった。

 

「がっはっはっはっは・・・」

 ・・・ランスって結構いいやつだと思った矢先に・・・。

「今日は3Pにするか」

 ・・・くっ。

「それともあてなも入れて4Pにするかな。がぁーっはっはっはっは・・・」

 

 ・・・だっ、・・・だまされた・・・。

 

「楽しそうですね、ランス様」

 シィルちゃんが朝食を運びながら、ランスに言った。

 それに対してランスの奴は・・・。

「おー、楽しいぞ! なんといっても、かなみはからかいがいがあるからな。がっはっはっは・・・」

 

 うっ! ・・・・・・うがあああぁぁぁーーーーーーーー!!!!!!

 

 

・・・わたし、やっぱりかわれそうにありません・・・・・・しくしく。

 

 

 

           

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後書き

 

「真鬼畜王」の後書きにも書いたように、かなみちゃん主役のSSです。いやー、やっぱりかなみちゃんには不幸がよく似合う。

 

かなみ「・・・あんたのせいでしょうが」

  いーや、誰が書いてもかなみちゃんは不幸だと思うぞ。

かなみ「・・・ぐっ」(思い当たる節があるようだ)

  そーいうキャラだから仕方ないのだ。

かなみ「でっ、でも。私が一番好きなんでしょう」

  うむ、そのとーりだ。(リセットちゃんがものすごい勢いで追い上げてるけど)

 

 ・・・誤解のないようにここで書いておくけど、私はリセットちゃんも大好きだ。嫌いだなんてとんでもない。「真・・・」で犯して殺した(すっごい端的な言い方)などと言われてしまったが、ストーリーの展開上やむなくというやつで、俺がわるいんじゃないんだー! 愛ゆえなんだーー!!

 

かなみ「話が横にそれてんだけど・・・」

  これは失敬。

かなみ「ねっ、一番好きなんだったら・・・、しあわせにしてよ!」

  けっこう、たましいの叫びっぽいな。

かなみ「ねっ、ねっ。そうしてよ」

  コホン、「かわいい子には旅をさせろ」という諺がある。

かなみ「えっ?」

  ・・・愛ゆえなのだ。

  ・・・愛ゆえに傷つき、愛ゆえに苦しむのだ。・・・愛など要らぬ! 我は聖帝! 聖帝サウザーなり!!(CV銀河万丈)

かなみ「あのー、もしもし・・・」

  はっ! ・・・コホン。好きだからこそなのだ、かなみちゃんわかってくれ!・・・キラン(目の端で何かが光る)

かなみ「・・・・・・でも・・・」

  まあ、「かわいさあまって憎さ百倍」なんてのもあるけどね・・・・・・ニヤリ。

かなみ「どっちだー!」

  クックック・・・。さーねー。

かなみ「そのちび〇子ちゃん(伏せてねーや)に出てくる野口さんのような笑いかたをしないでー!」

  クックック・・・。

かなみ「ねえねえ、なんだかんだ言っても最後は幸せにしてくれるんでしょう? ね? ね? ・・・うんって言ってよー!!」

  クックック・・・。・・・言えやしないよ。そんな恐ろしいこと・・・言えやしない。

かなみ「野口さんはいやーー!!」

  クックック・・・。では弐之巻でまた会いましょう。

ランス「出ればな」

  はうーーーーー!!!!

シィル「おちが一緒ですね」

ランス「ふっ、所詮そのてーどだ」

 

 

 ・・・・・・というわけで、つづきものです。どっかで話がでっかくならない限り、五話位で終わるんじゃないかな。というわけでそれまでお付き合いお願いします。

 ・・・前回の「真・・・」がとりあえずハッピーエンドのはずが、結構みんな不幸だったのに対し、今回はできるだけみんな幸福にしたいと思ってます。

 

 ・・・・・・かなみちゃん以外は・・・。

 

かなみ「なんでじゃー!!(かなりやばい状態です)」

 

 

 

 この一話は、けっこう早めに出来たので、アリスのページのユーザー図書館にまんま送ったのですが、一話しかなかったせいかまだのってませんね。(今はのってますよ)

 以降はここで発表して行きたいと思ってます。

 

 

 

 


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