9:ベム砦の戦い(中)
ベム砦の南部での戦いは終焉を迎えようとしていた。
シャルロットはすでにかなりの場所を傷つけられており、さらに何度となく石突きを体に食らっている。はたで見ているファナにとって彼女が立っているのが不思議なくらいだった。
「・・・・もういい加減に止めよう。ファナ王女に手当をしてもらわなければ本当に死ぬぞ」
「まだ勝負は終わってない」
ほとんどかすれるような声で彼女は呟く。
「最初からそんなのはついているよ。私がここで君と戦うことを選んだ時点で君の負けは決まっていた。だがここを選んでいなかったなら君は私に勝っていた。それで十分だろう」
「!シャナ・・あなたひょっとして」
「そう彼女はわざと手を抜いているのだよ。本気を出せば勝負は実際一瞬でつく。そうなると七三で私のほうが不利だがね。だがこのような建物での戦いは他にも犠牲者が出る可能性があるから本気が出せないのだ」
「それでも・・・まだ」
「残念ながらタイムオーバーだ」
「?」
「あれを見てみるといい」
カーレルが指した空には何か黒い粒粒が見えている。
「あれは・・悪魔」
「そう、おそらく北東と北西の山にも潜んでいる。こうなると戦いではないな。私は退散するとしよう。ゼフィール殿からは他にも使命を受けているのでね。君達はそうそうに引き上げたほうが懸命だろう」
「待て、カーレルさん、何故自分たちが優勢なのに逃げる」
「言ったろう、私には皇帝陛下からの勅命があるんだ。たとえこの援軍が来なくても私は逃げ出しているよ」
「今・・援軍って」
「カーレルさん、やっぱりゼフィールさんは・・・」
「私は彼の意見に賛同してここまでやってきた。そしてこれからもそうするだろう。次に合うことがあればおそらくこの戦争は終わっているはずだ」
そう言うと彼は宝石を取り出しそれを掲げてみせる。
途端、彼の周りが光り、そして彼の姿はどこかへと消えていた。

「フォーブス兄さんでしょう」
アリオーンは魔術師達を救った黒装束の人物に問いかける。その一言にリチャードが驚く。
「フォーブス、レナード皇帝から生きている可能性を教えられはしたが、本当にお前なのか」
「・・・・」
黒装束の男は黙って顔の頭巾をはぎ取る。その下にはアリオーンの予想通りの顔があった。輪郭はアリオーンにそっくりだが目は細く髪は黒い。
「確かに私はフォーブスだ。だが、私はただ、兄の肉体を使って悪事を働く輩が許せぬだけ」
そう言うとフォーブスは女魔術師のほうを向く。
「このあいだ邪魔をしたのもあなたね。あなたがエドワードの弟だと考えれば、剣を数度交えただけで正体を見破ったのも頷ける」
「貴様達邪教の存在が我々の一番のターゲットだったからな」
フォーブスは手を正面に突き出し、模様を描く。そして呪文を口にしはじめた。
「遅い」
魔術師は呪文も、印も使わずにフォーブスに火球を投げつける。が、フォーブスは火球を右手に持った剣で両断する。
「私は正規の剣術指導も受けている。この程度の火球を崩すなどわけない」
呪文を唱え終えたフォーブスはそう呟き、左手を突き出す。その手に導かれるように無数の火球が魔術師めがけて飛んでゆく。
魔術師はその火球を潰しながらフォーブスに火球を投げ続ける。
その傍らでは黒剣士に向かってファーン、ギルバート、リチャード、そしていつの間にかしゃしゃり出てきたアリオーンが二人一組で交代しながら切りかかってゆく。

「まずくなってきたな」
北側に弓兵を配置しながらロックスリーは呟く。敵が、北東と北西の山脈からも出てきたのだ。しかも空を飛ぶ。確かにベム砦は難攻不落とはいえ正面から来ている部隊と併せればかなりの数になる空中部隊にどれだけ対抗できるか疑問の残るところだ。
「いたいた、あなたが確か北側の敵のに対する指揮をまかされているんですね」
「君は・・・シャルロット将軍が連れてきたヘルという少女だな。ここは危険だ、できれば南側に避難した方がいい」
「私は用が会ってきたんですよ」
「用?私にか」
「ええ、北東の部隊は私が何とかしますから正面と北東の部隊をお願いします」
「???なに、」
「私の姿を見ても攻撃しないで下さいね」
そう言うとヘルの服の背中が破ける音がする。そして背中からは一対の緑色をした羽が生えていた。その皮膚には鱗もついている。
「君は・・魔族か」
「人は私のことをそう呼びますけど、私にはさっきの姿でいるほうが楽なんです。もちろんいろんな意味で。私はまだそんなに強くないからみんなに姿を見せるなって言われていたんですけど、状況が状況ですから」
「わかった君の援護はシェイド将軍の部隊に任せよう。彼らは君のことを知っているのだろう」
「ええ、ありがとうございます」
そう言うとヘルは即座に翼を広げ、空中へ飛び立ってゆく。その前にはもうかなりの距離まで接近してきたハーピー部隊がいる。
「本当は禁止されているんだけど」
そう言うとヘルは自らの右目に力を込める。そして右目が光りその光を浴びたハーピーは次々と落下していく。ヘルの右目に存在する邪眼の能力だ。目が見えない彼女は標的に焦点を合わすのが大変だが、今回のように敵が大勢の場合はそう苦労することはない。そしてしばらくすると彼女の後ろから発射されている矢が次々と邪眼に捕まらなかったハーピーを射抜いてゆく。そして彼女はハーピー部隊の後ろにいる悪魔部隊に目を向ける。

「はやく悪魔部隊の迎撃の援護に行かないと」
「せめて止血くらいはしなさいよね」
屋上でシャルロットとファナはシャルロットの怪我の手当をしている。
「あの人、手加減していたのねえ。ほとんどが皮一枚切っただけよ・・・ねえ、何かいない」
「・・・・そこだな」
シャルロットは有無を言わずにウォータージェットを発射する。ウォータージェットはそのまま空を切っただけだが、そこからそう離れてはいない空間から今度は火球が二つ発射される。
シャルロットとファナはすかさずその場所から飛び退く。
「上位悪魔がもう入り込んでいたのか」
シャルロットが舌打ちする。
「上位悪魔などと比べてくれるな。私の誇りが傷つく」
「人の言葉を?」
「アークデーモンクラスか。まさかこんなところに配備されていようとは」
「このことは我らが主、ルシファー様がご命令なさったことだ。あのカーレルという小僧に任せるのは不安だったのでな。案の定、奴は敵前逃亡をしおった」
高らかな笑い声を上げながら姿を現した悪魔に向かって二人はそれぞれの武器を構えるのだった。

空間が歪む。
そこから不意に二人の人物が現れた。ここはベム砦の南部と北部をわける巨大な橋の上だ。
「っと、少し座標がずれましたか」
「どうせ戦闘がはじまっているんならどこにつこうと同じことだ」
「シェイド隊長」
このことを目撃していたヴォルストの部下が駆けてくる。
「状況はどうなっている」
「は、只今南部の制圧はほぼ終わり、現在アリオーン王子をはじめとする部隊が北部の制圧に乗り出していますが、4階付近で魔術師と剣士の二人に足止めされており、まだ完全に制圧できておりません。砦の北側からはハーピーと悪魔の混成部隊が空から来ており一部がすでに砦に攻撃を仕掛けています。またゴブリンやコボルドの部隊が陸からこちらに向かっているとの報告もあります。陸の魔物にはアラディーの騎兵が、空の敵にはロックスリー殿の部隊が中心になっており、ヘル嬢も羽を使い空の敵の迎撃を行っています」
「シャルロットはどうした?」
「カーレル殿と戦われるため南側の屋上へ行ったということですが、未だ連絡がありません」
「ヘルが本性を現して戦っているのか・・・レイチェル、そいつを使ってくれ」
ヴォルストは空を見上げながらせっぱ詰まった声で言う。レイチェルはその言葉の意味するところを理解した。南側の屋上から人が落ちようとしているのだ。
「ルナ、行きなさい」
レイチェルの命令と共に何かが落下している人物に向かう。その物体はすぐに一対の羽になりちょうど足を踏み外したばかりの人物の背中に装着され体の落下を防ぐ。
「あっちにアークデーモンか。レイチェルお前は北側の援護に向かってくれ。使い方はわかっているのだろう」
「ヴォルストさんは」
「悪魔退治をしてくる。それが終わったらはえ叩きだ」
「・・・・わかりました、御武運を」
「まあ死なない程度に戦うさ」
レイチェルが落下しそうになった人物を橋の上に降ろし、彼を見たときにはすでに眼が赤くなっていた。
「じゃあ、私は行きます」
レイチェルは北側に向かって駆けてゆく。ヴォルストはレイチェルに保護された人物に近づく。
「ファナ王女」
「シェイド将軍、いつここに。それよりものすごく強い悪魔が屋上に、あれじゃあシャルロット将軍だってそう持ちませんよ」
「そうですか。じゃあ助けに行くとしましょう」
ヴォルストはそれだけ言うと猛スピードで砦の上へ向かって飛んでゆく。ファナもスピードは出ないが宙を飛んでその後を追う。

「はあっ」
シャルロットの周りから数本のウォータージェットが発射される。が、アークデーモンはそれを避けずに水の通路を曲げてしまう。
「どうした仲間を突き落とされたせいで焦っているのか」
先程は二人がかりで正面から戦って一気に追いつめられてファナは突き落とされてしまった。助けようにもこいつが邪魔で助けられなかったのだ。ここはかなりの高さがある。ファナが落下の途中に見事何かの魔法をかけて助かったのに期待するしかない。
そして目の前の悪魔をどうやって倒すか考えはじめたとき、後ろから声が聞こえる。
「調子にのるなあっ」
声と共にシャルロットの後ろから一つの槍が悪魔に向かって投げられる。悪魔は余裕で避けた、はずだった。
「・・・馬鹿な」
確かに槍は悪魔の横の石畳に転がっているのに悪魔の体には一つの傷があった。
「・・・そこか」
余裕の表情が消えた悪魔は突如現れた人影に火球を投げつけるが、それが人影に到達すると共にその人影は消えてなくなってしまう。
「へえ、アークデーモンって言っても大したことないんだね」
その声は悪魔のそばから聞こえてくる。慌てて腕を振りかぶるがその瞬間に剣が一閃して悪魔の腕を傷つける。
次に悪魔が確認したときその男はすでにシャルロットの横に槍を持って立っていた。
「何でお前がその槍を持っている」
「俺はあの人のところに行っていたんだ。そしたらアークデーモンがいるからこいつを持っていけって」
そう言ってその男、ヴォルストはゲイ・ボルグの槍をシャルロットに渡す。
「そういえば、ファナはどうなったの?」
「ここよー」
シャルロットの言葉にやっと上がってきたファナが言う。
「よかった、ヴォルスト行くわよ」
「さっさと片づけて欲しいもんだ。ヘルにもしものことがあったら私は師匠に殺される」
そう言って二人は同時に駆け出していく
シャナの槍がふるわれる度に悪魔はそのことごとくをかわしてみせる。が、かわしているはずなのに次々に傷が増えてゆく。慌てて反撃しようとすると。
「そんなに不思議かい」
からかうような口調で背後に回ったヴォルストが切りつける。
さらにファナが光の矢を連続で繰り出し少しづつ敵を弱らせてゆく。
ついに耐えかねた悪魔が一気に跳躍して間合いを取る。
「その槍、かなりの魔法がかかっているな」
「そう言うこと、私達はこれくらいの魔力を持つ武器をウェポンと呼んで対人間には決して使わないようにしているわ」
「なるほどな」
「シャナ、気を付けろ」
ヴォルストが警告したときにはすでに遅く、悪魔は一気に間合いを詰め、油断していたシャルロットに襲いかかる。すかさずヴォルストがフォローにまわるが、そのせいでシャルロットは槍が振るえず難儀していたところへ、悪魔の強烈な一撃が篭手をはじく。シャルロットがしまったと思ったときにはすでにゲイ・ボルグの槍は悪魔によって奪われてしまった。
「ヴォルスト、あんたがよけいなことするから、ゲイ・ボルグが奪われちゃったじゃないの」
「私はお前の油断をフォローしようとしてだな」
「うるさい、あんたは死んでもあの槍を取り返しなさい」
「てめえ、火眼金睛だって万能じゃないんだ。ウェポンも無しにアークデーモンと一騎打ちをやれって言うのか?それは俺に死ねって言っているようなもんだ」
「そう言うせりふはやってみてから言いなさい」
「はっはっは、仲間割れは見苦しいぞ」
「お前が悪の元凶だろ」
そう言ってヴォルストは剣を構える。そして一気に突っ込んでゆく。
「ふん芸のない奴だ」
悪魔の繰り出した槍をヴォルストが避ける、が、やはりヴォルストの体に傷が・・・いや、ヴォルストの体はその瞬間揺らめきながら消えていた。
「何度も同じ手に引っかかるなんてお前こそ芸がない」
いつの間にか後ろにまわったヴォルストが自分の幻影を倒していい気になっている悪魔の腕に攻撃する。さらにカマイタチでずたずたにしながらゲイ・ボルグを取り戻そうとするが、触れた瞬間に手のひらにやけどを負ってしまい取り損なってしまう。
「何やってんのよ」
手ぶらで戻ってきたヴォルストをシャルロットが叱りつける。
「ちょっと二人とも喧嘩なんてしてないで」
ファナは笑いながら襲ってきた悪魔の攻撃を必死で避けている。ゲイ・ボルグの見えない攻撃を恐れて大きくかわしているためにすぐさま隅に追いつめられる。
ヴォルストはそれを聞いて再びゲイ・ボルグ奪回のために突撃する。
が、途中で悪魔の魔法によって動きを止められてしまう。
「そうそう好きにはさせんぞ。さっさと死ね」
その言葉と共に一気に床が崩れヴォルストは下へとたたき込まれてゆく。おそらく音からして一階まで落ちただろう。
「まずは一人、これで二人目だ」
そう言って追いつめたファナに槍を繰り出そうとしたとき、驚いたことに今まで逃げてばかりだったファナが反撃に転じた。すかさずゲイ・ボルグで払おうとするがいつの間にか肝心の槍が手から消えている。そしていつの間にかファナの剣は輝きをともなっている。今度は手で払おうとするが、振り上げた手をシャルロットの手に戻ったゲイ・ボルグが貫く。
「何、いつの間に槍を取り戻した」
そう言いながら悪魔は自分の傷を治してゆく。上位悪魔より下は持っていない治癒の能力だ。
「さっきヴォルストが取り戻してくれたんだ。そう、お前が勝手に自分の魔法で得意になっている隙にね。別に直接触れて取り戻さないといけないというルールはなかっただろう。それに貴様がこいつに一瞬で掛けた呪いもちゃんと解除してあった。それにファナの武器を強化したのもあいつだよ」
「馬鹿な、私は自らの周りに結界をはっているんだぞ。それを飛び越えて槍を貴様に戻すなど」
「簡単なことよ、ヴォルストの魔力があなたより高かったなら」
そう言いながら二人は悪魔を追いつめる。今度は悪魔は空に逃げた。
「だが奴は無事ではおるまい。おまえ達二人で私に勝てると思っているのか」
「勝てると思うな」
いつの間にか悪魔と同じ高さまで浮遊していたヴォルストが言う。彼の服はボロボロで所々には血もついているがとりあえず止血だけはしたようで目立った傷はない。
「貴様、まだそのような力が」
「もう腕も足も打撲で自力では動けないな。何カ所か骨折もしてるだろう。だが魔法なら使えるぞ。けど俺はお前の相手をしている暇はない。だが、主義の問題でな、仕返しはさせてもらおう」
ヴォルストのその言葉と共に悪魔は砦の外に向けて吹っ飛ばされてゆく。
「じゃあ後は頼むぞ」
ヴォルストはそう言うとファナとシャナの二人を自分がぶっ飛ばした悪魔の場所へと転移させる。
「後ははえ叩きだ」
ヴォルストは目に見えて増えてきたハーピーと下位悪魔の集団に向かって突っ込んでいく。

砦北部の4階では何とか光明が見えてきていた。
さしものエラード王国第一王子エドワードの肉体を持った黒剣士も、アリオーン、リチャード、ファーン、ギルバートの四人の波状攻撃によって追いつめられていったのだ。
黒剣士を操っている女魔術師もフォーブスとの戦いのせいで黒剣士の援護ができない。最も女魔術師は強力な魔法を唱えるのに印と詠唱が必要なフォーブスに対していささか優勢に戦いをすすめてはいたが。
リチャードがはじかれたところをアリオーンがフォローし後ろからファーンが足払いを掛けて黒剣士の体勢を崩す。後ろへ振り返った黒剣士をさらにアリオーンが切りかかり、横からギルバートが頭を殴りつける。
そしてついにリチャードの剣が黒剣士の鎧を貫いた。
すかさずアリオーンの剣が首をはねる。
「やった?」
「さっさとこいつの顔を見せてもら・・・」
ギルバートがそう言い掛けたところで黒剣士だったものは砂に変わってしまう。
「なんだと、これは、あれはエドワードのゾンビか何かだと思っていたが」
リチャードが驚いてその砂を調べはじめる。ギルバートとアリオーンはフォーブスの援護に向かう。
「もう止めろ、黒剣士は俺達が倒した、お前に勝ち目はない」
フォーブスを追いつめていた魔術師は別に焦った様子もなく答える。
「確かに私一人でここにいる全員を相手にするのはちょっと無理ね」
そう言いながらフォーブスにカマイタチを放ち、ギルバートとアリオーン、それに勢いづいた連合軍の兵士を火柱で足止めする。そうして稼いだ一瞬の時間の間に短い呪文を唱えると、さっき倒したはずの黒剣士が今度は十体現れる。
「私を生け捕りにしようと後回しにしたのがまずかったわね。でも私が本気を出した以上あなた方の部隊が大損害を被るのは確実ね。下手をすれば全滅もするわよ」
黒剣士の死によって勢いづいた兵達も思わず唖然としている。
「さあ、フォーブス王子、続きをやりましょうか」
魔術師はフォーブスに向き直る。
フォーブスにも焦りの色が出始めている。そして十体の黒剣士が動き始める。
「アリオーン王子、あんたは退いた方がいい」
「馬鹿言うな、そんなことができるか」
「だがこれはかなり絶望的な戦いだ」
黒剣士の群が一歩進む度に、周りを包囲している連合軍が兵士が一歩下がる。

ヘルはほとんど孤軍奮闘の状態だった。なにしろ空を飛ぶ魔物と対等に空中戦を演じられる戦士はほとんどいない。シェイドとシャルロットの部隊の何人かが協力してくれたが、すでに魔力がつきて今は砦の兵からの援護射撃があるのみだ。
すでに敵は砦にとりついて散開しておりヘルの邪眼は使える状態ではない。彼女はハーピーは弓兵に任せて、弓でしとめるのが難しい悪魔と戦っている。
しかし、下位悪魔とて火球の一発ぐらいでは死んでくれない。そう数が多くないのが救いだが、このままでは敵が砦の内部への侵入することも考えなくてはいけない。
ロックスリーの部隊もおそらくハーピー部隊は撃退して悪魔に頭を悩ませている頃だろう。
このままでは正面から襲ってくる部隊に有効な対処手段がうてない。正面にも弓兵がいるはずだが、敵の数はヘルとロックスリーの部隊が相手にしている敵の倍以上はいるはずだ。

ベム砦の戦いはクライマックスを迎えようとしている。

 

前へ  戻る  次へ