3:森の激戦
ギルバートはその日の朝っぱらから地獄を見せられた。
心地よく眠っていたところへヴォルストがいつものまずいやつに辛さを加えた強烈なものを飲ませてきたのだ。それを口にしたとたんギルバートはさっと寝床から離れ一番近くにある井戸へまっしぐらに行き次々に水を飲み始める。彼はすでに経験から吐けば同じ量の奴をもう一度飲まされると理解していた。
「よお、目がぱっちり覚めただろう」
「普通に起こすだけでよかっただろう」
ギルバートは文句を言いながら周りを見渡す。辺りはまだ薄暗い。
「おいおい、これから俺達はいくんだぜ。ばっちし目を覚ませておかないとダメだろう。それにお前だけじゃない。俺に同行するメンバー全員が飲んでいる。俺も含めてな」
「お前そんなんでよく隊を離反するものがあらわれないな」
「ふん、さっさと準備しろ。できるだけ早くこれから裏側までいくんだからな」
ギルバートが準備を終えるとすでにヴォルストの黒装束の部隊は全員集まっている。ヴォルストは黒装束ではなくいつものゆったりとした白い服だ。もっともその裏に多くの短剣を仕込んであるだろうし、今回は何やらいつもよりも多くの道具を用意しているようだ。
「我々は君達かアリオーンのどちらかが潜入できた様子が見えたら突入する。これでいいんだな」
リチャードが念を押す。
「了解です」
「王子はどうしたんです」
ギルバートはアリオーンとして呼ぶときには敬語を心がけている。
「まだ寝ているよ、昨日ロウィーナと昔話に興じていたようだったからな」
「しくじるなよ」
シャナがヴォルストに厳しくいう。
「了解。こんなところじゃ死ねませんよ。まだ妹の花嫁姿もみていないんだからな」
ヴォルストがそう言った瞬間その首もとに槍の穂先が突きつけられる。
「何かよけいなことを言ったか」
シャナは静かに問う。
「ん、脅迫はいけないな。俺はただ平和を望んでいるだけだよ」
「勝手に言ってろ」
そう言ってシャナはさっさとその場を後にする。
ヴォルスト達は馬に乗って城を大きく迂回している。城の城壁にいる兵士に気づかれないためだ。こうして丘の裏側から森の中へ入り抜け穴を通るのが今回の彼らがとる作戦だった。
森の入り口で馬を降り手荷物を持って森をしばらく行ったところでヴォルストの、正確にはシェイドの部下が彼にそっと耳打ちする。
「ギル、散開するぞ」
ヴォルストは報告を受けるとギルバートにそっと告げる。
「え、」
「散」
ヴォルストの声と同時に周りの兵士は森の木々の中に散開する。ギルバートは半ばヴォルストに引きずられて木の陰に隠れる。
「あれ、ヴォルストさーん」
彼らがやってきた方向から聞き覚えのある声が聞こえる。
「馬鹿が、なんでやってきたんだ」
ヴォルストが現れたヘルを叱りつける。
「いいじゃないですか」
「シャナも止めておけって言っていただろう、まったく」
「それよりどうやってきたんだ、後を付けられている気配はなかったぞ」
「俺達が森に着いた頃を見計らって森に向かって転移してきたのだろうよ。自分の身は自分で守れよ。全員前進」
ヴォルストの号令で徐々に集まりながら彼らは再び森の中を進む。
森に入って30分ほどたったころ・・・
「ヴォルスト、まだか」
「そろそろだな」
「お前その背中の長い得物はなんなんだ?」
「ああ、忘れていた」
そう言いながらヴォルストは髪の毛の色を変える。
「????質問の答えになっていないぞ」
「これで声を変えれば完璧だろう」
そう言ったヴォルストの声は高くなっている。ギルバートはその声に該当する人物を知っていた。
「後でばれたらシャナさんに怒られるぜ」
「お前とヘルがいわなきゃ大丈夫だよ。俺の部下は口が堅いから。それにこうしておいたほうがこちらが本命に見せやすい。まあお前をアリオーンにみせるのは無理かもしれんが・・・なんなら髪の色を変えておいてやろうか」
「いらねえよ。そんなんでごまかせる敵がいるのか」
「さあな」
「ヴォルストさん・・・」
今まで黙っていたヘルがヴォルストに近づいてくる。
「どうしたヘル、敵か」
ヴォルストの問いかけにヘルは頷いてみせる。
「敵・・・俺にはわからないぜ」
「ヘルは目が見えない分、他の感覚でものを感じているんだ。おそらく間違いない・・後少しだ、ペースを上げるぞ」
ヴォルストは後ろの部隊に呼びかける。これだけで彼らは状態を察したようだ。そして彼らは実際にペースを上げて前進していく。
「ヘル、俺から離れるなよ・・・・散!」
ヴォルストが号令するとその直後にヴォルストの部隊は散開する。そしてそこには剣を抜いた敵が飛び込んでくる。
ギルバートは襲いかかってきた敵の剣を腕甲でかわしながら敵に殴りかかる。
が、その一撃はかわされ敵はすぐに距離をとったところに身構える。
ヴォルストはヘルに襲いかかってきた敵の攻撃を右手の腕甲で受けとめ、自分自身に切りかかってきた敵に背中の武器を取って牽制する。
「ガキをかばいつつ俺の攻撃をかわすとは、さすがは噂に名高いシャルロット将軍、面白い戦いになりそうだ。だが、完全にはかわしきれなかったようだな」
ヴォルストの左の二の腕の服が切れほんの少し剣がかすっていたようだ。
突然ヴォルストはその場に崩れ落ちる。
「私の部隊の者の武器には全て特製の毒が塗ってある。死ぬほどではないが即効性では勝るものはない毒だ」
初老に入りかけているだろうと思われる男は笑いながらヴォルストに歩み寄る。
「ヴォルストさん」
ヘルは助けに行こうとするが敵の牽制のせいで近づけない。それはギルバートにしても同じだった。
「やはり女か、この程度の毒で動けないようになるとはな。もっとも普通の勝負でも負けるつもりはないが、これでも忙しいのでな」
そう言って男は剣を振り上げる。
カシャ!
突然鎖同士をこすり合わせたような音がする。
倒れていたはずのヴォルストが涼しい顔をして、歩み寄ってきた男の胴に下突きを入れていた。さっきのはヴォルストの腕甲と敵の鎖帷子がふれあった音だったのだ。
すかさず落としたふりをしていた長い武器を拾って攻撃しようとするが敵はすでにかなりの距離をとっている。が、腹を押さえておりヴォルストの一撃はかなりきいたようだ。
「き、貴様、何故我々の武器に毒が仕込んであると知った」
「そんなの知らないよ。けど戦闘中、例えば持病の心臓病で倒れるのと、敵の毒を受けて倒れることの違いがお前にはつくか。たとえおまえ達の武器に毒が仕込んでなくても私が倒れた言い訳はいくらでも作れる。私がちょっと倒れただけでお前は自分の部隊の秘密を漏らしてしまったのだよ。かなりリーダーとしての資質に問題があるのではないか」
隣で戦いながらこれを聞いていたギルバートは思わず吹き出しそうだった。ヴォルストの言葉遣いが面白かったのだ。
「それを知ったところでお前等は我々の武器を恐れ満足に戦え無いだけだ」
「ではこう言おう。北バーミアン帝国シェイド将軍の部隊全員に告ぐ、敵の毒は大したことはない。少々かすったぐらいで気にするな」
ヴォルストは剣戟が響く森の中に向かって叫んでいる。それと同時にヴォルストは声と髪の色を元に戻している。
「シ、シェイドだと・・・ふ、ちょうどいい、影で戦う者同士として戦うのも悪くはない。だが貴様の部下が我らの毒刃に倒れればそれは貴様のせいだぞ」
「心配するな、お前等のちんけな毒は俺の部隊には通用しない」
「おい、ヴォルスト、俺にその毒が通用しないって保証は無いだろう」
「お前が今朝飲んだ特製ジュースは今日1日の間一般的な毒を中和してくれる、心配するなこいつらが使ってる毒も中和してくれる。毒って言うのはな、こういうのを言うんだよ」
ヴォルストは言いながら素早く右の腕甲に仕込まれた短剣を抜いてヘルと戦っている一人を攻撃する。素早く避けられるが腕にかすかに傷が付き敵はすぐに苦しみ始めて動かなくなる。
「ヘル、お前は少し離れて近づく敵だけに魔法をぶつけて自分の身を守っていろ」
「き、貴様あ」
「逆上したかい。隊長殿」
ヴォルストは長い武器の包みを破る。それには剣の刃が両端につけられた奇妙な武器が存在している。
「そんな武器でこのガッドの相手をしようとは片腹痛いわ」
そう言うと二人は間合いを計り合っていく。
「貴様なかなかやるじゃないか、名前を聞いておいてやる」
「人に名前を尋ねるときはまず自分からってね」
そう言いながらギルバート敵に向かって踏み込むが、敵は長めの曲刀を使い器用にこちらとの間合いを取っている。敵の攻撃も何度も腕甲を使ってはずしているが、それでも敵は姿勢を崩さずにすぐに体制を整えて距離を保とうとするため、お互いに攻撃らしいものは何一つかすりもしていなかった。
「俺はこのヴェルファ傭兵団の副隊長ボアズ。貴様の名は」
「俺は元アラディー国親衛隊のギルバート」
「あれ、お前現親衛隊隊長じゃなかったけか」
「はああ」
横でガッドの攻撃をかわしながらヴォルストが突っ込む。
「ふん黙ってそいつの相手をしていろ。俺はそれを受理した覚えはない」
「ああ、アラディーと言えばゲリラ戦が得意な民族だったな」
その侮辱にはこたえずにギルバートは再び敵に向けて踏み込みを開始する。敵が剣を使って間合いを取ろうと剣をこちらに向けてきた瞬間、ギルバートは向けられた剣に向かって掌心雷を繰り出す。
「ぐおお」
ボアズは苦しみながらもその手に持った剣を放しはしなかった。ギルバートは敵の体勢が崩れたのを見て再び敵に向かっていく。
が、彼は反射的に体を横に反らす。そのときにはギルバートの髪の毛が数本宙に舞っている。
「至近距離であんなものを出してくるとはな。だが、俺に雷はあまり通用しないんだ」
ボアズの手が動き出すのを見てギルバートは反射的に短剣を投げる。ギルバートに向かってきた雷は短剣に吸い寄せられていく。かつてヴォルストがアラディーで悪魔に対してつかった手だ。
「やるじゃないか。だがな」
「そこか」
ギルバートは敵の魔力が集中している場所に掌心雷を向けて敵の雷を相殺していく。
「ならこいつでどうだ」
ボアズの雷が今度は二ヶ所から発せられる。ギルバートはそのうちの一ヶ所を見落としていたため。左腕に食らってしまう。
「ぐああ」
「これでトドメだ」
そう言いながらボアズは刀に雷を帯電させて切りかかってくる。これではたとえ腕甲で受けたとしても雷の一撃を食らうことになるだろう。
ギルバートはそれを避けもせずに負傷している左手で受けとめる。ギルバートは激痛と共に肉の焼ける臭いを感じる。
チン!
乾いた音と共にギルバートの左手の気の一撃でボアズの剣が折れていた。
呆然としているボアズにギルバートはつめより右手の気の攻撃でボアズの鳩尾を攻撃する。
ボアズはうめき声と共にその場に倒れ伏す。たとえ気がついてもしばらくは動けないだろうし、肋骨が何本か折れているだろうから満足に運動するのは数日は無理だろう。
「かった・・のか」
ギルバートはほっとしながらも激痛の走る左腕に回復魔法をかけ始める。
ヴォルストとガッドは別のところで戦い始めたようだ。
ヴォルストはその奇妙な武器で敵の攻撃を受けるよりももっぱら敵の攻撃をかわし、避けられないときは風の魔法で敵を牽制していた。両端に刃がついていると下手をすると自分が傷つきかねないからだ。
「貴様、いつまでそのようなふざけた武器を使っている。腰の剣を抜け」
ガッドはいらだちながら攻撃する。彼が巻き上げた砂がヴォルストを覆い視界を遮るがそれでもガッドの攻撃は易々とかわされる。
今度は砂だけではなくかなり大きな石までもがヴォルストを包み込む。すかさずガッドが攻撃を掛ける。手で顔をかばっていたヴォルストはそのせいで動きが一瞬遅れる。
ガッドは今度こそ確実にしとめたと思った
が、ガッドの剣がヴォルストの頭に触れた瞬間ガッドの剣は滑るようにヴォルストの頭をかすめていく。
「そのターバン、ただの飾りでは無いな」
「よく一発で見抜いたな。確かにこのターバンには鎖が仕込んである。鎖帷子の代わりってわけだ」
「ふん、ちょこまかと動きまわるのであれば動けないようにしてくれるわ」
そう言うとガッドは目を見開く。そのとたんにヴォルストは盛り上がってきた土に膝まで覆われてしまう。
「その土を崩すことはできんぞ。より強い魔力でうち崩す以外にはな。貴様の風で俺の土が破れるかな。最も俺は黙って観戦しているつもりはないが」
ガッドは動けないヴォルストの後ろに回り込み、切り込んでいく。ヴォルストはそれに対して例の妙な剣を地面に刺すとターバンの端を握りしめ、一気に引っ張る。そしてほどけたターバンを鞭のように扱って後ろのガッドに向けて攻撃する。
「貴様という奴はどこまで言っても冷静な奴だ。だがもう隠している武器は短剣ぐらいだろう。おとなしくしたらどうだ」
「ちょっと時間をくれないか。ターバンをほどいたからな。髪を束ねておきたい」
ガッドの声を半ば無視するようにしてヴォルストは勝手なことを言う。
「ふざけるな」
本当に髪を束ねだしたヴォルストを見てガッドは怒って切りかかる。
が、ヴォルストは捕らえられているはずの足をいとも簡単に動かしてその攻撃を避ける。
「なんだと」
ガッドは避けた後のヴォルストの姿を見てもう一度驚いた。ヴォルストが腰の曲刀を抜いていたのだ。
「ようやく本気になったか。シェイド将軍、そうでなくては張り合いがない」
ガッドは剣を構えると彼の周りの地面が割れ石や砂が彼の剣の周りを取り囲む。彼が動き出すと同時にその石や砂はヴォルストに向けて動き出す。彼はそれを避けるがその先にはガッドが剣を振りかざしている。舌打ちをしながら彼は自らの剣で受けとめるが突然背中に衝撃が走る。
ヴォルストの力がゆるんだのを見てガッドは一気に剣を押す。ヴォルストは見事な裁き方で何とかこれをやり過ごす。
「土くれ・・か」
「そうだ、私が一度動かした土は途中で動きを変えることもできる。つまり貴様は一度に二つの相手をしなければならんわけだ。しかも一方は決して倒れることがない。どうする」
ガッドが言い終わった瞬間にヴォルストは行動を起こしていた。それはガッドにはほとんど見えなかった。突然ヴォルストがガッドの斜め後ろまで移動していたのだ。それからの彼の攻撃をガッドはかろうじて受けとめることができた。
「・・・流石だ、シェイド将軍。だが」
ガッドのせりふが終わらないうちにヴォルストは切りかかる。
「なめるな」
打ち合うこと数合、ガッドがヴォルストをはねとばす。
「人の話は最後まで聞いたらどうだ」
「戦いの最中に交わされる言葉は単調だから嫌いなんだ。マクシミリアン、終わったのか」
ヴォルストが言うと一人が木の陰から出てくる。
「はっ、おおかたの敵は全て倒しました。なお我がほうには重傷が二名おりますが、死者は出ておりません」
「そう言うことだ、あんた達の負けだよ。ガッドとか言ったな。われわれはこれからエラード・パレスへ進撃するんだ。邪魔せずに生きているものをかき集めて撤退するもよし、俺との決着を付けたいというのならそれにもこたえよう」
「そうか、では一気に全力で行かせてもらうぞ」
そう言うとガッドは何事かぶつぶつと唱え始める。それが終わってガッドが目を見開いたとたん、攻撃してくる。
さっきとスピードもパワーも対して変わるわけではない。だがその気力が圧倒的に違っていた。ヴォルストはガッドの攻撃を懸命に防ぐが押されていく。
「自己暗示か。マクシミリアンちょっと離れていろ」
そう言うとヴォルストは剣を振る。その剣圧に載せられた風がガッドのの横をかすめる。
治療中の左手を抑えながらこの戦いを見ていたギルバートは二年前に感じた力を感じていた。やはりヴォルストはシェイドだった。ギルバートはそう確信した。
真正面からヴォルストを見ていたガッドは驚いていた。目の前の自分と戦っている敵の雰囲気ががらりと変わったからだ。それだけではない、彼の目が・・・
眼球は赤く、そして瞳は金色に輝いていた。
お互いに戦いの気持ちを改めた二人はまるで舞いでも舞うかのように攻撃を繰り返す。数十回打ち合った末にもともと力の弱いヴォルストがついにバランスを崩す。
ガッドは剣を構えて突進する。ヴォルストは握っていた剣のつかに相手の剣を引っかけて自分の剣を中に放り投げながら攻撃をやり過ごす。そして置いていた長い奇妙な武器を手に取る。長い武器を構えるとこちらへ攻撃を仕掛けようとしているガッドめがけて振り上げる。
そのとたん引き起こされた風の渦が龍の姿を描いてガッドを捕らえ木の幹にたたきつける。ガッドはそのまま気を失ってしまう。
「終わったな、ギルバート、こそこそ見ていないでもっと近くに来たらどうだ」
「やっぱりお前はシェイドだったんだな」
「まだ疑っていたのか」
「それよりヴォルストさん大丈夫ですか。あんなに力を出してしまって」
「まずいかな・・・とりあえずちょっと休みたいんだが、そうも言ってられないな」
「隊長は休んでいて下さい。城の中は我々が混乱させます」
「そうかい、じゃあとりあえず手当の終わったものから5、6人ずつ潜入しろ。重傷の二名は応急処置の後に森の外に退避。以上だ」
それだけ言うとヴォルストは眠ってしまう。
「どうしたんだ、こいつ」
「ヴォルストさんが呪われているのはご存じでしょう。多分さっきは十分間以上本気を出していたから今日はこれ以上無茶はさせられませんね。それよりけが人の手当をしないと。ギルバートさんも回復魔法が使えるんなら手伝って下さい」
「ああ、それよりさっきヴォルストの顔に変化がなかったか?」
「それはそのうちヴォルストさんが説明してくれますよ」
そう言うとヘルは怪我をしている黒装束の男達に治癒の魔法をかけていく。ギルバートも随分ましになった左手の治療を中断してけが人に魔法をかけていく。
しばらくすると治療の終わった者達が五つの部隊に別れて通路へと入っていく。
「さて・・俺達も行くか」
「ヴォルストさんはどうするんですか?」
「俺がおぶっていくさ」
「ではこちらです」
そう言うとギルバートはヴォルストを背負って案内のために一人残っていたヴォルストの部下と共に通路へと入っていく。