第三章:聖国の地で
1:疫病のエラード(ほんとは疫病聖国とかしたかったんですけどそれじゃあある小説のパクリになるんで)
「レジスタンスのフォルケル様達ですな」
海賊船から出てきた男が恭しげに言う。
「そうだけど一体あいつはこんなところで何をやらせているの?」
「我々は今から囚人の塔の船を盗むところです」
「じゃあ、囚人の塔で造られた船を略奪しているのは」
「ええ、我々がヴォルスト殿の指揮の元で行っております。あなた方のことは聞いています。ヴォルスト殿はパルメアで待機しておられます」
「そうか、ありがとう。じゃあ、気をつけていってくれ」
海賊船の船長はヴォルストが待っていることを伝えると、さっさと囚人の塔の作業場へと向かっていく。

「シャナさんは知っていたんですか。ヴォルストが囚人の塔を荒らしていることを」
「そりゃ知っていたわよ。ダンガ帝国が海運、海軍力を身につけたら私たちも困るし、あいつも困るからってやり始めたことだもの」
「・・・複雑な気持ちだな。我々の味方であるとはいえ、略奪をするのは」
リチャードが顔をしかめる。
「あら、あなた方だって戦争に勝てば負けた土地の領土をもらうでしょ。結果的には海賊のやることもそれと一緒ですよ。いくら目的をつけてみてもやっている中味はかわりません」
これにはシャナがきぜんとして応えた。
「それは君の故郷のことも含めていっているのかな」
「そのつもりです」
「・・・だがダンガ帝国を倒したあと、彼はそのような横暴をしないのだろうな」
「それはあいつに聞いて下さい。あいつの力は独立して動いてますから」
「・・・パルメアまではどれくらいかね」
「後1日もすればつくでしょう」

次の日の午後、船はパルメアの港に無事到着する。北バーミアン帝国の軍人がいるところが見られるとまずいので、数人の限られたものだけが上陸することになる。
「かわんないねえ。ここは。数カ月前に来たときと一緒だ」
「ほんとだな。あの頃とは随分状況は変わってしまっているが」
「それよりヴォルストはどこで待っているのだ」
「叔父上はあんまりあいつのこと知らないんですね。あいつなら放っておいても向こうから来ますよ。とりあえず宿でも探しましょうか」
「言ってるそばからあいつの使者が来たみたいね」
シャナがこちらに歩いてくる人物を見つける。
「皆さん、ヴォルストさんから話は伺っています。彼は今ちょっと出かけていますので夜にお会いするとの伝言です」
「わかった」
「宿のほうはヴォルストさんがフォルケル殿の名前でとられています」
「どこだ」
「「赤い水晶亭」です」
「わかったご苦労さん」
「ではわたしはこれで」
使者は用件を伝えるとさっさと帰っていく。
「じゃあ、とりあえず宿に入ってから私達だけで情報を集めてみましょうか。ヴォルストがちゃんと仕事していたかどうか」
「そうですね」
シャナの言葉にフォルケルは頷いた

使者が伝えた赤い水晶亭はあまり立派な宿とは言えなかった。中もきれいとはいいがたい状態だったが、すぐにそれが見せかけであることに彼らは気づく。部屋のベッドはちゃんとしていたし、壁が妙に分厚くてちょっとくらいの音などは吸収してしまうようにできているのだ。
「なるほど、いかにもあいつが使いそうなところだ」
「さて、どうする。手分けして聞いたほうが効率はいいがロウィーナ王女とリチャード殿下を放っておくわけにはいかないだろう」
「どういうことだ、シャナ」
「そのまんまですよ。あなた方が単独で行動すれば目立ってしまいます」
「じゃあこの際二つにわけよう。俺とギルとロウィーナ。シャナさんとファナさんと叔父上。これでどうだい」
「そのほうがいいな」
そして彼らは二手に分かれて各々情報収集を開始するのであった。

「全く、なんなんだこの状態は」
宿に帰ってくるなりフォルケルは悪態をつき始める。
「そんなに俺の手際があざやかだったかい」
宿に先に来ていたヴォルストがつぶやく。
「お前、この一ヶ月何してたんだよ」
「まあそこら辺をぶらぶらとね、とりあえずエラード国内の物資の値段を倍に上げておいた。後は・・・一応エラードとパルメアに寄港する船の数を増やしている」
「そんなことじゃなくて、蜂起のほうはどうなっているんだ。街じゃそんな噂ちっとも聞かないぜ」
「まあそう焦りなさんな。実際おまえ達が来る正確な日がわからなかったんだ。だから俺なりに臨機応変に対応できるようにしておいたのさ。物価の値をつり上げておけば不満を持つ民衆はきっかけ一つで立ち上がるだろうし、船を多くしておけば色々都合がいい」
「同志集めはどうなっている」
「そっちはファーン老達がやっている。どうも俺がシェイドと名乗ったとたん締め出しを食らってね。まあ一応は順調にいっているようだがやっこさん達、情報を隠すと言うことを知らなさすぎる。包み隠さず敵に漏れるからある程度の情報操作をしている」
「それで全然蜂起に関する話を聞かなかったのか。で、俺達は次はどうするんだ」
「フォルは城下で人気があるからこのまま船でエラードまで言って民衆と接触してくれ。少しづつ動いてくれよ。で、リチャード殿は」
「わかっている。街道沿いの街で蜂起を呼びかけるのだろう。私はあんまり演説は好きではないのだがな」
「途中でファーン老達が合流すると思います。後は俺が蜂起の情報を国内・そして国外に広げます。問題はパルメアを制圧する兵力がないことですね」
「とりあえずエラードから落とすのか。だがそれだと叔父上は背後から狙われないか?」
「その為に大量の船を用意する。この街の沖合に北帝国の旗を掲げた大型船が十数隻浮かんでみろ。敵の防衛部隊は間違いなくこの街に釘付けだ」
「それだけの兵力があるなら敵が出払った後にここを落とせば」
「その船には船を動かすだけの人員しか載せられない予定なんだ。セヴァーンのほうにかなりの人員を割いているからな。悪いがこればかりはゆずれないからこれ以上の増援は期待しないほうがいい」
「別にもう十分打撃は与えたんでしょう」
「ああ、数カ月は他国に侵攻する余裕はないはずだがやり始めたからには徹底的にやらないとな」
「で、その方法で敵を引きつけている間に北帝国の援軍がエラードに到着するというわけか」
「と、なるとエラードを解放した後は一気にネルスまで侵攻するわけか。解放を喜ぶ時間も無いな」
「ネルスを落とせばカシューラはベム砦を除いてはアラディーとの挟撃ですぐに解放できる。お祝いは完全にエラードを解放してからだな」
「じゃあ早速明日から始めるのか」
「そうだな・・・なら人数を二つに割り振らないと」
「おれのほうには・・・」
「私がリチャード殿下と一緒に行くのはまずいからそっちに行くわ」
「私も多分役に立てないからお兄さまといく」
まずはシャナとロウィーナがフォルケルに付いていく意思を表明する。
「私は護衛を率いてリチャードさんのお供をしましょう。すでに開放された国の王女がいれば民の腰も上がりやすくなるでしょう」
「じゃあ俺も王女に従います。ヴォルスト、お前はどうするんだ」
ファナとギルバートがリチャードに同行を申し出る。
「私も北の人間だ、殿下とは一緒にいけないな」
「私はヴォルストさんと一緒にいく」
フォルケルの方に行くヴォルストにヘルが相乗りする。
「よし、これで決まりだな。ヴォルスト、念のために聞いておくが兵糧のほうは大丈夫なのか」
「ああ、エラードの港にかなりの量を用意しているし、街道沿いの街にいくつか用意してある。殿下が行けばそこの食料をわけてもらえますよ」
「そうか、では準備ができ次第出発だな」
「俺達は明日にでも出発できるよな」
「そうだな」

翌日
ヴォルスト、ヘルを加え、リチャードとファナとギル、そしてアラディーの戦士達をおろした一行はエラードに向かい船出する。
「エラードのほうはどうなっているんだ」
「エラードの政治はもともと腐敗寸前だったんだ。二年前の敗戦がそれを表に出して今じゃ金と力がものを言う悲惨な場所だよ。もっとも、俺はもともとあの街はあんまり好きじゃないんだがな。闘技場の試合なんざ平気で女子供が出される状態だ、たとえクラヌ教信者でもな」
「・・・・それは何とかしないとな。お前はエラードに関しては戦後どの程度関与しているんだ」
「最初は個人的感情を抑えればいい場所だと思ってたんだが、そのうち腐った旧エラードの重臣が台頭して帝国の総督と手を結び始めたんだ。もう貿易以外にはほとんど関与できん。まあ今回の解放は膿を取り出すいい機会だ。なんなら解放後俺が徹底的に排除してやるよ。もちろんお前が許してくれるならだが」
「止めておくよ、お前に任せると後が恐い。だが参考意見を聞くくらいはしよう」
「そのときは真っ先に闘技場をぶっ壊して下さい」
ヘルが急に話に割り込んできてフォルケルが面食らう。
「???」
「こいつは昔闘技場で見せ物として殺されかけていたのさ。そのときに俺が偶然エラードにいてな。助けたわけだ。今でも異教徒の女子供を闘技場で見かければ助けるようにはしているがあんまり派手に慈善活動をやりすぎると向こうが図に乗ってとんでもない値段をふっかけてきやがる。ヘルのアイデアには賛成だ」
「でも確かお二人が初めてあったのって・・・」
ロウィーナが首をかしげる。
「俺が十二歳の時だから今から六年前か」
「そんなときからお金持ちだったんですか」
「まさか、その当時は無名の商人さ。こっちも子供だから俺がかわりに魔物を倒すことで手を打ったんだ。名が上がってからは法外な金額の金をぶんどられるようになったが」
「それに関しては考えておくよ、だが全ては国を開放してからだ。そういえば一般階層の人たちはどうしているんだ」
「結構苦労しているみたいだ。だが誰もあんた達王族のせいにしちゃあいない。実際政治が乱れ始めたのは国としてのエラードが滅んでからだからな」
「そりゃそうですよ、お父さまはあれですばらしい政治家だったんですから」
「実際父さんはよくやっていた、うまいこと重臣達を操って特定の個人に権力を集中させないようにしていたからな」
「それにお前が集めた情報、だろう」
「まあ、お忍びで出かけたときの噂や不満を多少伝えたりはしたな」
「お忍びっていうのは実際城のものにとってで城下の人物にはすぐにばれてたそうじゃないか」
「なんでそこまで調べる必要があるんだ」
「まあ全ては君の国を開放するためだよ」
「そう言って人の過去を調べるのを楽しんでいるんだろう」
「当然だ、でないと面白くない」
さらりと言ってのけるヴォルストにフォルケルはため息をつくことしかできなかった。

数日後
船は無事にフォルケルとロウィーナの故郷エラードに到着する。かつては聖都と呼ばれたこの街も今ではすっかり暗い雰囲気をが立ちこめている。
「二年でよくこれだけかわるものだ。人間の力って奴を痛感させられるな」
港はそこかしこが汚物で汚れており空気が濁っていそうな雰囲気がある。それより驚いたのはファルナを上回るほどの露店が壁際に並んでいるのだ。かつても多少の露店はあったが今ではかつての栄華など見る影もない。
「王女にの体には悪いんじゃないのか」
「そうかもしれないな。だが町中のスラムはもっと悲惨だ、もっとも訪れることはないだろうが。それにいざとなったら俺の薬を飲むか病気でぶっ倒れるか、究極の選択をしてもらうさ」
「ヴォルスト、後で俺ををスラムにも案内してくれ」
「いいのか。まあ確かに貴族共がすんでいる丘の上よりははるかに友好的な連中だから体が丈夫でない奴がいないのならばいいか」
彼らはとりあえずエラードのヴォルストの支店に行く。そこは比較的城のある丘に近く貴族の家が並ぶ高級住宅街の中にある。
「これはこれは、ヴォルスト殿。それに・・・もしやアリオーン殿下ではありませんかな」
「・・・・・・・!ジョージさんかい。久しぶりです」
「殿下が戻ってこられたということはヴォルスト殿、もしかして」
「ああ、近々エラードを解放する戦いが始まるだろうな。この戦いは北バーミアン帝国からの援軍もくる。祖国解放の感慨に浸るのもいいがちゃんと商売をしてくれよ」
「わかっております。ではリチャード殿下が街道を南下しているという噂も本当なのですね」
「ああ、その予定だけど、それにしてもジョージさんがヴォルストのところで働いていたなんて」
「この街の都合上どうしてもクラヌ教徒の代理人を立てておく必要があったからな。それで比較的優秀な彼を雇ったのさ。それよりこの街の状況はどうなっている」
「ひどいものですよ。スラムではまた伝染病が発生しました。これに対する上の反応はスラムを丘の周辺から完全に隔離することだったんです。おかげで下の街全体ですさまじい被害者が出ているとか」
「ヴォルスト、どうにかならないのか」
フォルケルがヴォルストに詰め寄る。
「俺にいうな、俺の商売は慈善事業じゃないんだ」
「だが・・・・」
「これが今の腐った聖都の現状だ」
「ヴォルスト、何とかしろ」
シャナが命令口調で伝えてくる。
「じゃあお前は数千いや数万いるかもしれない病人を全員診きれるのか。そんなことをたった一人でやるのは不可能だよ。しかし街全体に被害が及ぶというのならば作戦に支障をきたすな・・・・」
「何かあるのか」
「一番確実なのは街全体を焼き払うことだ」
「論外だ」
「だが大量の特効薬をつくっている暇も労力もない。効果的なのは街の一部を隔離してそこに病人を次々に押し込めていくことだな」
「それじゃあ被害者を見捨てるのか」
「ちょっと待てよ、上が隔離されているのなら・・・ジョージ、今ここではやっているのはどんな病気だ」
「確か高熱が出た後、数日で体温が下がって体中に腫れ物ができ、最後に再び高熱が出るんだそうです。発病から約一週間で死ぬそうです」
「そうか、なら・・」
ヴォルストは書棚へ向かっていき倉庫の在庫を確かめていく。
「よし、何とかなるか」
「本当か」
「だがこれじゃあ作戦は根本的に変えなくちゃならんな。当然、このことをお前の名前を出して大々的に宣伝する」
「軍が動き出すぞ」
「上の人物が伝染病を恐れている限りは私達が見つかることはないわ」
「肝心の薬はできるのか」
「ああ、集められるだけの人数をかき集めて薬をつくるんだ。幸い特効薬をつくる薬草のうち大量に必要なものはこの辺りに自生している。大部分の市民にこれを採りにいってもらう。で、一部は俺の助手としてまわしてもらう。すでに発病している患者を中心にな、そうすればできた薬を症状の重いもの順に渡すことができる」
「よし、じゃあ早速始めよう」
「薬草はこいつを採ってくるようにいってくれ」
そういうとヴォルストは何種類かの薬草の絵を渡す。
「他にはシャナは現地に直接いって薬草を採りにいっている最中に発病した人を見てくれ。治療方法はわかっているだろう」
「薬学も一通りは修めているから」
「後はジョージ、このことを至急そこら辺へ広める手配を頼む。王子が帰ってきたことも含めてな。残りの人は・・・ヘルとロウィーナ王女は運ばれた薬草が本物かどうか検分して下さい。街の薬師もそこにおこう。こんな派手な作戦は久しぶりだ」
ヴォルストは口に笑みを浮かべながら、次々と指令を与えていく。
「よし、こんなものだな、じゃあ始めよう」

フォルケルは早速そこら中の家々をまわってヴォルストの指示を伝える。もともとアリオーンの顔を知っている人がほとんどなので彼らは急ぎ身支度を始め指示された作業に向かう。さらには一般市民から徴集され街の下層部の宿舎に待機していた軍が味方に加わってくれた。彼らもまたアリオーンの顔を見知っていたし、病に倒れた仲間もいたので参加を表明したのだ。しばらくすると街の中はにわかに騒がしくなり人の出入りが多くなる。だがそのことを上の者達は何も知らない。彼らはただまた伝染病が発生したくらいにしか思っていないのだ。

ヴォルストは早速倉庫に行きありったけの薬草を運び出し、港に即席の調合場所を設置する。そこでつくられた薬草はすぐさま重病の患者にもたらされる。もう手の施しようのない何人かは助からなかったがほとんどがその薬を飲んで症状が軽くなる。その噂を聞いた人が次から次へと押し掛けてくる。

シャナとファナは何人かの人物に協力してもらって薬草を採りにいっている人の後を追い発病した人に効果をやわらげる薬を与え、すぐにエラードに帰るよう指示する。

ヘルとロウィーナは最初薬草師の在庫をより分けるだけだったがすぐに採られてきた薬草が届けられてんてこまいになる。

数日後帝国からの援軍が来るがその騒ぎに紛れ込んで上陸したため全く気づかれずに上陸を果たす。そして彼らはすぐさま街を出て街の外で待機する。
さらに数日するとレジスタンスの動きを知った士官が兵士の宿舎にたずねてくる。士官は病気にかかっていなさそうな兵士を集めるとさっさと上へ帰っていってしまう。
そうこうしているうちに少しづつレジスタンスのメンバーがエラードを訪れていく。外部からの情報をほとんどシャットアウトしているため敵はこちら側の正確な情報を知らないのだ。

「ふむ、なかなかうまくいっているようだな。我々もかなりの同志を集めることができた。今は西の街道を越えたところにある森に隠れている」
兵士の宿舎で会議が行われている。これからの展望についてだ。シャナとシェイド(彼は髪の毛が銀色の時をシェイドとしているようだ)はみんなの注目を集めていた
「残念だが君の行った陽動作戦はあまり敵を長く引きつけることはできなかったようだ。後数日もすればパルメアの部隊がこちらにやってくる。そうなれば丘の上の部隊も事態を正確に把握するだろう」
リチャードがヴォルストに対して言う
「なら北帝国からの部隊をそのままパルメアへ向けましょうか。そうすればパルメアは何もせずに手に入ります」
これはシャナだ。
「だがこちらの兵力は全て整っているわけではない。それに兵が少なくなってはこの街はおとせん」
すかさずファーン老が反発する。やはり北のものに対する不信感が完全にぬぐい去れていないようだ。
「兵はなくとも人はいますよ。この街の人々が蜂起すれば比較的すぐに城を落とせるでしょう。城の部隊を倒せばパルメアの部隊を相手にするのは造作もないことです」
シェイドがさらに返答する。
「だがあの城は簡単には落ちんぞ」
「だが二年前我々はたった数日で落としましたよ。うまい作戦を立てれば数日で終わります」
「具体的にはどうする」
ファーン老のそれはあからさまに挑発している。
「まずは丘の正面を制圧しましょう」
「簡単に言ってくれるが丘の上に配備されている部隊は奴等の本命とも言える部隊だ。それに今は兵士の半分が配備されているこちらの被害も大きい」
「我が軍が参加しましょう。そして丘を制圧した後、パルメアの制圧に向かわせましょう」
シャナが申し出る
「市街地の中では敵の騎馬隊は極端に機動力が落ちるし下手をすればひずめが割れるからな。ゲリラ戦法で撹乱すれば比較的楽に倒せる」
「それはあんたの部隊が得意とする仕事ね。それの後始末をレジスタンスの方々におまかせしましょう。敵の歩兵の攻撃は私の部隊が受けとめます。そこをこの宿舎の兵士と市民軍で反撃しましょう」
「なるほどつまりは北帝国のお手並みを見せてもらえるというわけか」
「そういうことです。それがすみ次第私の部隊はパルメアへ行きますが私とシェイドの部隊は城攻めに加わらせてもらいます。これでどうでしょう」
「シャナ将軍の部隊をパルメアへ向かわせずに市民軍で城を包囲しレジスタンスと北帝国の部隊でパルメアの部隊を倒すというのはどうでしょう。そのほうが時間的余裕があると思いますが」
「ラーカス司祭、実際我々にはそれほど時間の余裕はないのだ。いつカシューラから援軍が来るかわからないから、この作戦はできるだけ迅速にネルスまで兵を進めねばならない。そうすれば海軍を持たないダンガ帝国の侵攻をくい止めることができる」
リチャードがかつてのシャナとヴォルストの言葉をラーカスに向ける。
「なるほど、そしてアラディーとの歩調もあわせやすくなるというわけですか」
「では明日早速決行するか」
「我々はいつでも準備ができています」
市民と兵士の代表がいう。
ついに聖都の奪還作戦が始まるのだ。

 

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