それ、お願い?




 くちゅ、と闇に粘ついた音がした。

「濃い、臭い」

 吐息のような笑いにのせて、言われた。
 オレの頭に血が上る。
 けど何かを言い返す前に、不意の激しさで、後ろに埋められていたものがオレを侵し始めた。

「う、ゃあぁ…っ、いゃ…! ひ、ぐ…ッ」

 無意識に逃げようとする身体を腕で拘束して、遠慮もなくオレを犯していく。
 吐き出した熱が嘘のように、気持ち悪さだけが脹らんでいく。
 俺さあ、と囁きが耐えることでいっぱいのオレに聴こえた。

「アンタをさ、悦がらせてみたかったんだよね」

 は? と言い返す余裕もない。
 だって、オレは間断なく襲ってくる異物感と排泄感で手一杯だ。

「でも、なかすのもいいな、って」

 そんなセリフを心底、嬉しそうにいわないでくれ!
 コイツに出会ってからオレはいいことがない!
 理不尽だし嫌なことは言うしロクなことをしない!

 ああ、なんてタチの悪いヤツに出会っちまったんだ。

 嘆きが、喉を鳴らして吐息が漏れていく。
 情け無い。
 閉め切れない口の端から、滴が垂れていった。
 オレの下肢で蠢く指と熱量の動きが激しくなっていく。

「ひ…くぅ…ッ」

 肌のほてりが酷かった。
 いちど達したはずのものが、後ろを弄られてるままなのにまた硬くなっていて、しかも解放されたがってた。
 気づかないうちに、擦り付けるように腰が揺れていたらしい。
 上忍の指が、緩急をつけて、オレの熱を包んで、放してはまたくるんで追詰めてた。

 オレのもの欲しげな動きに、ヤツはなにも言わなかった。
 ただ、オレの剥き出しにされてる肌に、ときおり、硬いものが当たってた。
 それがなんなのかは正直考えたくなかったし、絶対に酷いことになるって分かってたから、オレはただ荒い息を繰り返してた。

 熱い塊を吐き出したくてしょうがなくて。
 とにかく、なんでもいいから、イきたくて。

 熱くて、吐き出すしかない欲がオレを支配してて、もう括られた手なんて頭から消えてた。
 自由にならない手が樹の幹のおうとつをガリガリと擦って痛みが走る。
 それさえ、快感だった。

 オレのものじゃない呼吸音が間近で五月蝿く、オレの腰が不意に強く引き寄せられた。
 酷い排泄感と一緒に、いつのまにか二本に増えていたらしい太いものが引きずり出された。

「あ、あ、あ…」

 思わず喉が鳴る。
 吐息が首筋にかかる。
 体重が背中に乗る。
 ぐ、と腰を引き寄せられた。

 押し当てられた熱量に身が竦んだのは一瞬。
 容赦ない力で入ってきたソレは、信じられないほど大きく、熱く、力強かった。

「く…ちょ、っと、ちから、ぬいて」
「ぃ、や、あ、あぁ…ああぁぁぁ…っ」

 熱棒が身体を貫いていく。
 苦しさが喉を勝手に鳴らして、喘ぎが漏れていく。
 息が、勝手に漏れていくんだ。
 体内を犯してく熱に追い出されるように。

 奥へ、奥へとゆっくりと苦しさが広がった。
 やがて、尻に生暖かい肌が密着して、オレがこれで終わりかと安心した瞬間、ズ、と腰が引かれた。

「ひぁあ…っ」
「ん、ダメ、逃げないで」
「うご、くな…ぁ…ッ」

 ムリだよ、と言われた。
 聞き取れたのはそこまで。

 酷い体勢で何度も突き上げられた。
 自分の喉から漏れる音が、呼吸と一緒になって、バカみたいにイヤらしかった。
 何度揺さぶられたかなんて知らない。

 熱さがオレの中にいっぱいになって膨れたあとに、オレは達することは許されなくて、竿の先から涎を垂らしたまんま、腹のなかでまた硬くなったソレに再度掻き回されて、ただただ喘いでた。
 記憶はそのへんで、ぷっつりと切れている。

 酷い、自分の喘ぎ声で。




2008.6.8