黄金シャワー







 日は変わって、三日後。
 だって任務だったんだもの。
 いくらオレの気持ちが逸って、夢にも寝言にも「ぅ〜ん、尻…尻がダメなら乳首でも…イルカせんせい…お願い、 乳 首 だ け で も …」って毎晩呟いてたとしても、三日もかかったんだ!
 本当は残党処理とかであと三日ほど拘束されそうだったんだけど、周りのやつがなんでか一刻も早く里に帰るようにって勧めてくれたんだよな。良いヤツらだ!
 オレのイルカ先生へのこの熱い想いが溢れて、みんなにも伝わったんだな!

 そんなわけで、さあ里に帰ってきて、イルカ先生とどうやって二人っきりになろうかな〜、やっぱりセオリーどおりアカデミーの裏庭かな〜、でもこのあいだと同じ場所だしな〜、と大門をくぐりながら考えていたら、すごいもの発見!
 イルカ先生だ!
 といっても里の大門からず〜っと続く大通りの遥か向こう、粒ゴマみたいなイルカ先生だったけど、オレは和んだ。
 あ〜…、イルカ先生だ〜。

 いいよなあ…あの苦労してるうなじ。
 ひっつめポニーテール尻尾。
 毅然とした男らしさ。
 そして間の抜けた笑顔!

 あ〜、和むわ〜。

 ムラムラと癒しが同居する奇跡の人!
 それがイルカ先生!

 しばらく立ち止まって、ゴマ粒イルカ先生をじっくりと観賞していたオレだったが、イルカ先生が視界から消えると我に返った。
 おっと、イルカ捕獲のチャンスだったじゃないか。
 おもわずいつもの癖で、尻から足首まで舐めるように見入ってしまった。
 こんかいオレは報告書をだす義務もなかったから、ためらいなくイルカ先生の尻…じゃなくて後ろ姿を追いかけることにした。
 もちろん、イルカ先生は逃げてるわけじゃなかったから、すぐつかまった。
 イルカ先生は、オレの顔をみて、一瞬ビクってした。
 ちょっと傷つく。

「そんな…変なことなんかしませんよ…そりゃ、あのときは変な言い方しちゃって申し訳なかったですけど…」

 尻はなかったよな。


 せめて 臀 部 とか取り繕うべきだったよな。


 そう思っていたオレは、ちょっとしょんぼりしてしまって肩を落とした。
 するとイルカ先生は、わたわたして

「あ、ち、違うんですっ、ちょっといきなりカカシ先生が現れたもんだから、俺、ちょっと焦っちゃったっていうか、びっくりしたというか…っ」

 あ〜そうなんですか〜。良かった〜。
 オレは、わたわたしてるイルカ先生って青姦したくなるなあ! と心の中で叫びながら、微笑んだ。
 すると可愛いイルカ先生は、はにかみながら鼻傷を掻いて、視線をオレの顔やら肩やら通りのほうやらに落ちつきなく移してた。
 ああもう!
 今すぐ路地の暗がりに引きずり込みたいよ!

「でもカカシ先生もご冗談が過ぎますよ、わざわざあんな所でお話があるっていうから行ってみたら…」
「いやすいません、気がはやっちゃって」
「あれでしょう? 俺も噂で聞いたことあるんですけど、ガイ先生と勝負されて、負けたら何かするっていう―――まあ罰ゲームってことなんでしょうけど、あの台詞はカカシ先生、ちょっといただけないですよ」
「え、そうですか?」

 イルカ先生の台詞の前半はおいといて、どこがイルカ先生の理解不能領域に抵触しているか、オレは大変気になる!

「ええ、あれじゃただの変態ですよ。俺でなくても逃げますよ」

 おおーっと!
 さすがイルカ先生!








 間 違 い あ り ま せ ん 。









 オレはイルカ先生だけの変態です。



「まあカカシ先生なら、どんな口説き方でも女性はうっとりするんでしょうけど」

 そういって、ちょっと口を拗ねたように尖らせる顔がまた、犯罪的に嗜虐心をそそって、いやらしいったら!
 オレは鼻血がでそうだと危ぶみ、言葉少なに訊ねた。

「イルカ先生は?」
「は? 俺ですか? またまた。そんなの聞いて、なんの足しにもなりませんよ」

 いやいや!
 ぜひに!
 イルカ先生はオレ的真っ青可愛コちゃんっぷりを発揮する上目遣いをしながら、オレを軽く睨む。
 あぁん! ちゅーしてえ!

「…俺は女の人の扱いなんかよく分かりませんけど、…カカシ先生の言葉を借りるなら、あなたの姿が寝ても覚めても離れません、とか」

 あんま変わってないんじゃないのと思いながら、オレは大人しくフムフムと聞く。
 イルカ先生のばあい、尻→姿、が正解らしい。

「あと、もう率直に、好きというだけでもカカシ先生の場合、充分じゃないかと…」
「え〜、それってインパクト無いなあとおもってやめたんですけど〜」
「インパクトって、そんな勝負じゃないじゃないですか、素直が一番ですよ、素直が。見つめるだけでも―――」
「イルカ先生はそうなの?」
「ええ」

 素直に尻が素敵って言ったら逃げられたんだけど、この場合、例外を指摘すべきだろうか。
 いや、オレはイルカ先生と討論がしたいわけじゃない。
 尻を鷲掴みにしたりひとつ布団に入ったりして、二人で楽しくなりたいだけなんだ!(シリシリうるさく申し訳ない。ほんとはシリだけじゃなくて全部、オールオブユーなわけなんだけど! 足首とかも鷲掴みして逆さ吊りにして恥ずかしがらせたいんだけど!)
 というわけで、オレは心の底から素直になるのはやめにして、インパクト勝負もやめにして、

「好きです」

 といった。
 え、とイルカ先生が止まったところへたたみかけた。

「イルカ先生、好きです。大好き」

 イルカ先生は、あっけにとられていたけど、真顔でじ〜っと見つめていると、そのうち顔が真っ赤になっていった。
 ぱくぱく、口を開け閉めして、何か言おうとするけど、オレはそれをさえぎり、イルカ先生の手を握る!

 イルカ先生、大好き!
 耳まで染まっていくスイカみたいな顔が、大好き!
 うなじの見える部分が綺麗な色になってて、いますぐキスして一緒に悶えたいぐらい、大好き!

 という万感の想いをこめてイルカ先生を見つめていた。
 口を開くと、心の底からの素直な欲望が出てきちゃいそうだったんで、ここはいっちょイルカ先生の好みにそって。

「付き合ってください」

 素直がいちばん!
 補足すると、ドロドロのぐちょぴちょになるから、往来で言えないしね!
 ところがイルカ先生は、もう真っ赤っかになった顔のまま、






「またっ今度!」






 叫んだあと、瞬身の術で逃げちゃった。
 オレ上忍なのに!




2007.2.4