黄金シャワー
オレはイルカ先生が好き。
っていうことは、もう空の蒼くみえるのがべつに魔法使いが蒼いカーテンを朝に晩にと架け替えてるからとか、牛の白と黒の模様がぜんぶ違うのはじつは全部の牛をあわせたら均一なプリント柄になるんだぞ、とかいうデタラメを信じる以前の問題で、明らかに当たり前のことだ。
もちろん、彼は男だし、同じような年で、それなりに骨ばっているし、電撃のように恋に落ちるところは、一つも無い。
けど、女の子に「あ〜あの子良いよな〜」っていうのと同じレベルで、イルカ先生の後姿を眺めながら、うっかり
「あ〜あの尻、悦いよな〜」
とか思った時点で、オレはもう恋に落ちていたわけだ。
あと、下忍なりたてのナルトが腰にどーんてタックルしたときにメラッときたときなんか決定的。
その腰はオレのもんだ、みたいな。
そんなオレだったが、いがいとイルカ先生に手をだしたのは遅かった。
恋心を自覚してから、一ヶ月ぐらいは、後姿を視姦するだけで我慢していたんだ。
なんてけなげなオレ!
切ない恋心!
でも、一ヶ月もムラムラしてたら、本気で尻を狙いたくなっちゃって、でもやっぱり恥ずかしい! とおもってさらにムラムラしてたら、イルカ先生が最近ストーカーらしきものに付け狙われているという話を小耳に挟んだ。
なんとイルカ先生は、誰かの視線を強烈に感じるのだが、正体が分からず憔悴しているのだそうだ。
なんということだ!
イルカ先生をそんなに苦しめるヤツは誰だ!
ていうか、抜け駆けされちゃたまらん!
という理念のもと、オレはイルカ先生に告白をすることにした。自分から告白なんて初めてだ!
だから愛読書からお手本をもらった。
イルカ先生を呼び出して、さあ言うぞ!
「あなたの尻が寝ても覚めても目から離れません。
尻 が 好 き で す 。
尻を持っているイルカ先生も好きです。どうか付き合ってください」
お手本には「かき口説くように」ってあったから、俺はこれでもかというほど、思いを込めて言った。
これで落ちない女は居ない!
というぐらいオレ的には完璧なはずだったんだけど、イルカ先生はピクッと頬を引きつらせて、
「え、えぇと、カカシ先生って…
――――お気の毒ですねぇ〜…」
なんて言ったらいいかわかんないぐらい微妙な微笑みらしきものをオレに見せて、
あ! 同僚が呼んでるようですのでこれで!
じゃ! と片手を上げると瞬身で消えてしまった。
独り、夕方の校舎の裏庭に取り残されたオレ。
こんなオレも絵になるよね…。
とかひたってる場合じゃないよ!
うそ! ふられた! たぶん!
えぇえ!?
あ! もしかしたらイルカ先生、ちょっと鈍いとこあるから、オレの言う意味、わかんなかったのかな?
しょうがない、次はもっとはっきり言うぞとオレは心に決めたぞ!
2007.2.4