「老人といえば憩いの場を与えておけばいいと思っている。でも仕事や子育てを離れてから、介護される必要が出るまでの『元気な中高年』は、これまで杜会的に想定されていなかった」 だから大手企業が発起塾に、意識調査などマーケティングリサーチの協力を依頼してくる。これだけまとまった元気な中高年をつかまえている集団は珍しいからだ。 老人といえば孫。この発想も、秋山には不満だ。「孫のためにカネや時間を使うなら、自分のために使おうと言いたい。孫は子供と同様、いつか離れていく。それよりは自分中心で楽しみを見つける方が気分がいい」 もちろんいくら元気と言っても、若者と全く同じにはいかない。そこでも独自のノウハウが積み上がりつつある。脚本の字は大きく印刷する。せりふのど忘れをカバーするため、本番では黒子を役者陣の後ろにぴったり配置、劇が滞る直前に救いの手をさしのべる。「手紙を読み上げる」シーンが目立つのも、手紙にせりふが書いてあり、ど忘れが防げるからだ。 ただ、劇団員をいたわり過ぎないのも中高年を生き生きさせるコツの一つだという。 渡米メンバーは今、英語のせりふを猛特訓中。「一般の米国人は映画でも劇でも英語しか受け入れない。字幕も駄目」と分かったからだ。英語のテープを用意、自分のせりふをカタカナで丸暗記することになった。 「大変だー」「覚えられへん」との嘆きが漏れるが、秋山は意に介さない。「『大変』なくらいがええんです。『大変』を味わいにここへきているんですから」 かつて、彼らの「大変だ」を真に受け、せりふを減らしたら、反応は「えー、これだけ?」と不評を買った。主役を端役に変えようとしたら「いやいや、ちょっと待ってーな」。「みんな底力あるし『大変』なくらいでないと」と笑う。 |