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第二章
H&K、MP5KА4。MP5シリーズ中、最もコンパクトな銃。クルツ。
ドイツ語で短いと言う意味である。本物は対テロ特殊部隊SАSやGSG9、SWАTなどで採用
されている、非常に優秀な銃だ。最も輪島も当時は、そこまでの知識はない。一目、雑誌の写真
見て気にいっただけだ。
早速、後輩の瓶野の知っている(今、瓶野が持っている銃を、購入した場所らしい。)大坂の難波
駅の奥まったところにある玩具屋を訪れた。そこは狭い店で奥行き5Mもなさそうな店舗で、銃が
乱雑に所狭しと並べられていた。
店の中に入ると店員らしい小太りな男が、一人の客を相手に何か世間話をしていて、こちらには
いらっしゃいませもいわない。こういう店でよかった試しはないが、なにせ思い立ったら猪だ。
クルツを見つけると
「これちょうだい。」
と、即買うことにした。あと電池や弾など附属品も揃えた。安くはない買い物だったが、輪島には
喜びの方が大きく、実際に早く使用したかった。
車をU公園の横に止めて、銃に電池をセッテイングしてBB弾を込めたものの、外に向かって撃つ
訳にはいかない。そこで輪島は、運転席にいる瓶野を撃とうと思ったが、距離が近すぎてさすがに
危険そうである。
瓶野も撃ちたそうな顔をしていて、
「大丈夫ですよ。痛くありませんから、ちょっと輪島さんの手のひらを撃たさせてくださいよ。」
「あほっ。痛くないんやったら俺に撃たさせてくれ。」
「いやですよ。撃たれるのは。痛いですやんか。」
と訳のわからない事をのたまう瓶野に
「わかっとるわ。誰がこんな近くから撃つかいな。」
と、安心させといて瓶野の足を狙い一発、撃って見た。
「パシュ。」
軽快な音がして、ズボンの上からではあるが瓶野の足に命中した弾は、狭い車の中を跳ね回った。
「★△X☆・・・」
なにかわめいている瓶野を無視し、やっぱり本格的に広い場所で、思い切り撃ち合いをしたいもの
だと思う輪島であった。
あれから1週間が過ぎたものの、目立った進展はなく相変わらず、運転席の瓶野を相手に射撃練習
を繰り返すだけの毎日である。しかしサバイバルゲームについての知識だけはついてきた。
とりあえずメンバーの増員と、フイールド(場所)さがしが先決である。
困った時の身内頼みという言葉があるが(そんなんあるか?)とりあえず周りをみわたすと、会社内
では参加するような顔ぶれはいなさそうで、かといって輪島の昔の友人たちは、すべて家庭をもって
いて、こんな酔狂な遊びにいまさら、付き合ってくれそうな人間は見当たらない。
一応、雑誌『アームズ』にはメンバ―応募の葉書を、出すつもりではいるがそれぐらいでは、すぐには
入ってこないだろう。
2001年10月、秋も深まり季節的には、ええんでないのという時期なのだが、いかんせんメンバーが
集まらない。やむおえん2人でやるかと瓶野に聞くと、丸い顔をさらにふくらして
「やーですよ。何がかなしゅうて輪島さんと2人で。」
という。(そりゃ−俺だってそうや。2人でするぐらいやったら、戦車相手にやっとるわい。)
ある日、朝から仕事の現場に出かけた。〈このころは、出かける場所があってよかったなーと言う神
の声〉
今日は協力業者のアップルの社長である、第一章で少し出てきたうらし・・・もとい矢路という男と一緒
である。私と瓶野と彼の3人で、あるエレベーター製造会社での工事だ。仕事も順調に進み昼休みに
なり、車で休憩と言う事になった。
しばらく3人で無駄話をしていたが、ふと矢路が車内のクルツに気がついた。
「あれ?何でこんなとこにこんなんあるの?」
と、中途半端な標準語と関西弁を、ミックスした奈良弁で輪島に聞いてきた。まさか43歳にもなる
おじさんである矢路が、サバゲーなんぞに興味を持つはずがないと思っている輪島は、少してれながら
「いやー、ちょっとな。しゃれでな。」
答えにならない返事をしながら、輪島は簡単にここ1週間の出来事(そんな大げさなものではないが)
を説明した。それを聞いていた矢路の口から、以外な言葉が飛び出した。
「私も仲間にいれてくださいよ。」
話を聞いてみると、なんと矢路も4,5年前にエアガンを購入した事があるらしい。
3人目の仲間の誕生である。
第二章、終わり
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