バイオハザード6の二次小説を書いてます。
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10年早い罠 - 1年後 - 【ジェイシェリ/ポッキーの日】
シェリーが鞄から出した四角い箱のパッケージを見て、ジェイクは思わず笑った。
「覚えてる?」
そう言いながらこちらを仰ぎ見るシェリーの顔はいたずらっ子のようで、ジェイクは膝の間に座るシェリーの耳元に顔を寄せて囁いた。
「ああ、覚えてるぜ。お前が俺の顔が近づいただけでトマトみたいになったゲームだろ」
「な!何言ってるのよ!ジェイクこそ折っちゃって負けたくせに!」
煽れば簡単にムキになるところは1年前と変わっていない。変わったのは――二人の関係だ。
正直、こんな風に身体を寄せ合う関係になるとは思ってなかった。ジェイクは自身の感情を自覚していたが、シェリーの信念を知っているからこそ何も望んでいなかった。
G-ウィルスの抗体を提供することでアメリカでシェリーに定期的に会えるようになって、会えば軽口を叩きながら距離を保っていたが、あることがキッカケでシェリーの気持ちを知って今に至る。
「ホントは私に近づかれてドキドキしたんでしょ」
顎を上げて挑戦的な目をするシェリーにジェイクは口の端を吊り上げた。
付き合い始めのころはこんな風に密着することさえ拒否するほどだったのに、成長したと言うべきか。
するりと四角い箱をシェリーの手から取って、封を切った。中から細長い棒を引き抜き、シェリーの口元に突き付ける。

――「試してみろよ」

ジェイクの挑戦的な笑みに乗せられるのは計算の上。
「どっちが先攻?」
そう聞きながら先端を咥えたシェリーに「お前から」と答えて、自身も反対側を咥える。
壁に背を預けているジェイクに顔を寄せるようにシェリーが床に手を突いてこちらに身を乗り出した。
パキ…
小さく鳴った音が静まり返った部屋に響く。大人しく先を咥えながら少しずつ顔を寄せるシェリーを見つめる。1年前よりは近くに寄る耐性はできたようだ。
唇が触れるほど近づいても止まる気配はない。近づくにつれてシェリーの瞼が自然に降りて行くのを見ながら、ジェイクは薄く笑った。
これも成長したと言うべきだろう。付き合った当初はキスで顔を近づけてもこちらを凝視していたくらいだ。今では首を傾けるまでになった。
触れた唇の熱を逃がさないように舌を伸ばす。口の中にあった菓子は既に砕けて、ない。
「…ん」
律儀に菓子を噛もうと開いた唇を割って侵入に成功すると、シェリーの吐息が漏れた。既にジェイクの手はシェリーの後頭部を捉えている。
いつの間にかシェリーが身を乗り出す姿勢が逆転して、ジェイクが後ろに逃げるシェリーの後頭部と腰を押さえて逃がさない。
「んっ、んん…!」
しばらく舌を絡める甘さに陶酔していたシェリーは自身の状況に気づいたようだ。抗議するように腕を突っ張り始めた。
ジェイクは素直に檻を解くと、顔を離した。途端に酸素を吸い込むように息をするシェリーに思わず笑った。
「鼻で息するのを忘れてるぞ」
「な、なにっ、何するの!?」
「何ってキスだろ」
しれっと言い放ったジェイクを下から睨み上げるシェリーの頬は赤い。
「今は!勝負してる時でしょ!」
「お前だって乗ったじゃねぇか。目ぇ閉じて首傾けて…」
「そっ!そんなことない!!ジェイクが無理矢理した!」
「誘ったのはお前だけどな」
な!と絶句したようにこちらを見上げるシェリーが目を怒らせて再び棒を摘まみ出そうとしたので、ジェイクは手で押さえた。
「もういいって。めんどくせぇ」
そう言いながら顔を寄せると口を手で押さえられた。
「何がめんどくさいの!?そうじゃないでしょ…」
言いかけたシェリーの手を握って口を開く。
「あのなぁ…もう舌を絡めるキスができる間柄でこのゲームは意味がないだろ」
言われてシェリーはぽかんとした。こいつ本気で気づいてなかったのか。
みるみる頬が染まるシェリーは慌てて後ずさろうとしたが、ジェイクがそれを許すはずもなく――

「誘い方としちゃ及第点だったぜ」

例え天然だったとしてもな、と心の中で呟いて、今度はジェイクの方から顔を近づけた。


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