バイオハザード6の二次小説を書いてます。
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再会の日は突然やってきた
見上げた空が低く、もう秋なんだな、とジェイクは思った。
朝晩は結構冷えるが、こんな内戦の激しい地域ではロクな建物が残ってる筈もなく、家を追われた人々は野営に近い形で何とか雨風を凌げる場所を自分で探すしかない。
親を失った子供達は途方に暮れ、その末路は餓死するか反政府軍に拉致されて少年兵に仕立て上げられるか――どちらにしろそんなに変わりはない。だが、稀に奇特な人間が戦争孤児を見つける度に集めて育てていたりする。本当に稀だが。
ここ、イドニアからさほど離れていない東欧のとある小国はイドニアと同じように政府軍と反政府軍との内紛が激化している。その煽りを受けて市民の生活苦は深刻だ。

「ねぇ、ジェイク。"あ"はどう書くの?」
隣の少女がジェイクの袖を引っ張った。見ると愛らしい顔にいっぱいの笑みを浮かべて、地面に指で文字らしき形を書いている。
「教えてやったろ、こうだ」
ジェイクは自分も地面に指で少女の聞いた文字を書いた。
年端もいかない少年少女は学校へ行く術もなく、日々生きるので精いっぱいだ。読み書きなんてできるわけもなく、できる仕事など限られる。それでも生きるためには働かねばならず、物乞いになるかギャングに入るか身体を売るか―― そんな現実がここにはある。
ジェイクは以前、自分は恵まれていないと思っていたが、こうして世界を見るといかに自分の視野が狭かったか思い知らされる。この少女に向かって、極貧だったとはいえ読み書きができる教育を受けて餓死する危機感など味わったことのない自分がどの面を下げて恵まれていないなど言えるのか。
少女は5歳にして家を焼き払われ、両親を殺され、村から水を汲みに出ていたために一人助かった。それを一概によかったと言えないのが現実だが、少なくともこの少女の場合はよかったんだろう。その後、途方に暮れていた少女を助けた人物がいたから。
「おじいさん、あんまり具合よくないみたい」
少女が心配そうに俯いた。ジェイクは微笑むと少女の頭を撫でて立ち上がった。
「もうすぐ日が暮れる。戻るぞ。ジィさんが心配する」
少女はジェイクを見上げて頷くと、自分も立ち上がった。手を出してきたのでそれを握って、ジェイクは歩き出した。 ジィさん――名前は知らない――はこの少女だけでなく、戦争孤児を見つける度に拾っては育てている。そんな団体に出会ったのは今から2週間前。大人はジィさん一人で全くの赤の他人の18歳から5歳くらいの子供達を育てている。人数にして10人弱。
ジェイクはこの国に入ってすぐに強盗に襲われているこいつらに行き会った。助けない理由もなく相手は6人程度の素人だったからジェイクにとって何てことない人助けだったが、えらく感謝された。行き先を聞くと途中までは一緒だったから用心棒がてら一緒に行くことにした。こんな年寄りと子供だけの団体、襲って下さいと看板さげて歩いてるようなもんだろ。よく今まで無事だったな、と思ったほどだ。
ジィさんは雇うと言ったが家計が火の車どころか立ち行ってないのは火を見るより明らかで、いらねぇと言ったがそうはいかないと頑なに固辞されたので、じゃあ1日1個の林檎で手を打った。

「ナーシャ!」
テントの前の焚火で炊事をしていた娘が声を上げた。
ジェイクが手を繋いでいた少女がパッと顔を輝かせて駆け寄る。
「ターニャ、あのね、ジェイクが字を教えてくれたよ!」
「そう、よかったわね。ご飯出来てるから早く食べちゃって」
ターニャと呼ばれた少女はジェイクの方を見て「ジェイクもどうぞ」と言った。
「サンキュ」
そう言うと焚火のそばに腰を下ろし、煮炊きをお椀によそう。
「ジィさんは?」
ジェイクが声をかけるとターニャはジェイクの隣に腰を下ろした。
「仕入れに行ってる。今夜は帰らないかも…」
そうか、とジェイクは隣の娘を見下ろした。歳は18歳と未成年ながらしっかりとジィさんのいない留守を守っている。経済観念もしっかりしており、この団体が何とか生活していけてるのはこの娘のお蔭だろう。まだそばかすの残る鼻に陽が当たれば煌めく赤毛。下の小さい子供たちの中には10歳の弟もいる。
「武器を仕入れてくれたら売れるのに」
不意にかけられた声にターニャが振り返った。声の主もわかっていたのだろう、険しい顔をして睨む。
「ヤン!」
ヤンと呼ばれた彼女の弟は挑むように見返した。
「だってそうだろ。武器だったら黙ってても売れるじゃねぇか。あんなガラクタ、売れやしねぇ」
「おじいさんは人殺しの道具は売らないって言ってるでしょ!」
「じゃあどうやって暮らしてくんだよ!犬猫みたいに子供ばっか拾ってきやがって!金稼がなきゃみんな飢え死にだぜ!」
ヤンは吐き捨てるように言うとそのまま踵を返して駈けて行った。
それを見送ったターニャは溜息をつくと、こちらに向き直って苦笑いした。
「反抗期かな。最近こういう言い争いが絶えなくて…」
「まぁ言ってることは真っ当だがな。確かに武器の売買をしたら手っ取り早いだろう。その分危険を伴うだろうがな」
ジェイクは煮炊きを啜ると椀を置いて立ち上がった。
「まぁ、俺が口出すことじゃねぇが、家計、回ってねぇんじゃないのか?」
見上げたターニャが視線を逸らして俯いた。
「たまに…ヤンがお金を持って来るの。街で稼いだって。何をして稼いだか絶対言わないんだけど。それがないと今はもう無理ね…」
なるほど、とジェイクは頷いた。
ここのジィさんは武器を持つことを反対している。人殺しは嫌だと言ってるが、それでよくそんな年齢まで生き延びたなと呆れるが、きっと陰で守ってくれてる人がいたんだろう――今のヤンのように。
この団体と合流して3日でそこそこ大量の武器を隠し持ってるのを見つけた。ジィさんもターニャも知らないようだったので、多分集めているのはヤンだ。それを売ろうとしているのかと思ったが、どうもそうではないらしい。となると――

ジェイクはテントを離れてヤンが行った方向へ足を向けた。
子供達の内、比較的大きい少年数人の姿が見えない。ジェイクが合流して2週間。ジェイクの読みが正しければ、そろそろ行動を起こすだろう。
街へと続く1本の道を見下ろす大人にしては小さな影を見つけた。5人。手に武器を携えて、薄闇の中、布を頭に巻いて顔を隠している。
1人はライフルを持ってその場に伏せる。他の4人は道を下って行った。ジェイクが身を隠しながら目を凝らすと、道の向こうから街に向かって一台のトラックが来るのが見えた。
少年の1人が道の真ん中に蹲って具合が悪いフリをする。それを見たトラックが停まった。途端に銃を持った少年が車を取り囲む。
大人相手に何の躊躇もなく荷を奪うと、銃床で頭を殴って昏倒させて一目散に逃げる。あざやかな手口だった。時間にして10分もかかっていない。相手は街へ商売に行く途中だったのだろう。持てる範囲の高価なものを手早く見定め持って逃げる。欲張らない上に全部は盗らない。納期というものを知っているのだろう。半分でも残せば相手は盗った相手を追うのではなく、商品を納入する方を選ぶ。きっと街に出てその辺の情報収集も抜かりないと思える。ライフルを一人上に配置するのも賢い。

――今まで無事に移動できたのも納得だな。

俺は必要ないか。ジェイクは薄く笑うと来た道をゆっくりとした足取りで戻った。



***

シェリーは街に着くと宿を探した。
東欧の内紛の激しい地域ではあるが、この辺はまだマシだと思えた。ちゃんと泊まるところがある。
比較的怪しげでないところを選んで空きがあるか聞いてみる。幸い空いていたので、そのまま部屋を取った。
部屋は質素なベッドが置いてあるだけで、狭い上に少々汚かったが、鍵はきちんとかかるので良しとした。1階に食堂があったので、そこで夕食を摂ることにする。
階下に降りて行くと大声が聞こえた。
「だから追剥ぎにあったんだよ!子供だったぜ!?」
禿げた小太りの男が手振り身振りで店主に説明している。どうやら納入する品物をギャングに盗られたらしい。
シェリーが席に着いて注文してからもその男は喋り続けている。
「この世も末だね、あんなガキがさ…」
シェリーは「どのくらいの子供?」と聞いた。こちらを向いた男がびっくりしたように目を見開いた。
「何やってんだ?お嬢ちゃん」
「お嬢ちゃんて歳じゃないわ。それより、どのくらいの子供だったの?」
「ああ?ええと…ターバン巻いてたからな…でも12、3歳かな。もしかしたらもっと下かも――」
「何人くらいいた?」
シェリーが重ねて聞くと男は考え込んだ。
「4人かな」
「そう、慣れてる風だった?」
「そうだな。銃の扱いにも慣れてたし、商品も捌きやすくて足が付きにくい物ばかり持って行ったな。全部じゃなくて、な。商売について相当詳しいんだろう」
シェリーは頷いた。その集団はここ2〜3日の調査で何度か耳にした。自分の任務には直接関係ないが、気にはなった。 10歳から13歳くらいのギャング集団。人は殺さないが武器は大量に所持しているらしい。この辺で調査をするなら、頭の片隅に置いておいた方がいいかもしれない。自分が出くわさないとは限らないから。

中国のバイオテロから3ヶ月。ジェイク・ウェスカー…ジェイクの血液が世界を救ってからそれだけの時間が経った。
いや、それだけの時間しか、か。それでもシェリーにとっては長かったように思う。
エージェントとしての仕事が本格化したので多忙を極めたが、ふと思い出すのはジェイクのことだった。
血液を渡した後、彼は姿を消した。いつか会える日が来るかな――そう思ったが、多分そんな日はもう来ない。彼とシェリーでは住む世界が違い過ぎる。アメリカのエージェントと東欧の傭兵。平時であれば交わるはずのなかった平行線がバイオテロという忌まわしき事件によって交差しただけだ。それが終わればまた平行線に戻る。それだけのことだ。 そうは思っても、ぽっかり穴が開いたように空虚な気がするのは何故だろう。会いたいのか、と聞かれれば会いたいと思うが、会いに行く関係かと聞かれれば首を横に振るしかない。携帯のアドレスは知っているが、気軽にメールを送っ ていいのかわからない。わからないまま3ヶ月が過ぎた。
そんな折、シェリーは今回の任務に就いた。曰く、「東欧のとある国にB.O.W.の目撃談多数。その信憑性を確かめるべく偵察に行って来い」というもの。正式にBSAAを投入するだけの情報を先取りして来いということだろう。
内政が不安定なのでアメリカの横やりを嫌う政府を考慮して、アメリカ政府の身分は隠せとのお達しだった。そのため、エージェントに見えないシェリーに槍玉が上がり、ジャーナリストの卵として3日前に入国したばかりだった。
未だB.O.W.の目撃情報には到達していないので、あと2、3日は調査を続けることにして、シェリーは色々聞いて回ることにした。



****

「ジェイク、ヤンと買い出しに行って来てくれない?」
ターニャに言われてジェイクは頷いた。
「何を買うんだ?」
「水と食料ね。布も安くであれば――」
「わかった。ヤンと行けばいいんだな?トラックで?」
「ええ。ありがとう」
トラックのキーをターニャが差し出した。それをジェイクが受け取ろうと手を出してターニャの手と触れ合った。その途端、ターニャが手を引っ込めたので、受け取り損なったキーが地面に落ちた。
「あ、ごめんなさい」
ターニャが真っ赤になって慌てて腰を折ってキーを拾おうとする。その前にジェイクはそのキーを地面から攫った。
「じゃあ、行ってくる」
ジェイクは何でもなかったようにキーをじゃらじゃらさせながら彼女に背を向けると歩き出した。すぐにヤンが隣に並ぶ。チラと窺うと不機嫌そうな顔をして前を見ている。
トラックに乗って無言で走らせていると、ヤンは助手席で唐突に言った。
「アンタは姉さんのことどう思ってんの?」
「ハァ?」
「わかってんだろ、姉さんがアンタを好きだってこと」
ヤンは10歳にしてはませたガキだった。ジェイクもさほど鈍くないのでターニャの気持ちには薄々気づいてはいるが、だからと言ってどうする気もない。
「ガキが余計な気ィ遣うんじゃねぇよ」
「ガキでも身内のことだろ!気にするに決まってるだろ!」
「心配しなくても別にどうもしやしねぇよ。そばにちょっと年上の器用な男がいてのぼせてるだけだろ。その内冷めるさ」
「んなワケないだろ!姉さんはそんな簡単じゃねぇぞ!」
オイオイ、どっちなんだよ、お前は?姉の恋路が実って欲しいのか、欲しくないのか。もっとも、実ることは100%ないんだけどな。
「心配すんな。俺はガキに興味ねぇ」
「ガキって、18だろ…2、3コしか違わねぇじゃねぇか」
「俺より下だろ。無理無理」
「アンタ年上派かよ?」
ホントにませたガキだな、と思いつつ、年上と聞いてある顔が浮かんだ。金髪のショートカットで俺より下手したら若そうな――ここ3ヶ月、考えないようにしていた顔だ。
今頃どうしてるのか。別れ際、挨拶もせずに姿を消した。最後に会えばきっと離れがたくなる。そう思って敢えて会わずに離れた。帰国して傭兵を続けながら旅をしている内に焦燥感は薄れた。これから先、もう会うことはないだろう。
連絡を取り合った先に何かあるなら頑張りもできるが、何もない。アメリカのエージェントの彼女と一匹狼の傭兵では同じ世界に住むことはできない。俺がアメリカに行くこともできない代わりに彼女をこちらに引っ張り込むこともできないからだ。
――結局、このまま忘れる方がお互いのためなんだろうな。
かと言ってこんな気持ちのまま他の女に行くのは気が引けるし、第一そんな気分になれない。ターニャの気持ちは嬉しいが、応えることはできない。
「もうすぐ着くぜ」
ジェイクが言うとヤンが鼻を鳴らしたが、話の追及は諦めたらしい。
トラックは街へ入ると、市場のそばへ停まった。降りて店先へ行こうとしたジェイクをヤンは「俺ちょっと野暮用」と言いつつ離れる。昨日盗った品物を換金しに行くんだろう。
「まだ危ねぇんじゃねぇか?昨日の商人もまだここにいるだろうし」
思わず出た言葉にヤンの目が大きく見開かれた。
「見てたのかよ?」
「まぁな。もっと日を置いた方がいいだろ」
バツが悪そうに頭を掻いたヤンはふてくされたように言った。
「無理だよ。もう金がない。持って行かなきゃ姉さんが身体を売るハメになる」
「ジィさんがそんなことさせないだろ」
「あんなクソジジィ、何もできやしねぇよ!止めたって金がないなら稼がなきゃ飢えるだけじゃねぇか」
吐き捨てるように言ったヤンの口調は苛立ってはいたが諦観しているようにも思えた。口は悪いがジィさんを嫌いじゃないんだろう。それでも金がない事実に苛立ってる。まだ子供なのに金策に走らざるを得ない。そして、彼にはそれができる才能がある。だからターニャも頼ってしまうんだろう。どんな方法で稼いできたか耳を塞いで。

――これが内政不安定な国の現状だ。

ジェイクは自身の経験から何も言う言葉はなかった。誰もが生きるのに必死だ。そのために盗むのは自然の摂理だ。人を殺す輩だっている。それを責める気はない。
「俺も一緒に行く」
「いい。いつも捌いてるとこは用心深いから見ねぇ顔がついて行ったら警戒する。30分後、トラックんとこで合流な。その間に買出ししててくれ」
頷くと頭に布を巻いて半分顔を隠して、ヤンは足早に去った。
ジェイクは溜息をつくと市場へ足を向けた。

市場はそこそこ盛況だった。
頼まれた品物を買い込み、トラックへ戻る。水は重いので2度往復して運んだ。
トラックにもたれて待っているとヤンが戻ってくるのが見えた。
無言で助手席に乗り込む。ジェイクも運転席に座ってアクセルを踏んだ。
「何でナンも言わないんだ?」
ヤンが不意に言った。
「ハァ?何が?」
「だから、強盗してることを責めないのかよ?」
「責められるわけないだろ。生きるためなんだから。無意味に人を傷つけてるわけでもなし、俺がとやかく言うことじ ゃねぇよ」
「ふぅん。アンタも同じ側?」
「お前みたいにタフじゃなかったな」
苦笑しながら言うとヤンも笑った。だがすぐに真顔になった。
「今日、換金できなかった。質屋にアメリカ人がいたんだ。金髪だからすぐわかった。ここ最近この辺で"仕事"を何回かしたからもしかしたら調べに来たのかもしれない。その割にはわっけぇ女だったけど」
「じゃあ金にできなかったのか?」
「いや、大きな金にはならなかったけど、他でできるのをちょっとだけ…到底足りないだろうけどな」
近日中にもう一度やる、ということだろう。
「…バレるなよ。お前は立派にジィさんたちを守れるみたいだから、俺はそろそろお役ご免だな。ここを移動する時に別れるよ」
ジェイクが言うとヤンは目を瞠ったが、すぐに逸らすとふぅん、と呟いてもう何も言わなかった。

帰ったら既に昼を回っていた。
ターニャに昼食をもらって食べる。ヤンとターニャが話し込んでいるのを尻目にジェイクは腰を上げた。
トラックの荷台を整理していると、後ろから声をかけられた。
「ジェイク」
振り返るとターニャが立っていた。
「何だ?」
「ヤンに聞いたけど…ここから移動する時に別れるって――」
「ああ、そろそろいいだろ」
「でも、目的地にはまだ着いてないわ。急がないんだったら…」
「いや、ちょっと急ぐんでな。ワリィ。ジィさんはまだ帰って来ないのか?」
わざと話を変えるとターニャの顔が曇った。ジェイク、と声に決意が籠る。
「あの、私――」
言いかけた時、銃声が聞こえた。近くだ。ジェイクは身を翻すとその方向へ駈けた。
街へ行く道の方向だ。もしかしてヤンがまた襲ったのかもしれない。だが、銃声はすぐ近くだ。
ジェイクは焦る気持ちを抑えて走る。後ろからターニャが遅れながらもついて来るのが見えた。
この前より大分近い場所から道を見下ろすと、少年たちが誰かを囲っているのが見えた。ヤンが銃を構えている。その相手は――

ジェイクは考えるより先に崖を降りた。降り切ったところで銃を構えるヤンの頭に自分の銃を向ける。一斉に周りの少年たちがジェイクに銃を向けたが、戸惑ったように狼狽えた。
ジェイクは構わずヤンに低く呟く。
「ヤン、銃を下ろせ」
「オイ、どういうことだよ?」
ヤンは相手に銃を向けたまま横目でジェイクを睨む。その時、目の前で手を上げていた人物が呟いた。

――ジェイク…

ジェイクはヤンの向こう側にいる金髪のアメリカ人に言った。

「よぉ、シェリー」


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