水底呼声 -suitei kosei-

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  1−9 裏話  

朝食のトレイを持って,客室へやってきたメイドのツィム.
寝室をノックしようとしたところ,部屋の中からみゆのすすり泣く声.
あきらかに,穏やかではない事態.
扉を開けていいものか,おろおろしているうちに,冷めていく朝食.
いつも朝食を食べに来るのに,なぜか今日は来ないウィル.
(本当はすでに部屋に来て,みゆに追い出されたが,ツィムは知らない)
しばらくたって,寝室から出てきたみゆは,どこからどう見ても泣きはらした顔.
真っ赤になっている,眼鏡の奥の瞳.
けれど何ごともなかったように振る舞うので,ツィムも合わせて,知らないふり.
――何があったのですか?
ツィムはものすごーく心配.
先輩のメイドに,こっそりと相談.
「夜に何かあったのよ.」
「何か,ですか?」
「黒猫が彼女に押し迫ったのだわ.」
「……!?」
「彼女は拒絶して,でも無理やり,」
「そ,そんなことはありえません.ウィル様はミユ様を,とても大切になさっています.」
「ベッドは乱れていなかった?」
乱れていたような,乱れていなかったような.
いつもどおりだったような,いつもどおりではなかったような.
ぐるぐると混乱する頭の中.
そんなこんなで,ますますみゆに事情が聞けなくなるツィムでした.
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