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  explosion  

 何かが弾ける音がした。振り返ると同時に、熱風で吹き飛ばされる。背中に鈍い衝撃を受ける。手で探ると、それは布団だった。
 炎がせまり来る。世界が終わる。この暖かな至福のときが。
 目覚ましの音で、私は目を覚ます。
 あーあ、今日も会社だ。都合のよい夢から覚めて、ゆううつな現実を見据えなくちゃ。

 どん、という音が後ろでした。
 すでに疲労も緊張もピークに達していた俺は、悲鳴を上げて頭を抱え、アスファルトの地面に転がる。
「見ろ!」
 白い衣で全身を覆い、口にはマスクをつけた人々が、指をさし叫んでいる。
 俺は振り返る。建屋の壁が吹き飛び、骨組みがむき出しになっていた。

 背中に響いた爆発音に、あたしは驚いた。
 やだ、道をまちがえちゃった。あたしは振り返って、まるで入道雲のようにわき上がる煙の方へ走る。
 あたし以外のみんなは逃げている。幼い子どもの手を引いて、大きなおなかを抱えて。でもあたしだけは向かっていく。彼のもとへ。
 彼はあたしに、金も権力もすべてを与えてくれた。だからあたしは彼の存続を望む。彼はすばらしい存在だと、世界に向かって訴え続ける。

 この国の人々は怒るのが下手だ。何をされても、じっと我慢している。
 そんな辛抱強い人々が、怒りの声を上げているのだ。この流れは止まらないだろう。
 あの爆発とともに神話は崩れ去り、金のなる木は衆目にさらされた。もはや世界中の人々が注視している。
 それでも彼は耳をふさぎ続けた。広場を埋める群集の声から。

 野次馬根性丸出しのマスコミがやって来て、唐突に去った。俺はいぶかしく思いながら、開店準備のために、ラーメン屋の厨房に入る。
 すると背後のテレビから、何かが爆発した音。不思議に思って振り返り、ニュース番組を観る。
 立ち上がる白煙が画面に映る。俺の店から遠くない場所だ。あぁ、だからマスコミは逃げたのだ。俺たち地元の人間には何も教えずに。
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