奈良新聞(平成9年8月28日版)掲載
いかがですかあなたの健康
女性の尿失禁
おもらしで悩んでいませんか?
県医師会 下里直行
ナイス・ショットの瞬間「ジワッ」ときた。あとはプレーに集中できず、大崩と
なった。
「コレ、なんとかなりません?」
女性ゴルファーの増加につれ、こんな相談が多くなりました。
ある調査では、中高年女性の約4割近くが「おもらし」を経験しているといわれ、
社会生活に支障をきたすだけでなく、衣服の汚染や尿臭に悩まされるなど、精神衛
生的にも見過ごすことのできない問題として、クローズ・アップされてきています。
おもらし(以下、尿失禁)には、いくつかの種類があります。
最も多いのが「腹圧性尿失禁」で、次のような症状が特徴的です。
●バレーボール、テニス、エアロビクスなどのスポーツで。
●咳、くしゃみ、笑ったとき、いすから立ち上がったとき。
●冷たい水に触れたとき。
●月経が始まる一週間ほど前に漏れやすくなる。
●夜間は熟睡できるが、朝ベッドから起きあがるときに漏れる。
原因は、
@加齢による萎縮性尿道・膣炎、肥満、出産回数、膀胱・子宮下垂など。
A膀胱脱(ぼうこうだつ)、子宮脱、子宮筋腫、卵巣腫瘍の病気など。
治療は、
@のケースでは、運動療法や各種のクスリによる保存的療法が効果的で、軽庄
では70%近くの人が良くなるといわれています。
保存的療法を六ヶ月続けても効果がない場合や、Aのケースでは、手術療法によっ
て症状が改善されます。
なお、「切迫性尿失禁」という、別のタイプの尿失禁があります。
●突然に尿意を感じトイレにたどりつくまでに漏らしてしまう。
●外出先から帰宅して、玄関の鍵穴にキーを差し込んでいるうちに漏れてしまう。
これらがこのタイプの特徴的な症状です。
脊髄の障害・脳梗塞・脳出血などの後遺症、パーキンソン病などが原因となり、
薬(抗コリン剤)や電気刺激療法ぐらいしか有効な治療法はないようです。
尿失禁の原因追及には泌尿器科での検査が必要になることがありますが、多くの
ケースでは運動療法やクスリで症状が著しく改善されます。
尿失禁は年をとれば当たり前と思って放置している貴女(あなた)。
思いきって、かかりつけ医に相談されることをお薦めします。
(本稿は、平成9年8月28日:奈良新聞朝刊に掲載されました。)