奈良新聞(平成10年6月25日版)掲載
いかがですかあなたの健康(682)
ちょっと気になる前立腺の話
「前立腺がん」
県医師会 下里直行
最近、あるベテラン・プロゴルファーが前立腺(せん)がんに侵されていることを
告白して話題になりました。
今までは欧米人に多かった前立腺がんですが、高齢化と生活習慣の欧米化などに
よって、このところ日本人男性にも急増しています。
前立腺は男性のぼうこうの出口にあって、尿道をぐるりと取り巻いています。
大きさも形もクルミの実に似ており、精液の一部である前立腺液をつくります。
その構造は、ミカンにたとえられます。皮にあたる部分を外腺(がいせん)、房
にあたる部分を内腺(ないせん)といいます。芯(しん)にあたる部分を尿道が通
っています。
前立腺がんはミカンの皮にあたる部分に発生します。ゆっくりと大きくなるので、
中心部の尿道は圧迫されにくく、早期では前立腺肥大症のような症状はありません。
いいかえれば、排尿障害があらわれるようになったら、がんは少し進行している
ことになります。
五十歳以上の人に発生しやすく、年齢が進むにつれて増加し、七十歳代が最も多
い年齢層です。
原因ははっきりわかっていませんが、加齢による男性ホルモンの増加に関係があ
るといわれています。
初期には症状はまったくありません。なんの症状もないのが特徴です。
進行すると、前立腺肥大症と同様、頻尿などの症状があらわれてきます。
昼間の頻尿は危険信号
前立腺肥大症は夜中にオシッコへ何回も行くのが特徴ですが、前立腺がんでは
昼間に頻尿になることが多いようです。
前立腺がんを早期に発見するには、五十歳以上の人は年に一回の前立腺健診を受
けることです。
肛門から指を入れて触診する直腸内指診によって70%の確率で、がんかどうか
がわかります。
最近では、血液中の前立腺特異抗原「PSA」を測定することで、指診ではわか
らない早期がんでも容易に診断されるようになってきています。
早期に治療すれば完全に治る可能性が高い前立腺がん。早期発見と早期治療の
ために、進んで前立腺検診を受けることをお勧めします。
(本文は、平成10年6月25日、奈良新聞朝刊「いかがですかあなたの健康」欄に掲載されました。)