奈良新聞(平成10年6月18日版)掲載
いかがですかあなたの健康(681)
ちょっと気になる前立腺の話
「前立腺肥大症」
県医師会 下里直行
五十歳以上の男性諸氏におうかがいします。次の七つの項目で、思い当たる
症状がいくつあるかをチェックしてみてください。
@オシッコをしたのに、まだ残っている感じがする。( )
Aさっきオシッコをしたのに、すぐトイレに行きたくなる。( )
Bオシッコが途切れる。( )
Cがまんができず、トイレに行きつくまでにもれてしまう。( )
Dオシッコの勢いが弱い。( )
E下腹に力を入れて、いきまないと出にくい。( )
F夜、寝てから朝起きるまでに二回以上はトイレに起きる。( )
チェックマークが二つ以上ある方は前立腺(せん)肥大症の可能性があり
ます。
前立腺は男性のぼうこうの出口にあって、尿道をぐるりと取りまいています。
大きさも形もクルミの実に似ており、精液の一部である前立腺液をつくります。
その構造は、ミカンにたとえられます。皮にあたる部分を外腺(がいせん)、
房にあたる部分を内腺(ないせん)といいます。
芯(しん)にあたる部分を尿道が通っています。
五十歳を過ぎるころから、前立腺の内腺がしだいに大きくなりはじめ、オシ
ッコの通り道「尿道」を圧迫します。このため、冒頭に掲げた七つの症状があ
らわれてくるのです。
大きくなる原因ははっきりわかっていませんが、加齢による男性ホルモンの
増加に関係があるといわれています。
オシッコの症状で判断
オシッコの症状を聞くだけでこの病気であるとほぼ見当がつきますが、肥大
の程度を知るには、肛門から指を入れて触診する直腸内指診が必要です。
さらに、手術が必要かどうかをみるには、尿流量検査、超音波診断、レント
ゲン撮影、内視鏡検査などが行われます。
治療法は、軽度の肥大であればクスリで縮小もするし、症状の改善も期待で
きます。
また、前立腺肥大症といわれたら、アルコールを飲み過ぎない、長時間坐っ
た仕事を避ける、体を冷やさない、トイレをがまんしない・・・などの生活
習慣の改善が大切です。
中等〜重傷では電気メスで切りとる方法が主におこなわれています。
最近ではメスを使わない超音波法や、ラジオ波温熱療法なども盛んに行わ
れるようになってきました。
前立腺肥大症は良性の病気です。治療をすれば必ず良くなります。
オシッコの出かたが気がかりな方は、早めにかかりつけ医に相談されるこ
とをお勧めします。
(本文は、平成10年6月18日の奈良新聞朝刊:「いかがですかあなたの健康」欄に掲載されました。)