奈良新聞(平成13年7月26日版)掲載
 いかがですかあなたの健康  
のどの異物感
 咽喉頭(いんこうとう)異常感症      県医師会 下里直行    
病気でなく心理的錯覚
 「のどに何かがひっかかっている感じがする」、「のどがつまったような感じがする」、「のどが圧迫されるような感じがする」などの違和感があるのですが、詳しい検査をしても、のどにも全身的にも異常がない状態を「咽喉頭異常感症」といいます。
 多くは、心理的なことが原因で、これらの症状は食事をしているときや、なにかに熱中しているときにはあまり感じず、つばを飲みこむときに強く感じるという特徴があります。
 耳鼻咽喉科を受診する人のなかでは頻度が高く、とりわけ中年女性やお年寄りに多いありふれた病気とされています。実際は治療を必要としないのですから、病気とはいえないかもしれません。
 ただし、医師が咽喉頭異常感症と診断する前には、咽頭がんや喉頭がん、食道がんなどがないか、喉や鼻の炎症やアレルギーがないか、逆流性食道炎がないかなど、耳鼻咽喉科の一般的な診察、血液検査、食道造影検査、内視鏡検査などで全身的な病気がないことを確認します。自分勝手に決めつけないことです。
 のどは、つばを無意識のうちに飲みこんでいるので、いつも動いています。また、話をしたり、食事をしたりするので、のどに注意が向きやすいものです。
 また、精神的ストレスがあるときなどにのどの異常感はよく起こります。
 がんでないことがわかれば、自然に消失することが多いことから、気になっているならば早めに耳鼻咽喉科の診断を受けて安心することが大切です。

 

         (本稿は、平成13年7月26日:奈良新聞に掲載されました。)