奈良新聞(平成13年8月23日版)掲載
 いかがですかあなたの健康  

 鉄欠乏性貧血           県医師会 下里直行    
予防にはレバーなどを
 貧血とは、血液の量が少ないのではなく、血液中の赤血球が少ないことを意味します。
 赤血球の主成分は「ヘモグロビン(血色素)」で、全身の組織や臓器に酸素を送る役割をしています。
 ヘモグロビンの主要成分は鉄分ですので、体内の鉄分が不足すると、ヘモグロビンの量が減少し、赤血球の数も減少します。この状態を「鉄欠乏性貧血」といい、貧血の九割以上がこのタイプです。
 圧倒的に女性に多く、徐々に進行するため、全く症状がなかったり、症状があっても気づかずにいて、健康診断や献血の際の血液検査で偶然にみつかります。
 症状は、顔色が悪い、疲れやすい、だるい、めまい、頭が思い、動悸(き)、息切れなどですが、ゆっくり進行しますので、ヘモグロビンの量が正常の半分以下になっても、症状を全く感じない人もまれではありません。
 女性に多い理由は、月経に関係があります。月経が正常であればこの貧血にはなりませんが、卵巣の機能不全で月経周期に異常があったり、子宮筋腫(しゅ)などで過多月経になっていても、気に止めないか、あるいは我慢して、放置している人が多いからです。
 また、若い女性はダイエットを目的に、生野菜中心の食事を続けたことが原因になっているケースもあります。
 検診で、鉄欠乏性貧血といわれたら、女性はまず婦人科の診察を受けましょう。
 男性では、痔(じ)、胃炎、胃下垂、胃や腸の潰瘍(かいよう)などや、がんが原因の場合もありますから注意が必要です。痔や胃・腸からの出血は、便鮮血検査を行い、陽性であれば、胃・十二指腸のレントゲン検査や内視鏡を受けることです。
 鉄欠乏性貧血そのものは鉄剤の内服で治りますが、少なくとも二〜三ヶ月の服用が必要になりますので、途中で服用を止めないことも大切です。
 内服薬で効果があがらないときは、鉄剤の静脈注射が有効で、即効性があります。
 鉄分は肉類、レバー、魚のちあいの部分(背中の黒ずんだ肉)に多く含まれていますから、鉄欠乏性貧血の予防には、このような食品を摂取するよう日ごろから心がけましょう。
 

         (本稿は、平成13年8月23日:奈良新聞に掲載されました。)