奈良新聞(平成13年10月12日版)掲載
 いかがですかあなたの健康  

十代の性状勢
 尖形(圭)コンジローマ       県医師会 下里直行    
長い潜伏期間で患者増加
 性行為によって、人から人へと感染する病気を「性感染症(STD)」といいます。
 『尖(せん)形コンジローマ』もその一つで、とりわけ最近、若者たちの間で感染者が増加しています。
 ヒトパピローマウイルス(HPV)が感染して、性器とその周辺に気味の悪い「いぼ」が無数に発生します。
 この「いぼ」は、皮膚と同じ色か灰白色で、粘膜に発生したものはピンク色をしています。小さなうちは、数の子の「つぶつぶ」のように見えますが、本来この「いぼ」は先が尖(と)った形をしており、これらが集合すると、まるでニワトリのトサカのような形になります。
 男性では、陰嚢(いんのう)、肛門周囲、亀頭や陰茎包皮(いんけいほうひ)の内側などにできます。
 女性では、外陰部、会陰(えいん)部(性器と肛門の間)、肛門周囲の皮膚や粘膜、さらに膣(ちつ)の内壁や子宮膣部にも発生します。
 ただし、こに「いぼ」はお尻(しり)、太もも、おなかなどの皮膚に広がることはありません。
 小さなうちは、無症状です。痛くないので、自分でむしり取ったりりする人がいますが、やがて周囲に広がり、不快感、汚臭(おしゅう)、痒(かゆ)み、痛みなどの症状があらわれます。
 治療は、発生部位、範囲、大きさによって一様ではありませんが、一般的には液体窒素による凍結療法、電気やレーザー光線による焼灼(しょうしゃく)療法、メスによる切除療法が行われます。
 薬物治療では、抗ウイルス剤や抗がん剤を含む軟膏(こう)を塗る方法があります。
 性感染症(STD)は、本人が治療を受けるのは当然のことですが、セックス・パートナーも同時に治療することが大原則です。
 ただ、尖形コンジローマは感染後、症状がでるまでに約3ヶ月という比較的長い潜伏期間があります。ですから、交渉相手が不特定多数の場合、感染経路が特定できないことが多く、感染者の増加につながっていきます。
 近年、性の開放と性行動の多様化に伴い、若者をとりまく性環境は大きく変化してきました。
 また、何かにつけ親の責任が問われる昨今、親として、最近の性感染症についての知識を深め、子供たちの日常生活に細やかな目配りをすることも、重要な親の役割だと考えます。
 

         (本稿は、平成13年10月12日:奈良新聞に掲載されました。)