奈良新聞(平成13年7月19日版)掲載
 いかがですかあなた康  
 女性によくある「外陰部のかゆみ」 
 
                     県医師会 下里直行    
婦人科で原因の追求を
 最近よく目にするテレビCMに、「私たちのデリケートな部分のかゆみに…」というのがあります。女性タレントの清楚(せいそ)な感じも手伝って、多くの女性が安易に使用しているような印象があります。
 この軟こうは局所麻酔剤、ビタミンE、抗ヒスタミン剤、殺菌剤が配合されています。生理時のかゆみ、おりものによるかゆみ、下着によるかぶれ、湿疹(しっしん)、虫さされ、皮膚炎、じんましん、あせも、ただれ、しもやけなどに使用します。効能書きを読むと、「カンジダ症やトリコモナス症」には、医師による根本治療が必要ですと明記されています。
 さて、外陰部に起こる炎症を外陰炎といいます。外陰は膣(ちつ)からの分泌物や尿、便で不潔になり、炎症を起しやすい部分です。
 本来、正常な月経周期をもつ健康な女性は、卵巣から分泌されるエストロゲンという女性ホルモンの作用で、最近などに対する抵抗力が強く、簡単には炎症を起すことはありません。
 ひっかき傷や外傷、月経時の不適切な手当て、ナプキンや下着などにかぶれて起こる炎症が原因の場合、前述の軟こうは有効と考えられます。
 しかし、幼児や老人、妊婦や出産直後の人、糖尿病を持っている人などは、抵抗力が弱く、炎症を起しやすいものです。
 とりわけ、一般の女性のかゆみは膣カンジダ症、外陰部白癬(せん)菌=水虫=、トリコモナス症、尖形コンジローマ、単純ヘルペスなどが多く、これらの原因によかゆみには前述の軟こうは有効でなく、局所の炎症がいっそう悪くなっているケースが多くみられます。
 女性のデリケートゾーンのかゆみは、まず婦人科の診察を受けてから、適切に対処するよう心がけましょう。
 

         (本稿は、平成13年7月19日:奈良新聞に掲載されました。)