ゴルフと健康      

                奈良県医師会  下里直行

 知り合いの医師で心臓の血管に血液の流れをよくするためのステントという
バネ状の管(くだ)をいれている人がいます。
 冠状動脈という心臓の血管の一部が狭くなっていたからです。
 そのまま放置すれば命にもかかわる心筋梗塞に移行するところでした。
 発見のきっかけはゴルフでした。
 昨年の暮れのことです。朝一のティーショットを大きく引っ掛けてしまいました。
OBかもしれないと思ったとたん、胸がキューッと痛くなりました。幸いにも球は
白杭の内側にあり、胸の痛みがおさまるのを待って二打目を打ちました。あと
は何事もなくその日のラウンドを終えました。
 それから五日後。朝一のショットはフェアウエイの真中をとらえ、意気揚
揚と二打目地点に向かって歩き出したのですが、またもや胸の中央がキューン
と痛み、数十秒間続きました。 帰宅後、念のため自分で心電図をとってみまし
たが、異常は発見されませんでした。
 年が明け、肥満解消を年頭の決意にかかげ、夜間の散歩を始めることにし
ました。ところが二百bほど歩くと決まって胸が痛くなることに気付いたのです。
 まさかとは思いつつ、知人の病院でトレッドミルという負荷心電図をとってみ
ることにしました。
 ところがなんと、検査が終わるか終わらないうちに救急救命センターに移
送即時にカテーテルが挿入され、血管の狭くなった部分にステントが装着されて
しまいました。あれよあれよと言っているうちの出来事だったのです。
 氏は酒もタバコもたしなまず、血圧は正常で糖尿病もありません。
 ただ、軽度の肥満と高脂血症があり、数年前からコレステロールや中性脂肪
を下げる薬を飲みながら、日頃からの健康管理には注意を払っていたと言って
いますが・・・。
 このような症状に心当たりのある方は早めにかかり付け医に相談することを
お勧めします。
  
 本稿は阿騎野ゴルフ倶楽部季刊誌「阿騎野」Vol.6(平成12年9月30日発行)に掲載しました。