【Music Holiday】 ほんとに最近のバンドは長持ちしませんねぇ | |
=不定期連載音楽コラム 『Guitar And Pen』 Vol.2= | 1999/3/7 |
最後まで中途半端でした : シーホーセズついに解散……
うーん、やっぱりねぇ、という感じで、シーホーセズが解散を発表した。巨大な過去の名声を背負った才能溢れるギタリストとその他3人という組み合わせは、やはりクリエイティブなユニットには成り得なかった……
大体、自分からストーン・ローゼズを飛び出したくせに、ジョン・スクワイアには何の展望も目標もなかったのではないか? オリエンティッドなハード・ギター・ロックをベースにするジョンと、とことんポップ指向のヴォーカリスト、クリス・ヘルムの二人三脚は最初から最後まで目指す方向も力量も違いすぎた。加えて、ローゼズ最大の武器であったグルーヴを叩き出せなかった非力なリズム隊。
平々凡々なファースト・アルバムと精彩のないライブ(ショート・レビューはこちら)の後にリリースされたシングル『You Can Talk To Me』は、ジョンとクリスそれぞれの持ち味ががうまく両立した、シーホーセズの唯一の立ち位置を提示したポップな佳作だったが、結局、この方向でもバンドは持たなかったようだ。ラスト作品となったセカンドアルバムは既に完成しているが、リリース状況は未定とのこと。
かつての相方、おサルのイアン・ブラウンがあまりにも清々しくシーンへの復帰を遂げた今、ジョンはどこへ行こうとするのか? しつこいようだけど、とにかく「タダの人」にだけはなってくれるなよ。あ、クリスも頑張ってね(^^;)。
曲もアルバムも短いのがまたヨイ : シュガー・レイ『14分59秒』
前作の邦題が『シュガー・レイのアメリカン・ドリーム'97〜爆走街道まっしぐら、俺らに勝る敵はナシ!〜Floored』っていうファイト一発意味不明瞭なもんだったんで、知らない人にはキワモノ扱いされかねないシュガー・レイだが、この新作サード・アルバムはちょっと凄いぞ。
実は全米で200万枚以上売ってしまったセカンドは、KOЯNあたりのヘヴィネスと共通する重量級アルバムだったが、今度は重軽硬軟入り乱れた快作。1分に満たない強烈なデス・メタルのオープニングから、一気に南カリフォルニア風味満喫のヒット・シングル『Every Morning』へとなだれ込み、後はセカンドまでのスタイルであるへヴィな曲と、様々なタイプのポップ・チューンがほぼ交互に登場してくる。終盤近くには、80年代キラメキ・ポップスの一曲、スティーヴ・ミラー・バンドの『アブラカダブラ』を、ほとんど原曲そのままのアレンジで披露。そしてラストは、何故かロシア民謡のポルカで淡々と奏でられる。一体何なんだ、コイツらは?(笑)
無茶苦茶な例えかもしれないが、今のシュガー・レイって、全盛期の爆風スランプみたいなポジションにいるんじゃないだろうか? 世間一般ではキワモノイメージ、しかしポップな曲を量産し、なおかつ多様なスタイルを取り入れた実験的な姿勢も一方では保持し続ける。それと、周辺へのサブ・カルチャー的な露出の仕方も。
とにかく、理屈抜きで楽しめて、聴いてるうちにピョンピョン跳び上がりたくなるような、そんなとっても愉快な40分34秒。
これまた歴史に残る名作だぁ! : ポール・ウェスターバーグ『スーケイン・グラティファクション』
地味だ地味だと言われた傑作アルバム『Eventually』から3年振りのポール・ウェスターバーグのニューアルバムは、更に地味指数を増した静謐な作品。ポール自身も語っているように、このアルバムは前作のラスト2曲『Good Day』『Times Fries Tomorrow』から続く抒情詩である。
同郷バンド、ソウル・アサイラムのデイヴ・パーナーが参加した切れ味鋭いロック・ナンバー『Fugitive Kind』や、トム・ぺティのソロ作にも通じる南部風の軽快な『Lookin'Out Forever』(何とハートブレイカーズのベンモント・テンチが参加!)も素晴らしい出来だが、ほとんどピアノ弾き語りの冒頭2曲、フォーキーな『Born For Me』、彼にとって初めての子供の誕生を歌い、個人的に最も感動した『What Makes You Happy』など、一切の装飾を排したバラードこそが、この作品の本質だ。
アルバムの完成度という点では前作の方が上だろうし、この地味さでは商業的にも苦しいかもしれない。ツアーもやりたくないって言ってるし。しかし、この地味さは、歳をとって落ち着いてしまった結果とかいう類のものではない。確かに40歳を目前にして初めて父親になり、苦労を共にしたバンドの日々も遠くになり、普通の人間なら「一丁上がり」みたいな心境になるのだろうけど、そんな単なる老成でここまでの瑞々しい感動的なうたが歌えるだろうか? 今の彼はパフォーマーよりも、ソングライターやアーティストとしての活動に興味があるそうだ。そう、純粋に自分の心境を鏡に写し取るようにして出来た曲達のもたらす清新さがここにあるのだ。