所詮、凡人ですから
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証券市場での個人投資家の取引が活発なのだそうである。私もそういう類なのか。ときに悟ったようなことを言いながら、実は白状すると昨年の秋ごろから少しだけ株取引を始めた。知合いに詳しい人がいるので、その方に教えて頂いた情報を参考にしている。というか、ほとんど鵜呑みにしているのだが、先日購入していた株を売却して約10万円の利益が出た。もっともその日あれよあれよという間にその銘柄の株価がさらに上昇して悔しい思いをした。刀の鞘の修理代を捻出しようぐらいのつもりだったのだが、気がつくとどっぷりと浸かってしまっていた。早朝の散歩。キリスト教の教会があった。

夢子さんからお預かりした資金は100万円。ネット証券に口座を開設してから4ヶ月ぐらいになる。取引回数3回、取引株数延べ3000株だから、ギョロメを剥いたMファンドのような存在のことを思うと、物の数には入らないだろうとは思う。しかし考えてみると恐ろしい話かもしれない。ほとんど最小の取引回数、株数でこれである。

10万円の利益が発生していることは間違いないのだけれど、これはどういうことなのだろうか。私がやったことといえば、キーボードを叩いて数字を打ち込みエンターキーを三度押しただけである。星の王子様の実業屋を思い出した。彼は星を持つのが生き甲斐である。そして持っている星の数を紙切れに書いて引き出しの中に入れて鍵をかけておくのである。王子様はそれを詩的ではあるが、大事なことではないと言う。なるほど、とすればMファンドは詩人か。

ネット上の証券会社の私の口座には確かにその利益が上乗せされた金額が表示されている。もっとも、かの詩人の口座にはそれこそ星の数以上の数字が印字されているのだろう。サンテグジュペリが提示した人物像「実業屋」はついに私の内側にもいたことが明確に指摘されたようであり、夏目漱石が「こころ」で恐れおののいたような 真実の自分に恥らう様子もなく、今日もネットの画面を眺めながら、私はうそぶく。「所詮、凡人ですから。」

追伸:「カードもはんこも私が持っています」…天の声