NHKのテレビ放送を見ていると、外国の放送会社の制作した観光地の光景を紹介する番組に出くわすことがある。BGMと映像と説明文という極めてシンプルな構成に、落ち着いて観賞することができる。あるいは「名曲アルバム」などはクラッシックの門外漢にしてみれば、日頃聞くことのない名曲とその作曲家の故郷を同時に楽しめる好番組である。また「古城物語」もヨーロッパの中世の雰囲気を興味深く伝えてくれる他の民放にはない番組であろう。
そういう良心的な番組がひっそりと放映されていて、たまたま出会うと幸運と思うのに比べて、つまらないと思える番組を避けるのは至難の業であり、取締り罰する法律は今のところ存在しない。また良識のある番組を気取っていても、どこかその制作態度には余計なものを付け加えたがる悪癖が払拭できないものもある。何放送かは忘れたが「歴史街道**」という番組などがそれである。趣旨そのものには何の不満もないし、伝えたいであろう内容にも納得はいく。しかし何故に若い女性を画面上に歩かせねばならないのだろうか、ご丁寧にも最後に「全身の写真」添付での応募要領が流れる。関西ではお見合の釣り書きに利用されるのでないかと下賎な憶測をしてしまう。
書店でふと見かけたPHP新書「誰がテレビをつまらなくしたのか」(立元幸治)で、著者は「昼時日本列島」というNHKのウィークデー12時15分頃からの番組が廃止されて、スタジオでのタレント中心の番組にとって変わられたことを嘆いておられた。まったく同感であり、日本の各地の庶民の生の声や生き生きとした生活の実態を伝えるいい番組だったと今でもその廃止が残念である。そのためにわが家ではその時間帯に見るべき番組
がなくなって久しい。
日本列島のお昼時、たいていの会社の社員食堂のテレビは黒眼鏡の叔父さんの番組を見るお姉ちゃん達に占領されている
。自宅で昼食を取ることのできる人にしても、見るほどの番組はないというのが実感であろう。そんなわけで、私は昼食が終ればできるだけ早く居間を後にするが、それは
家人の見る権利を抑圧しないためであると同時に、見ない権利を行使するためでもある。しかし会話拒否と取られる
ことも多いだろうと思うと、不本意である。テレビとは一体何様なのか!!
いっそのこと居間からテレビを追い出して、小さなラジオを置き、昔懐かしい「昼の憩い」の長閑なメロディのなかに身を置こうかとも考え始めている。
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