頑張れ 残党
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 思わず微笑んでしまった、と言ったらひんしゅくを買うだろうか。「72億円 金庫破り」という新聞記事があった。ブラジルのある銀行の金庫内部の床に穴が開き、現金約1億5000万レアル(約72億円)が盗まれているのが発見されたという。その穴は約80メートルの長さで近くの民家までつながっていた。約3ヶ月かけて犯人グループは一生懸命掘り進んだものと見られる。満を持して金曜日の夜から月曜日の早朝にかけて忍び込んで犯行に及んだらしい。首尾よく成功して祝杯を挙げている様子が目に浮かぶ。おめでとうと言ったら 不謹慎だろうか。しかし さぞや重労働だったろう。額に汗して「働く」姿を想像すると、このIT社会でよくぞ古典的な手法で頑張ったと敬意を表したい。

子供の頃にポプラ文庫とかそんな名前の出版社が子供向けに、「怪盗ルパン」だとか「怪人二十面相」だとかのシリーズを刊行していた。もちろん彼らは盗人であり、法を犯している、しかし人を傷つけたりはしない。そんな一種のかっこよさに憧れたり、話の展開にワクワクしたのを思い出す。 海の向こうからの新聞記事に、そういう何か懐かしいものに出あった気がするのである。

犯罪ではあっても、そこに漫画的な滑稽さだとか、アッと驚く独創性だとかを発見すると、人を傷つけたりしていない限り、拍手喝采を贈りたくなるのが世の常かもしれない。日本では最近ATMをパワーショベルなんかで壊して何百万円か を盗むとか、包丁やモデルガンでコンビニの店員を脅して何万円を強奪とか、そんなみっともない手口が多いという印象がある。もうちょっと考えて、工夫して、独創的なやり方をしてくれればいいのになどと、不謹慎ではあるが、思ったりする。

 新聞を開けば、三面記事にはお金が絡んだ事件が毎日沢山掲載される。お年寄りを狙った悪質リフォーム業者だとか、振り込め詐欺だとか、「その品性たるや」という感じで気が滅入ることが多い。かの石川五右衛門が言ったという有名なせりふは「浜の真砂は尽きるとも、世に盗人の種は尽きまじ」でしたか。良くも悪くも、いつの時代も人間の本性に変わりはないようである。捕まらなければいいがと思っていたが、今朝の新聞には一味のうち二人が逮捕されてお金もほんの一部押収されたという記事があった。頑張れ、残党。千里山のヤジウマより

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